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38 先回り

――魔宮・地下三層――


「焼き払え『劫火』」


 妖狐もとい冥爛が放った上級魔法にゴブリンたちが断末魔を上げ焼却されていく。


 出会い頭にいきなり焼かれたゴブリンたちは不運としか言い様がない。

 彼方に浮かぶ夕陽を眺め、今日何十度目かになる採取を行う。


 焼け跡が酷くて皮とかは剥げないが、爪とかは再利用できそうだ。それに、万が一何も採取できなくても倒してさえいれば『勇者の窓』のアイテム欄に随時素材が蓄積されていく。一度取り出すと戻せないので、スキル『アイテムボックス』の容量を考え、入らない分はアイテム欄に残したままにしておかないといけない。


 アイテムボックスにもそれなりの量が入るのだが、冥爛が次々に魔物を瞬殺していくので溢れかえりそうになっている。


 アイテム面も充実してきたが、それよりもおいしいのが経験値だ。

 ある程度味方が近くにいるとパーティー、つまりは同行者とみなされ自分が魔物を倒さなくても味方が倒してくれれば経験値が手に入る。それがこの世界のシステム。


 今回僕はそのおこぼれに預かったわけだ。

 信じられない速度でレベルが上がっていく。僕のレベルは30に達しようとしていた。


 でも虚しい。なにもしてないのにレベルだけ上がるって、実感が湧かない。

 以前僕が慎太を連れて毒で魔物を倒して回って経験値を得た際の慎太の心情もこんな感じだったんだろうか。


 ……まあ、レベル面での不安も払拭されつつあるので他のレベルを上げようか。


 アイテムボックスから錬金セット【中】を取り出す。

 皆月さんが契約する冥爛は、現世に顕現するだけでも常時馬鹿にならないほど魔力を消耗するので魔力回復薬のエーテルが切らせないのだ。

 無論、消費MP削減、MP回復速度上昇などのスキルを付けたうえでの結果だ。契約した冥爛の凄さが理解できる。

 皆月さんが今手に持ってるのが最後なので、新しく作り直す。


「えーっと、材料はヘルネ草とティリーズ草、それとレベル30以上のモンスターの血液10mlか……」


 アイテムボックスから指定されている素材を次から次へと出していく。

 本来ならエーテルは錬金のスキルレベルが4以上ないと作れないのだが、【断罪の扉】の影響で錬金スキルが裏スキル化したので実質錬金スキルレベルは限界の5に近い。元がスキルレベル3だったので、このまま鍛えて裏スキルのレベルを挙げれば通常の錬金スキルの限界は容易く越えられるだろう。エリクサーとか余裕で作れるかもしれない。


 と言っても、所持しているレシピがエーテルで止まってるのでスキルレベルを上げない限りは新しいレシピは解放されない。そもそもエリクサーの存在自体が怪しいな。


 そんな思惟に耽っているうちに、手元の作業が終了する。


「皆月さん、これ新しいエーテル。取り敢えず三本ね」


「うん、ありがとう」


 未使用のエーテルと、空になったエーテルの容器を取り替える。

 やっぱりMPの消費が激しいな。一時間に一回はエーテルを作らないと間に合わない。

 材料なら腐るほどあるので構わないのだけど。


「して、お主ら。ここで魔物を狩り続けるのかえ?」


 冥爛が口許を扇子で隠しながら尋ねてきた。和服の袂が僅かに揺れる。

 狐耳がピョコピョコ動いてるのが少し可笑しい。


「まあ、当分の間はね。ここでレベル上げの効率が悪くなったら下に行こう」 


 下には姫たちがいるから、鉢合わせると面倒なことになる。どのみち後で牢で顔を合わせることになるのだが、迷宮で会うのと獄中で会うのは意味が異なる。


 獄内なら最低限の安全が保証されているが、迷宮はその限りではない。迷宮内にいるのは探索者とモンスターだけ。目の上のたんこぶである僕らは襲われる可能性が高い。


「邪魔なら殺せばよかろうに。皆レベルは20前後なのじゃろう? 妾がおれば余裕じゃ」


「確かにその通りなんだけど、殺したら迷宮を攻略してくれる人がいなくなるからね」


 姫と僕。互いに協力する意思が皆無な以上、別行動を取るしかない。

 本音を言えば、もっと下の階層に行きたいんだけど……。姫たちは一層あたりクリアするのに時間掛かりそうだしな。


「もっと下の階層に行きたいのは確かだけど、今のところは姫たちが4階層を攻略するのを待つしかないね」


 こればかりはどうしようもないと冥爛を諭す。

 高レベルたる彼女はこんな階層の魔物じゃレベルが上がらないのだろう、視線を落として溜め息をつく。


 すると、皆月さんが何か思いついたのか「そうだ!」と興奮気味に手を鳴らした。


「どうしたの、皆月さん?」


「柊君、姫と手を取らなければいいんだよね?」


「そうだけど?」


「じゃあ、私達だけで4階層を攻略しようよ!」


 え?

 たった三人で階層を攻略?

 一瞬思考が硬直する。


「姫と遭遇しないように気をつけて、ボスに先回りしてどんどん下に行こう。冥爛さんがいればボスも余裕だよ!」


 僕は傍らの妖狐を眺める。


「ここにおる魔物と妾ではそもそもの存在の格が違う。引けを取ることはあるまいて」


 どうやら全然大丈夫らしい。

 妙案と考えていいのだろうか。


「でも、暫くここにいるよりかはマシだし……」


 この階層で採取できる素材はあらかた手に入った。下の階層に行きたいのも事実だ。

 ……よし。


「皆月さんの案を採用しよう。姫達よりも先に4層を攻略する」


 僕は堂々と宣言した。

50話くらいまでには脱獄させたいです。

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