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れん  作者: 萌葱
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 どうしよう…、本当に私はおかしくなってしまったのかな?

 ほんの数ヶ月前は、ううん、数週間前は平気で彼の側で友達で居られたのに…

 友達に戻る為に距離を置いていたら、だんだん瀬名君の姿を見ている事さえ辛くなってしまった…。


 坂本君と話した時は凄い名案だと思った。

 側に居るとどうしても気持ちが募るなら、距離を置けば良い、そうしたらその気持ちも徐々に消えて私は友達として彼の側に戻れる。

 そう思ったのに、状況は酷くなる一方で…。

 冬華ちゃんに頼んで少しの間曜日を代わって欲しいとお願いしたら、快諾してくれた。

いつまでですかって聞かれて、少し詰まって、でも、この気持ちに気がついてからの日数を考えたら元に戻ることにそんなに日にちを要するとは思わなかったから…

「ごめん、はっきりしないんだけど、そんなに時間はかからないと思う」

そう答えたら、少し不思議そうな顔をして、でも、

「判りました、特に用事があるってわけでも無いですし良いですよ」

そう言ってくれたから、これでもう大丈夫と安心したのに…。


 最初の一週間はとても調子が良かった。

側に居る時間を減らして、教室でも視界に入れないようにして…、そうすると私の胸は普通に鼓動を繰り返して、おかしな痛みをもたらすことも無い、これなら普通の私に戻れるってそう思ったのに…


 念のためにもう一週間って冬華ちゃんにお願いした頃から急に駄目になった。

 もう随分一緒に居ないなってふっと思ったら、急に瀬名君の怒った顔や呆れた顔、そしてクリスマスの時に私を見つめた優しい顔…そんな記憶が一気に胸にあふれかえって…、

瀬名君が恋しくてたまらなくなった。 

 そして、私を見る彼の物問いたげな視線、出来るだけ視界に入れないように登下校の時間をぎりぎりにしたり、休み時間は教室を出たり、そんな事を繰り返していると、視線の端にそんな彼の表情を捕らえる時があって…。

 そのたびに、早くいつもの私に戻って何でも無く一緒に居るようにしないと、側にさえ居られなくなるって焦るのに、なんでこんなに気持ちは思い通りに行かないんだろう?


 先日は恵ちゃんに何かおかしくない?大丈夫?って聞かれたけれど、流石に友達と言えどいつも瀬名君の側に居る彼女にこんな気持ちを相談するのは怖くて、恵ちゃんは信用しているけれど、それでも、どうしても言うことが出来ないで居ると、少し寂しそうに笑って

「まぁ、愛海が結構頑固なのは知っているし、ほんときつかったら言ってね」

 そう言って、それ以上追求しなかった恵ちゃんには感謝してもしきれない。

 心配してくれたのに、それを返すことも出来なかったのに優しく納めてくれた彼女にはこの気持ちが収まればいつか話したいと思って…


ガラリ…

扉が開いて、反射的に振り向いて息が止まりそうになる

瀬名君!? いつもは当番日以外は余り来ないのに、木曜日の昼休みなんて中途半端な時間に表れた彼に驚く

「どうしたの?」

「ちょっと読みたい本が…な」

そのまま書棚に向かって

暫くそこで本を選んで、一冊を手に取りカウンターに置いた

…ドラゴンサーガ

懐かしいタイトルにカウンターに立つ瀬名君を見上げると

「久々に読み直したくなった」

そう言って私を見るのに

「そ、そうだね、良い本は何回読んでも飽きないよね」

何時もなら、こんな時は幾らでも大好きなシーン、感動した伏線そんな話になるのに、こんなありきたりな言葉しか出てこなくて…でも

「そうだな」

そう言って、手続きを済ます彼は何時ものままに見えて


まだ、大丈夫…だよね?

頑張ってこの気持ちを消したらまた一緒に居られるよね?

願うようにそんな事を思いながら、

彼の背中を追いそうになる視線を必死で引き留めた。



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