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れん  作者: 萌葱
3/20

3

 学年が変わっての新学期、出席番号順に並ぶ席に座って、先生が入ってくるまで本を開く。

  隣の椅子が引かれた音に、隣の席は誰だろうと視線を向けると

「あれ…、瀬名君? 同じクラスなんだ」

「じゃなきゃ、ここに居ないだろ、見なかったのか? クラス割」

「ざっとは見たけど、男子の知り合いなんて殆ど居ないからチェックしなかった」

 そう言って笑うと

「お前らしい雑さだな、ま、よろしく」

 瀬名君独特の口の端で笑うような笑顔でそう言ってくれた

「それ、新刊か?」

 読もうと机に出した本に目をやってそう聞いてくる

「うん、あの宮尾佑馬の新刊だよ! やっとだよ~」

「宮尾……ああ! あのドラゴンサーガのか?」

「そうそう、よく覚えてるね」

「あれは、結構良かった、確かに地味なんだが話がしっかり作られているから引き込まれるよな…」

 大好きな作家の一人である彼の世界に共感してくれたのが嬉しくて

「読むなら終わったら貸そうか?」

 そう言うと、瀬名君は少し驚いたような顔をして

「良いのか? それ、お前の私物だろ?」

「ゆっくり読んでるから少し掛かるかも知れないけど、2.3日後で良ければ」

「お前読むの早いのに…、よほど大事に読んでるんだな、じゃぁ、遅くなっても構わないから終わったら借りて良いか?」

そう言われて、共有できる友だちがいることが嬉しくて、私は思い切り頷いた


 新学期早々のHRは委員と係を決めていく流れで、最初にクラス委員を男女二名決めた後は彼らの司会で委員の希望が取られていく。

 基本的には予め希望をメモに書いたものを黒板に書いていき、ダブった場合は話し合い(基本的にはじゃんけん)で決まる。

 図書委員はそんなに人気のある委員ではないから大丈夫だとは思うけれど、少し不安で…。

 クラス委員に先ほど推薦で決まった長尾君がメモを読みあげて、同じく推薦で選出された柿沢さんが綺麗な字で板書していく、先ほど書きこまれた図書委員の私の名前の横はまだ空欄で、男女ひとりずつ決まる委員で私と競合する人間は今のところ居ない事にほっとていると

「必死な顔だな…」

 瀬名君に少し笑いながら言われて、隣の席に顔を向ける

「なんでだろうね、委員になれなくてもあそこに行くのは自由なんだけどね、関わっていたいと思うんだよね」

 そう答えると、ふっと笑って黒板を見て

「決まりそうだな…」

 呟いた。

 つられて黒板を見て驚く、私の横の空欄はそのままだけど、男子の委員が瀬名君!?

 ざっと黒板を見るとクラスのほとんどの名前は出揃った様子で…、ダブってしまったところはこれから話し合いだけれど、そうじゃないところは第一希望が通ることになっているから、これで決定と思うと体の力が抜けて…安堵の息ををつきながら隣を見る。

「何で?」

 そう聞くと、瀬名君は少し考えるような顔をして

「どうせ何かやるんだ、何だか面白そうだったし」

 そんなことを言っていると、チャイムが鳴り一次希望はそのまま決定した後、休み時間を置いて残りの話し合いをすることになった。


 驚いたことに十分の休み時間に、数人の既に委員が決まった女子と、希望がダブってこれから話し合いという女子に変わってくれと言われた。

 他のことならば話し合いの余地もあるのだけれど、こればっかりは私も必死で聞き入れてあげることは出来ない。

 教室の隅に引っ張られては必死に頼まれるのを断るのは心が痛かったけれど…。

 休み時間が終わってぐったりしていると

「どうしたんだ?」

 瀬名君に話しかけられて、机にペチャリとなりつつ顔を上げて

「突然図書委員の希望者が増えた…」

 そう言うと、思い当たったような顔をした

「あー…」

「やっぱ、貴方のせいですか」

「俺が悪いわけじゃないがな、でも一年の時もそんな騒動があったらしい」

「らしい?」

「一年の時委員が一緖だった奴がそんな事言ってた」

 しらっとそんなことを呟いている瀬名君に、私は言葉がなくため息を付くしかなかった…けど

「で?」

 重ねて聞かれて

「こればっかりは変わってあげられないよ……」

 そう言うと、瀬名君はほっとしたように笑った。


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