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私と美雪がそれぞれお昼に当番がなくて、恵ちゃんも部活の打ち合わせとかの予定のない昼休み、そんな日は週に一度もないのだけれど、そういう日は三人で屋上か中庭でお弁当を食べる事に決めていた。
少し遅れるから、先に行っていてという美雪の言葉に恵ちゃんと二人で屋上でお弁当を広げていると
ほど無く美雪がやって来て、屋上のベンチに座るなり
「ごめん、恵、駄目だった…」
手を合わせて申し訳なさそうにそう言った。
恵ちゃんは、そっか…と呟いて
「良いの、ごめんね、難しいのは判っていたし…ありがとう」
そう言ってふわりと笑う、けれどその笑顔が少し曇っているようにも見えて
「どうしたの?」
と、口を挟んだ
「んー、サッカー部がね、もうすぐ大会なのよ、でね、いつもはマネージャーは私と一年の有紀で十分なんだけど、この時期だけは手伝ってくれる人が居ないと難しくてね…先輩も友達に頼んでたから、誰かいないかなって顔の広い美雪に頼んでたんだけど」
「私も聞いた時は、一月程の期間、サッカーは詳しくなくていいから、洗濯や掃除や飲み物作るとかの雑用を手伝える子って、面倒見のいい子なら平気かなって思ってたんだけど、最後の条件がねぇ…」
そう言ってため息を付く
「何なの?」
「部員に公平に接することが出来る子、サッカー部って結構人気ある子が多いから…、なんといっても瀬名君、坂本君とか、森本君とか…」
「部長の篠原君もね、とっつきやすいしファンは多いよ…木田君も結構隠れファンが居るし」
「其の誰に対しても心のなかは兎も角、公平に接する子って…結構絞られちゃって、それでも、彼氏の居る子とか当たって見たんだけど、今日の子は、彼氏がやっぱ嫌がったみたいでね」
困ったように二人してそんなことを言っているから
「期間一月位なら、私がやろうか?サッカー詳しくなくていいんだよね?…掃除洗濯と飲み物位ならうちでもやってるから出来るし、最後の条件は元々友達とかだと駄目なの?」
途端、二人に
「愛海、図書委員は!?」
「本当に頼めるの!?」
口々に言われて
「図書委員は、一月くらいなら大丈夫だよ、元々私のせいでサボる子が居るから、引き締めに少し当番抜けたらどうだって先生に言われたばっかりだし、私でいいなら構わないよ」
そう言うと
「委員抜けれるなら最初から愛海に言えばよかった…」
美雪はそう呟いて
「本当に? 良いの?」
信じられないような顔をして確認を取る恵ちゃん
「大丈夫だよ、今日の放課後司書の先生に話してくるから、その後なら体開くし」
「助かる…じゃぁ、悪いんだけど、其の話し合いが終わったら、サッカー部のグラウンド来てくれる?」
そして、私の臨時マネージャーは決まったのだった。
放課後、図書館で司書の先生に友達の手伝いに一月程当番抜けてもいいですか? と聞いたら、何だか、ほっとしたように行ってらっしゃいと言われてしまった。
人が足りない時は私が第一行くし、貴方が図書委員以外のことに興味をもつのはとても嬉しいとか言われて…何だかよほど心配されていたんだなと思い申し訳なかった。
ともあれ、話し合いが終わって、そのままグラウンドに言って恵ちゃんに声をかけた
「okもらえたよ、ただ、ごめん、委員会の会議が月一回あるのだけ出てもいいかな? 早めに抜けるようにするから」
「それくらいなら、大丈夫、ほんと助かる…雑用がまるで進んでなくて…」
嬉しそうに恵ちゃんにそう言われて、嬉しくなって
「どんどん使って」
そう言ったら、申し訳なさ気な顔しつつ
「じゃぁ…ごめん、部室の掃除お願い…あ、すっごくごちゃごちゃだからジャージに着替えてね」
そう言われ、向かった部室は
「成程、やりがい有りそうだ…」
一度教室に戻り、ジャージに着替えてサッカー部の部室の扉を開けるとモワッとした空気に思わず笑ってしまう。
ドアを全開にして、窓を開けて、さて…と見回す、洗濯物の手が足りないと言っていただけ有って、ビブスやTシャツ、タオルなどがごちゃごちゃと置いてあるのを一纏めにして、書類は分からないから出来るだけ触らないようにして…、ざっくりと分類分けした後は、殆ど機械的な動きで洗濯しつつ部屋を掃除していく。
「愛海…って、凄いわね」
部室に来た恵ちゃんが驚いたように部屋を見る
「ゴミとかは分からないから埃とか以外は捨ててないから後で分類して、洗濯できるものは洗濯中だよ、書類もまとめたから後で目を通してね」
そう言うと
「ありがとう、ココまで即戦力と思わなかった……、っと、部員に紹介するから来てくれる?」
そう言う恵ちゃんに連れられて練習後の部員が並ぶサッカー場迄行くと
「お、工藤さん、手伝ってくれるんだってね、助かる」
相変わらず気軽に声を掛けてくる篠原君の横で
「工藤!?」
驚いたように固まる瀬名君
「はい、みんな、紹介します、大会迄手伝ってくれる工藤さん、部長と副部長と木田君と私の友達です、大事に扱ってくださいね」
にっこり笑ってそう言う恵ちゃんに、部員がざわりとするのを不思議に思いつつ
「暫くお手伝いを頼まれました、その辺りをうろうろしていると思うけれどよろしくです」
そう、頭を下げた。




