閑話 悪徳姫のダンジョン攻略
姫視点の閑話です。
いつもより短めです。
「あー、かったるいわねー」
魔宮地下4階層。
オークと交戦している下僕共を見てあたしは呟いた。
正直『勇者の窓』とかレベル上げって怠いのよね。魔宮の中は寒いし、モンスターは臭いし。ほんとやってられないわ。
生活魔法で身体を綺麗にしてもなんだか汚れが落ちた実感もないし。シャワーが恋しいわね。
思考の最中、ブンブンと何かが空を切る音が聞こえてきた。
見ると、瀕死のオークが斧を投擲した姿勢で固まっていた。巨大な戦斧が空を切りながらあたし目掛けて飛来する。
……よけられない。
そう悟ったあたしはユニークスキル『災禍の種を撒く者』で無理矢理近くにいた下僕を盾にする。
次の瞬間、戦斧は下僕の剣を砕き腹を裂き臓物をぶちまけさせた。勢いはそこで止まり、下僕がせり上がったモノを血に混ぜて喀血した。
血が雨のように頭上から降り注ぐ。
「シャワーが恋しいとは言ったけど、血のシャワーは勘弁ね」
即座に生活魔法を発動して身体と服の汚れを消す。
他の下僕共は動揺することなくオークを殺しあたしの元へ戻ってくる。
ちょうどレベルが上がったわね。現在のレベルは……18か。
ここに出てくるモンスターのレベルは最低でも50を越えてるから、あたしもレベル30は欲しいところね。
レベル上げはかったるいけど、帝国に入れてもらう条件に『勇者の軍を構成して統率する』ってのがあるから、将に見合うだけの実力は必要なのよね。
ここ暫くはクソうざい三人組があたしを監視してた所為でレベルが上がってない。意図的に経験値の入らない距離を保たれていた。
でも、昨日はそのうちの一人、慎太とかいうリーダー気取りの奴を牢にぶち込んでやった。あの時の親友面してた奴の泣き顔は爽快だったわ~。重犯罪を犯した人しかいないような牢屋にぶちこまれたから脱獄は不可能でしょうね。
残った二人もリーダーがいなきゃなにもできないみたいだし、ざまあみろだわ。
現状を変えてみせる(笑)とか言ってたけど、ここじゃ何ができるわけでもない。まさか脱獄考えるような馬鹿でもないでしょうし。っていうか、そんなことできるわけないわ。
「疲れたわね。今日はもうこれくらいにしときましょうか」
天井を見上げると、スクリーンに投影されたような空が夕陽を映し出していた。
陽もそろそろ沈む頃合。夜になると視界がきかないから早めに帰るのが懸命ね。
入口に戻り、グライン将軍に報告していると黒髪と茶髪の少年少女が横を通った。リーダーがいなくなり何もできない惨めな二人組だわ。
自然と笑みが溢れる。
牢に入ると隅の方で丸まってたから嘲笑ってやったわ。あー、いい気分。
帝国は準備が整ったらあたしを登用してくれるから、そしたらここともおさらばね。下僕共は一緒に連れてってやるけど、あの二人は一生ここに置いとこう。
アハハハ、あたしを馬鹿にするからいけないのよ。
……さてと、もう早いとこ寝ようっと。
明日は何をしようかしら。
悪徳の姫、小城百合。彼女はこの時、既に力関係が逆転していることを知る由もなかった。




