枯木
あの事件の後、氷付けになった時計塔は学園長が気に入り、学園の遺産となった。
そして事件勃発の原因は桜の主張が通り、近衛は退学となり、少年院に入ることとなった。
水無月奈緒は医務室で意識を取り戻す。
そして切られた右腕を見る。
自分の魔器、槍を握っていた右腕は無く、あったのは中身のない袖だった。
飛鳥を守った代償は大きすぎた。
「う、うう」
奈緒は右腕を失った悲しみと今後の不自由な生活の想像をし、泣かずにはいられなかった。
「あああああああああああああああ、あああああああああ」
涙でボヤけた瞳に一枚の紙が映る。
その紙は破けている。
捲ってみると綺麗な字で、自分の知ってる字で、
──苦しい?
苦しいよ。なんで私が、飛鳥を助けただけなのに私だけが苦しまなければならないんだ。
罪人こそ苦しくまなければいけないだろ。
──悲しい?
悲しい。利き腕失って槍さえ振るえなくなった。これじゃあ飛鳥を守ることができない。
──後悔した?
後悔、してないと言えば嘘になるが、したかもしれないし、してないのかもしれない。
安堵もしている。飛鳥が無事でよかった。
──それらの気持ちがあるなら次は強くなる番だよ。
まだ私を休ませてくれないのか。
「うう、う私はまだやれるのか」
──進みきった先にもう一人の奈緒ちゃんが必ず待ってるから。
次は自分に挑む番なのか。
少し前に収まっていた涙がまた込み上げてくる。
「あああああああああぁぁぁぁぁぁ」
──ありがとう。




