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34 そういえば契約師

6/26神官長の名前を間違えていたので訂正しました。

「貢物が少ないように思えるが」


 異世界に来て二週間と少し。第二層を攻略した僕らは再び皇帝に呼び出された。

 二度目の招集。対策は既に講じてある。


 主要な武器は魔宮内。慎太と皆月さん、そして僕の重要度の高い物は『聖呪』を解呪した僕のアイテムボックスへ。


 献上する物が少ないと疑問を覚えられるかもしれないから余分な物を多めにしたつもりだったのだけど。


 『聖呪』を使われずに穏便に事が済みそうなのに、要らないことを言わないでほしい。


「失礼ながら申し上げますと、前回に取り上げたばかりで御座います故」


「おお、アイソマー。其方の言う通りだ。所詮はこの程度、というわけだな」


 クソ神官長の奏上に納得した皇帝は相槌をうち、僕らを見て追い払うように手を振った。


「もうよいぞ」


「……ちっ」


 聞こえない程度の舌打ちを残して謁見の間を去る。






「柊くん、上手くいったね!」


「ああ、恙無くいって良かったよ」


 牢の中で僕と皆月さんが安堵の息をつく。

 第一層攻略時と違って手元に残ったものは多い。


 第一層と二層のマップ、全員の武器、錬金セット、大量生成した良質のポーション。一層のマップとヘルネ草しか残らなかった時とは大違いだ。


 更に、僕ら三人のレベルは慎太27、僕26、皆月さん23と着実に強くなってきている。


 武器は慎太がレアドロップの『闇狼の牙刀』、僕も同じくレアドロップの『妖精の短杖』、皆月さんは『犬人の短杖』、『緑鬼の短剣』の二つを装備している。


 装備も充実してきた。貫頭衣だけはどうにもならないけど。

 これなら第三層に行っても大丈夫だろう。それと、もうひとつ。

 僕は兼ねてからの懸案を口に出す。


「そろそろ、皆月さんも本職の力が出せるんじゃないかな?」


「え、あ、そういえば私『契約師』だったんだっけ……」


 本人も忘れていた。二週間も放置していたら忘れるのも当然か。


 皆月さんの職業のスキルは、『召喚』して『契約』すること。普通の『召喚』とは違って、契約さえすればずっと顕現させることもできる。


 『召喚』に必要なのは触媒とか言ってたっけ。あとは、環境と召喚者次第で出てくるものが変わってくると。


「触媒って、何がいるのか分かる?」


「あ、触媒は魔物の残骸? とかでいいらしいよ。強い魔物の方がいいみたい」


 なるほど、それじゃあ第二層のボスのドロップでも使ってみようか。

 環境のことも鑑みると、第二層のボスのドロップをボス戦の時使用したフィールドでやるのがいいのか?


「環境っていうのがいまいち分からないな」


「これは、たぶん層じゃないかな。強い魔物が沢山いるところの方がいいんだって」


 そう考えると第三層で行った方がいいのか。

 現状戦力は多いに越したことはないので一刻も早く即席の戦力が欲しい。

 召喚するのは第三層のボスの部屋でいいだろう。


「そういえば、契約は何体までいけるの?」


 今までの流れだと一体が前提だったけど、実際のところどうなんだろう。


 召喚師(サモナー)って聞くと、モンスターをボンボン出してくイメージがある。思慮深く考える皆月さんの表情を見る限り、そう簡単なものではないらしい。


「スロットっていう……モンスターの所持枠? みたいなのがあってね、『契約』のスキルを取得するとひとつ貰えるんだ。でも、それ以降は膨大なスキルポイントを振らないと貰えないんだって」  


「あー、うん。よく分かったよ」


 どこぞの課金ゲーを思い出すな。


 皆月さんの口振りからすると、現状ではスロットを増やすことは難しいようだ。当初の通り、『契約』は一体のモンスターに絞った方がいいだろう。

 ハズレとかきたら嫌だなー。


「何が出てくるのかは、先の要素を除けば運なんだよね?」


「うん、そうだよ。運悪くスライムとかが来ちゃっても、契約目的で召喚しちゃったら契約しないといけない。普通の召喚だったら力を貸してもらってバイバイなんだけどね」


「普通の召喚だったら触媒とかいらないの?」


「いらないよ。召喚した人のレベルに沿ったモンスターが出てくるんだって」


 『契約』用の召喚と、『召喚』用の召喚があるのか。めんどくさいなー。

 『契約』は、F○teの英雄召喚みたいなものだと割り切ろう。


 そんな無益な思考をしていると、カツカツと牢獄内に反響する音が聞こえてきた。


 やってきた衛兵はグルリと牢内を見回すと姫に目を留め、強引に引っ張っていった。


 この前も姫だったと思うけど、お気に入りなのか……?


「柊くん、その、大丈夫だよね……?」


「何が?」


「姫は……ユニークスキルをもってるでしょ? それで衛兵を洗脳しちゃったら……」


 殺される、と唇が震えた。

 皆月さんが全身を強ばらせる。姫が裏切る可能性を考慮しているのだろう。

 でも、それは不可能だ。


「皆月さんは、スキル検索で『???』が羅列されてるところ、見たことある?」


「え、あ、うん」


 『勇者の窓』は万能ではない。

 僕は今まで、条件さえ満たせば全ての魔法、スキルを入手できるものとばかり思っていた。


 姫がユニークスキルの猛威を奮った日、僕は姫が『勇者の窓』経由であのスキルを取得したと思い調べて見た。『検索』から、キーワード検索で『ユニークスキル』と打ち込んだ。


 結果は散々だった。画面一杯に『???』が大量出現したのだ。いくらスクロールしても閲覧可能なものはひとつもなかった。


 ヘルプ曰く、ユニークスキルとは『勇者の窓』から取得できるのではなく、当人の特定の行動に応じて取得されるものらしい。姫の場合、迷宮初戦闘での人心掌握のことを指す。あの行動の結果、『災禍の種を撒く者』(アジテーター)を取得したのだろう。


 仮説立てるのは簡単だが、肝心の能力の詳細は不明なままだった。姫の説明では、彼女が嘘をついている可能性が拭いきれない。


 そう思った当日、『勇者の窓』に変化があった。『???』だらけだった項目に、ひっそりと『災禍の種を撒く者』(アジテーター)が追加されていたのだ。それによると、『災禍の種を撒く者』(アジテーター)は飽く迄も集団心理に働きかけるスキルであって、一度洗脳した集団の個人なら洗脳をかけ直すことも可能だが、洗脳を施したことのない個人にはスキルは適用されないとのこと。簡単に言ってしまえば、クラスメイトは洗脳できても他は無理だということだ。


 何故急に『災禍の種を撒く者』(アジテーター)が閲覧可能(取得は不可能だった)になったのかは分からないが、姫が裏切れることはない。


「だから、余計な心配はしなくていいよ」


「そうだね。それじゃあ、おやすみなさい」


 明日から第三層の攻略だ。

 今日はゆっくり休もう。

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