開花
分割しながら、書いていきます。
幼い少年は火の海になった村を走っていた。
少年は、黒く長い髪を揺らし後ろの光景を目に映そうとする。
そこには、人々が血を流し倒れているのが嫌になる程目に焼きついてくる。
「お父さん……お母さん……村のみんな……」
少年は前を向き再び走り出す。
自分の所為だ。自分の所為でみんな死んだんだ。自身の力を満足に使うことが出来ないから……。自分から遠ざかるんだ。
と、自分を責めながら火の海を駆ける。
同時に、何故、自分には失うものが大きいのだ。世界は、そんなに理不尽なのか。と、問うてみる。しかし、ここには少年以外誰も居ない、だから、少年の心の声など聴いてくれる人は居ない。
はずだった。
「そうだよね、世界は、理不尽過ぎるよなぁ、だけど、君は今から、心が完膚無きまでに無くなるから、そんなことを感じなくて済むから大丈夫」
突然建物の陰から男が姿を現す。少年がそこに来ることが分かっていたかのように。
男は不敵に笑いながら手をかざす。口元が動き魔法の詠唱が始まる。それが何の魔法かは分からない。
しかし、これだけは分かる。少年の命という輪廻がここで尽きるということを。
そう思って目を瞑った。しかし、いつまで経っても身体から魂が抜けた感覚は訪れず目を開けると、兄である神無月一樹が、少年の身代わりになっていた。
少年は泣いた。声がかれても涙流し続けた。
一番尊敬していた人を見知らぬ人に殺され、少年の代わりにこの世から消え去ろうとしてるのだ。
そんな兄の手に握られた黒い剣はいつの間にか、少年の手に渡っていた。一樹は口を動かし魔法を詠唱した。
少年は淡い水色の光を帯びた。
「○○○○、お前は、神無月の、この村の希望だ。俺達はお前の中で生き続ける。だから、お前は、強く、何にも囚われずに、生きていけよ、じゃぁな」
そう言ったあには、目を閉じ、静かに眠りについた。
少年は、手を伸ばすが届かず視界は真っ白な世界に染められていく。
やだ、兄さん、僕を置いて行かないで、お願い、僕もつれてって、僕を一人にしないでーーーー。