10 レベルアップ
キリが悪かったので少し短いです。
「『風刃!』」
もう何度目だろう。既にMPは2割を切り、皆月さんの回復も危うくなってきた。慎太もHPを辛うじて半分保っている状態。こちらの攻撃が単調なこともあり、躱されることもあった。
そんな中、僕の放った風の刃がワイルドウルフの首を断った。
一瞬、何が起こったのか信じられなかった。
だが、目の前の光景は現実そのものだった。
「グェポ……」
血に塗れた断末魔を残し、ワイルドウルフが息絶えた。
「勝った……」
勝った。勝った勝った勝った!
僕らは勝った、生き残ったんだ!
「よっしゃあ!」
「か、勝ったんだよね? そうだよね、柊くん?」
「ああ、僕らの勝ちだ!」
僕は力強く頷いた。
その時、頭にファンファーレとアナウンスが響いた。
《レベルが上がりました!
1Lv→6Lv
ステータスが上昇しました!
スキルポイントを15獲得! 》
「一気に上がったね」
慎太と皆月さんにもアナウンスが聞こえたのだろう。揃って頷いた。
「俺はレベル7になった。お前らはどうだ?」
「僕は6だね」
「私は5です」
それぞれレベルが違う。戦闘への貢献度で経験値が変動するのか。それとも、職業毎にレベルアップまでの経験値が違うのか。
まあ、今となってはどうでもいい。
「スキルポイント、大分溜まったね。全部消費しちゃってたから丁度よかったや」
「俺も『体術【初級】』やら『体力上昇【小】』みたいな基礎能力が上がるスキル取ってすっからかんになってたから、確かに丁度いいな」
「こんなに沢山あるけど、どうしようか」
「夢が広がるな」
そうして二人でほくそ笑む。ちょっと興奮してたりする。
だが、皆月さんはそういうの(スキルポイント)に興味がないようだった。
「わ、私ちゃんと役に立てたかな!?」
戦闘に貢献できたかどうか心配なようだった。僕と慎太は大きく頷く。
「ああ、お前がいなかったら勝てなかった」
「確実に死んでただろうね」
僕らの言葉に、彼女は嬉しそうに微笑む。
「ふふ、そっか! 二人共、もっと私を褒めてもいいんだよ!」
「そういうことなら、ご褒美にもう一回『彼氏の出来ない呪い』を……」
「ごめんなさいごめんさなさい、調子こいてましたすいません」
「え、何それ?」
「ぼくのかんがえたさいきょうのわざ、だよ」
「中二病乙」
張り詰めていた緊張が解け、いつもの軽口が口を突いて出た。
ところで、と口火を切る。
「他のみんなのレベルは上がったのかな?」
隅っこで呆然とこちらを見遣るクラスメイトたちの様子を眺める。
「いや、それはないんじゃねえの? レベル上がってたら反応してんだろ」
「それに、みんなは戦ってないから経験値は入らないんじゃないかな?」
慎太と皆月さんがそれぞれの見解を述べる。確かにその通りだと思う。
さて……。
「小城さん、何か言うことはある?」
僕は人一人を死なせた原因である本人に問う。