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れん  作者: 萌葱
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 最近、工藤の様子がおかしい…

 先日、暫く当番の日にちを冬華ちゃんと変わってもらうかも知れない…

 そう言ってから、二週間、本当に後輩の榎木が当番日にはカウンターにいて、少し困ったような顔で頭を下げてくる。

 別に榎木は何も悪くないのだけれど、何故工藤がそんな状態になっているのかと考えると、自然と気持ちは重くなった…。

 曜日の変更を告げているせいか、榎木と仲の良い常連の柏木も金曜日に図書室に来るようになっていて、その明るい雰囲気に榎木がほっとするのも分かって、元々、妙な客を防ぐために準備室で補修作業とかをすることも多かった俺は、柏木が来ると、準備室で作業をすることが増えていた。

 けれど、一人で静かな場所で単純作業をしていると段々余計な考えが浮かんで来るのを止められない…。


 何故、工藤は突然あれほど執着していた図書館の当番を変えるなどと言い出したのだろう?

 榎木の話によると明確な期限はなくて…最初は一週間くらいだと思ったけれど、その次の週も…などと言い出す様子らしい。

 その上最近は、休み時間になると教室から消える…だから、何があったのかを聞くことも中々出来ずにいて…。

 マネージャーの吉田に聞いてみた時も、何だか思いつめている感じで何か有ったのかは判るんだけれど、何も言ってくれないともどかしそうに呟いていて…。

 今のところ部活を優先していて行っては居ないが、火木の工藤が榎木と変わっている図書委員の日に行けば捕まえることは出来ると思う…でも、そこまでするとなにか、追い詰めてしまう気がして…。

 一度だけ、当番を変わった木曜日の昼に第一に顔を出した時に、驚きながらどうしたの? なんて言ってきて、その時の、どこか無理があるように必死で普通に振舞おうとする姿がなんだか痛々しくて、それ以上追求できなくて…。


 そんなことを考えていると、不安は募る。

 あいつは、俺の気持ちに気が付いて、だから逃げてるんじゃないか…とか。

 俺はあいつが好きだけれど、追い詰める気も急ぐ気も今のところはなくて、そういうことに不慣れな工藤が受け入れやすいようにゆっくり進む気で居た…。

元々、人酔いするのもあって、交友範囲は狭く馴染むには時間はかかる、けれど一回受け入れればその相手には無警戒で…。

 その姿は危なかしいけれど、俺を友人として大事に思ってくれているのは判っていたし、そのポジションから抜け出すのは難しいとは思ったけれど、あいつの成長に合わせて少しづつスタンスを変えようと、それくらいの器用さはなんとかなると思っていた。


 二人だけの当番の日に、どうせ気が付かないと思って、よそ見をしているあいつを追う視線に気が付かれたのだろうか?

 あの日、一人で良いという工藤に多少強引に書棚整理を手伝った事が不自然だと思われたのか…?

 そういえば、手伝いを申し出た時はいつになく強情だったような気もして。

 …あいつは、答えることのできない想いに気が付いて怯えて逃げ回っているのか?


 でも、同時に気になる事はもう一つ…。

 最近、妙に物憂げでその姿は妙に大人っぽいと、サッカー部の連中や柏木なんかが言っていて。

 誰か好きな人でも出来たのかな?

 そんな風に呟く坂本の言葉を聞いていられなくて、汗を拭く振りをして顔にギュッとタオルを押し付けて固く目を閉じた。

 少なくとも、あいつが挙動不審になるまでそんな様子は見えなかった…。

 隠し事の上手いタイプじゃないし、そんな相手がいればすぐに分かると思ったけれど、確かにここ最近の工藤は何処か物憂げで…。


 何を悩んで何を苦しんでいるのか肩を掴んで聞きたい気持ちはある。

けれど、そのどちらかが本当だった場合、俺はそれを冷静に受け止められるのだろうか?

そう思うと自分に自信が持てなくて、俺はどうすることも出来ずにいた。


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