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41 話の真意

「え、ど、どういうこと?」


 僕の突然の言葉に愛莉が困惑の表情を見せる。彼女はまだ話の真意に気付けていないようだった。


「恭平、お主が言いたいのはそんなことじゃないんじゃろ?」


「ああ、第一王子とか別にどうでもいい」


 祝う気持ちなんて微塵もないしな。

 僕がこの話題に脱獄を見出したのには別の理由がある。


「重要なのは、大規模なセレモニーが行われるということ。多くの観衆が集う以上、必然的に相応の護衛が配置される」


「あっ、城の警備が薄くなるってことだね!」


「そういうこと。三将軍も帝位継承とあらば出席しないわけにはいかない。上手くいけば誰とも遭遇せずに城を抜けられる」


 三将軍とまみえる確率が大幅に減るのは間違いない。そして重要なセレモニーだけに中止するわけにもいかないため、万が一僕らの脱獄が判明しても表立って行動はできない筈だ。

 これ以上のチャンスはない。


「相手もこっちに情報が筒抜けだなんて夢にも思ってないだろうし、未然に防がれることもない」


 城内と城下街のおおよその見取り図も頭に入っている。道に迷うことはない。

 上手く王国まで行き、王と謁見を取り次げれば帝国の暗部を告発することができる。勇者の肩書きがあれば謁見も直ぐに取り次いでもらえるだろう。

 以上のことを成功させるために、これから三日間は気どられないように大人しくしておいた方がいい。


「取り敢えず、今やれることは少しでもレベルを上げることだね。三将軍と遭遇する確率も無きにしも非ずなわけだし」


 最低でもレベル40はほしいところだ。

 レベル上げと聞き冥爛の瞳が妖しく輝く。


「気炎万丈! ならば妾がお主らをより早く強くしてみせようぞ!」


 なんか変なスイッチが入ってしまった。

 狐耳と尻尾がちぎれんばかりに振り切っている。


 昨日のパワーレベリング以降、どうも冥爛はレベル上げに御執心だ。

 まあ、分からなくはない。ゲームで言うなら、レベルの低いキャラを強い奴が連れ回してガンガンレベルを上げていく感じだ。端的に言うなら、俺TUEEEだな。

 兎に角、冥爛は元来の面倒見の良い気質が働いたのか育成にハマったというわけだ。

 テンションは気持ち悪いが、実績があるので信用できる。


「冥爛さん、よろしくね!」


 愛莉が意気衝天する狐に無邪気な笑みを向ける。

 すると冥爛は一瞬虚を突かれた顔を見せ、次の瞬間には愛莉を抱きしめていた。


「愛莉~、お主は愛いやつよのぉ~!」


「や、やめてよぉ!」


 愛莉の抵抗も虚しく、冥爛が無遠慮に頭を撫で回す。

 破顔し緩みきった顔は幸福感に満ち溢れていた。


「愛莉ぃ~!」 


「ちょ、や、やめ……」


 これはさほど重要なことじゃないんだが……。冥爛の胸は成人女性のソレより些か大きい傾向にある。

 そんな彼女が少女を全力で抱きしめたらどうなるか。


「い、息が……」


 異常な筋力のこともあり、少女の肺から酸素が勢い良く流出していく。最早彼女の体内に酸素は残されていない。

 数瞬後に窒息するのは必然だったと言えるだろう。

 僕は過剰な愛は時に暴力になることを知った。  




「愛莉ぃ~、すまん~」


「別にいいってば。そんなに気にしないでよ」 


 愛莉が復活するまで少し時間を要したが、特に問題はない。あるとすれば、彼女の冥爛に対する信頼が軽く地に着く勢いで失墜したことくらいだろう。

 大したことじゃないな。


「そうか。では愛莉、ちょっと触らせてたも」


「どんたっちみー!(私に触れないで下さい)」


 愛莉が少し壊れたのが問題か。

 冥爛がショボーンとうなだれる。自業自得だ。

 そうこうしているうちにボスの部屋へと辿り着いた。


「二人共、ボス戦くらいは気合入れてくれよ?」


 言って、僕は重厚な扉を力の限りを尽くして押し開けた。

 途端に視界の景色が変貌する。

 壁に備え付けられた篝火が青白い炎を連鎖的に宿していく。

 暗闇の視界の中、蒼白の瞳が瞬いた。


「グルォォォォ!!」


 照明が灯り切り、霧を払うように闇が消えていく。浮かび上がったのは、全身青色の皮膚に鬼のように捻じ曲がった角。

 全身4mはあろうかという巨躯に眩い光を反射するグレートアックスが巌の如く立ちはだかっていた。

 その偉容を前に、僅かに足が竦んでしまう。


 鑑定の結果は『ブルーオーガ』、レベル70。

 これは少し苦戦しそうだ。

 歯噛みしていると、冥爛が覇気のない足取りでよろよろとボスに向かって歩いて行った。


「おい、危ないだろ。戻れ!」


「あー、もう嫌なのじゃー。愛莉は触らせてくれんしやる気が出ないのじゃ~」


 捨て鉢気味に吐き捨てると、迫る攻撃を「あうー」と虚脱しきった動作で『緑王の剣』を振り弾いた。


「もう、どうでもいいのじゃ。『煉獄の火焔』(インフェルノ)


 瞬間、辺りが焦土が化した。

 何が起こったのか把握できないが、ひとつ確かなのは、あれだけ強そうなボスが一瞬にして灰塵に帰したことだけだった。


「案外この魔宮って大したことなかったりして?」


「いや、あいつがチート過ぎるんだよ……」

次話か次々話あたりで脱獄に向けてのイベントが発生します。

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