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勇者な僕らは異世界牢獄から這い上がる  作者: 結城紅
第1章 異世界召喚編
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01 異世界召喚

 クラス中が沈黙していた。


「頭が高いのよ、このクソアマ!」


「キャッ!」


 ゴスロリ服を着た女子が茶髪の女子の頭を踏み付けた。


「この学校の理事長の孫たるあたしに逆らうなんていい度胸じゃない」 


「ゆ、百合ちゃん。もうやめて……!」


「気安く呼ばないで!」


 茶髪の女の子……皆月愛莉さんが蹴り飛ばされる。

 クラス内で起きている惨状を誰も止めようとはしない。いや、止められない。


 ……この学校には暗黙のルールがある。

 それは、『姫には絶対に逆らわないこと』


 小城百合、通称『姫』は先の発言通りこの学校の理事長の孫だ。同時に超巨大企業の御令嬢でもある。親は多くの政治家と密接に繋がり、理事長である祖父は甚く彼女を溺愛している。彼女はその権威を盾に好き放題し、揉め事や後始末は全て権力に物を言わせて方付けている。


 逆らったらどうなるか。


「ひっ、ぐずっ……」


「泣いてんじゃないわよ! あー、ムカつくわ」


 ……こうなるわけだ。


 彼女は今までに雲霞の如く被害者を出している。不登校から自殺未遂までと様々だ。


 今もこうして一人の女性を蹂躙している。 

 教師でさえも逆らえない相手。他の教師と違い良心的な僕らの担任は自らを顧みず、何度も彼女を助けようと試みたがその悉くが憂いを残す結果となった。

 皆月さんはただ、彼女の行いを注意しただけなのに。

 


「くっ……」


 僕は眺めることしかできない。


 かくいう僕も、偽善ぶって姫をたしなめようとした結果返り討ちにあっているのだ。その時一緒に行動してくれた親友にも等しく恐怖を植えつけられた。

 あることないことを噂され、理不尽な謗りと暴力を受けた。


「ちくしょうッ……」


「慎太……」


 隣で僕の親友、四条慎太が呻く。 


「見てるだけしかできねぇのかよッ!」


 できることなら姫を蹴り飛ばしてやりたい。でも、そんなことをしたらどうなるか。それを知らない彼ではあるまい。


 でも、本当にこのままでいいのか。彼女を同じ目に遭わせてもいいのか?

 どうせ、どうせどん底にいるのなら……。何度泥を被ったところで同じなんじゃないのか?


「そうねぇ、ストレス発散に……貴方の四肢、全部折ってみましょうか?」


「ひっ!?」


「大丈夫よ、貴方は運悪く事故に遭ったことになるから。後遺症が残るかもしれないけどね」


 姫が金属バットを取り出して嗤った。

 僕は――、


「ふざけるなよ!」


 渾身の力を込めて姫を殴った。

 姫が痛みに顔を歪める。


「なにすんのよ、このクソがぁぁあ!!」


 彼女は振り向きざまにバットを振り下ろす。

 しかし、それを遮る影。


「俺にも一発殴らせろや!」


 慎太だ。彼が腕を振りかぶると姫はバットを捨て慌てて後退した。  

 クラスの連中に命令する。


「あの二人を拘束しなさい!」 


「こんな奴の言うことなんて聞くな!」 


 クラスメイト達が困惑する。彼らだって好き好んで人を傷つけたくないのだ。


「おじい様に言いつけるわよ!」


 その一言が決定打となってクラスメイトたちが僕らの四肢を拘束する。

 僕も彼らも悔しさに顔が歪んでいた。


「さあ、あたしを傷つけたお仕置きよ……」


 姫が足を振り上げる。


「百合ちゃんやめて! 悪いのは私だよ!」


「うるさい黙れブス! あたしに纏わりつくなッ!」


 皆月さんが必死の形相で姫の足にしがみつくが足蹴にされて振りほどかれる。

 悔しい、何も変えられない自分が情けない。


「情けない顔しちゃって、馬鹿みたい。……死ね!」


 僕と慎太が順繰りに蹴られる。

 蹴られて蹴られて蹴られ続けて……。


「え?」


 気付いたら光に包み込まれていた。

 とうとう頭がおかしくなったのかな……。

 意識が遠のいていく……。


 この日を最後に、僕、柊恭平とクラスにいた人達全員が姿を消した。

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