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16 黄金の草

 僕らのレベルは、僕と皆月さんが10、慎太が11だ。慎太の成長は僕たちと比べると早い。


 『罠解除【初級】』、『気配感知』、『アイテムボックス【小】』は既に取得済みだ。


 僕は迷宮の隅々まで視線を張り巡らす。何が死に繋がるかなんて分かったもんじゃない。


 ふと、視線が雑草に止まった。

 いや、雑草なのか? なんだか全体的に金色っぽいような……。

 鑑定を使ってみる。


 ―――――――――――――――

 ◇ヘルネ草

  ポーションの生成に使うと高い効果を発揮する。高レベルのダンジョンの中にしか植生していないことから稀少とされる。

 ―――――――――――――――


 アタリだ!


「よし、摘んでおこう」


 僕は手当たり次第にヘルネ草を摘んでアイテムボックスへと放り込む。

 錬金に使う素材のようだから、いずれ『錬金』スキルも習得するとしよう。


 モンスターに見つからないうちにと、急いで草を摘んでいると皆月さんが生暖かい視線でこちらを見ていることに気付いた。 


「柊くん、お腹が空いてるのは分かってるけど草は食べちゃ駄目だよ?」


「皆月さん、新しい杖を試してみたいからちょっと的になってくれないかな?」


 誤解をするのも無理はないが、なんだか無性に腹が立った。

 その後、僕はやんわりと二人の誤解を解いた。

 結果として、皆月さんが少し麻痺したのはいい思い出だ。

 僕らは協力してヘルネ草を摘むと、再び奥へと進んでいく。








 そろそろ陽が傾きかけている。

 迷宮に入ったばかりの時の太陽の位置が丁度真昼を指していたので、時刻は夕方ということころか。

 僕たちを放り込んだ男の言葉だと、夕刻には帰っていいことになる。

 そろそろ、入口に戻るべきだろうか。


 探索の成果も上々といったところだ。

 あれから目にした宝箱の数は3つほど。


 入っていたものは、順に銀製のダガー、罠解除ツール、銅製のダガー。

 罠解除にツールが必要だったとは、僕の手落ちだった。手に入って良かった。

 宝箱からはダガーが出やすいのか? 少しナイフ寄りのダガーは、戦闘というよりは剥ぎ取りに使えそうだ。


 剥ぎ取りといえば、専用のスキルが『勇者の窓』にあったので取得しておいた。取得条件も簡単なもので、「一回以上のモンスターとの戦闘」だった。

 この世界の基本みたいだ。別にスキルを取る必要はなかったかもしれない。


「戻ろうか?」


 僕は後ろの二人に尋ねる。

 彼らは今しがた倒したワイルドウルフを剥ぎ取っていた。

 皆月さんに剥ぎ取りを任すのは申し訳ないが、ステータスから見ると彼女の方が力があるので剥ぎ取りに適している。同じ魔法職なんだけどね。  


 ワイルドウルフから採取できる部位は牙と皮の二つ。素材になるのはこの二つだけだと鑑定にあった。


 にも関わらず、慎太はワイルドウルフの肉――恐らく腹の部分に相当するもの――を持ってきた。


「戻る前に、モンスターの肉取ってかねぇか?」


「いや……それ食えるの?」


「ゲテモノほど美味いっていうじゃねーか」


 そもそもそれはゲテモノの部類に入るのか。

 慎太はすっかり野生児と化してしまったようだ。彼ならどこの部族でもたくましく生きていけるだろう。


 一方、僕は別の観点から魔物の肉に興味を抱いていた。いや、興味を抱かざるを得なかったというのが正しい。


「ご飯が出るかなんて分からないからねぇ……」


 僕たちは仮にも首輪を繋がれた囚人。飯にありつける確証なんてない。

 だったらここで食べていった方がいいのか……。


「まあ? 仮に不味かったとしてもよ、食わなきゃ生きていけねぇからな。そんときは舌に麻痺頼むわ」


「麻酔がわりに魔法を使わせるなよ」


 皆月さんが震えてるでしょ。

 麻痺も嫌だが、それ以上にこれを食べるのには忌避感がある。 

 僕は血が滴る肉塊を見て嘆息をつく。


「一応アイテムボックスに収納しておこう」


「ひぅ!?」


 皆月さんが微かな悲鳴を上げた。

 ごめんね、でも僕も嫌なんだよ。


「それは、本当に差し迫ったときにしか食べない。いいね?」


「ああ、了解。ステータスが上がったおかげか空腹感も薄いしな。あと一日なら何とかなりそうだ」


 三人分の狼の肉を確保し、皆月さんからナイフを返してもらって帰路につくことにする。

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