第4話
”全身皮剥狂”ザクトズルト
それがオーク部隊の小隊長の名である
「ぜんしんかわはぎってすごい肩書やなあ……」
マリチは苦笑する
俺たちに声をかけてきた騎士風の女性(どうやら隣国の王立騎士団の小隊長さんだったようだが)の語った内容、それはある地方都市にある小さな村……そこがオークの一小隊に占拠されたというのだ
二人の冒険者はそこの村出身で、地形や街の構造をよく知る者たち
そしてまだ生存者も多いであろう村に今すぐにでも救助に行きたいと切望している
話を聞きながらぼそぼそと話をする俺とマリチ
「ザクトズルトっていやあミッションで初期に戦った記憶あるなあ」
「今だと多分通常攻撃1発だと思うなの」
「何か気になることでも……?」
騎士小隊長が怪訝そうな表情で聞いてくる
「え、あ、いや何でもないです。けどまあ行きますか。退治に」
「密林の王を討伐されただけのことあって、さすが剛毅ですね。だがしかしザクトズルトは残忍な性格で、しかもなかなか狡猾だと聞きます。もしかしたら生かした村人を人質に使うなども平気でやってくるかもしれません…!」
「そ、そうですよ!貴方たちお二人でもあのオーク小隊にはさすがに手こずると思います…」
「なんせ数が多いですし!」
地元出身者の二人の冒険者も口々に焦りと伝えてくる
「まあ……」
俺はおもむろに冒険者二人と騎士団小隊長の手をつながせる
そして冒険者の一人の青年の肩に手を置いて振り向いた
コクリ
マリチがパッと俺の手を掴んで転移魔法を詠唱する
ブォォォン
『えええーーーー』
ミッションで一度行ったことのある場所には基本的に転移可能だ
まあ、平たく言うと多分俺たちは世界のどこでも大体いける
画面の中で見てきた美麗な世界を実際にこの目で見て回るだけでもきっと涙が出てしまうだろうが、それはまた暇ができたときにいつか行おう
突然の出来事に動揺する3人を引き連れ、一瞬にして村の入口に到着した我々
「おお…懐かしいなあ…二年ぶりか…」
「うん…でも入口の門とかは壊されてるし…」
「そしてあの邪悪な紋様。奴らの仕業だな」
騎士小隊長の指さす方向には、獣人たちが信奉する神のおどろおどろしい紋様が血のような色で殴り書きされている
「よしではさっそく姿隠しの薬をつかって侵入するぞ。皆は私の後ろについてきてくれ……って、え、ちょ」
小隊長には悪いが、話を最後まで聞くことなく俺はずんずんと歩き始めた
マリチもぴょこぴょこと着いてくる
「お二人!?」
一つ目の小道を曲がると、そこにはオークの兵隊がいて当然見つかる
「寝かせ~~」
マリチの範囲睡眠の魔法が瞬間的に完成し、相手は吠える間もなく夢の中
「は、早……」
冒険者のうちの一人は魔導士なようで、詠唱の速さに目を丸くする
「あーーーもしかして眠らせるより黒魔法の方が早い?」
マリチが怖いことを言う
そう。寝かせて進むよりも範囲攻撃魔法でワンパンで消していく方が早いのだ
ゲームの中だったら迷わずそっちだったが、今は現実に目の前に相手が存在しているのでなんというか……無駄な殺生はしなくていいかという謎の心理が発生している
「まあ、様子見で寝かせでいいと思う」
「そか。んじゃこのままで」
マリチはニコッと笑いながら目の前に10匹以上集まってこっちに弓を向けようとしているオーク集団を全員まとめて地に伏せさせた
「すごい……」
「けど、こいつらが起きてきたら……」
「ゆ、油断されるなよお二人」
冒険者二人のみならず、騎士小隊長も少し声が震えている
そうこう言いながら進んでいくと目の前に少し小高い丘が現れ、その上に屋根の尖った建物が見えてきた
「あそこだな」
俺は剣を抜きながら魔法を使う
「多段攻撃および物理障壁」
ざわつく後方
そういえば多分3人には俺が何のクラスかもわかってないかもな
初期のソーファンにはルーンナイトは存在しない
「あれは教会か!あそこにボスが?」
俺たちはコクンとうなづいた
「あ」
「そういえばそうだった。姿隠しと音消しだね」
マリチはおもむろに空中に魔導書を浮かべ、呪文の詠唱を始めた
その瞬間、5人全員の姿が消え、足音がしなくなる
「あー説明しとくんですけど、多分あの教会の中には生きている村人の方々が人質になっていてザクトズルトはそれを盾にしてくるんですよ」
「な!!」
「なんと卑劣な……」
「なんでこっそり隠れて侵入して、一撃で倒します」
「えっ」
姿隠しの術は激しい動きをすると解けてしまう
教会の周辺には多くの見張りのオークがうごめいており俺とマリチ以外の3人は緊張の極致だと思われる
しかし俺はそうはならない
なぜなら相手を見るだけで何故か自分と比べてどの程度のレベル差かわかるという、ソーファン仕様がそのまま適用されているのだ
そして、この村にいるすべてのオークが
「練習相手にもならない」
と表示されている
ドアを蹴り飛ばしたら魔法が解除される可能性がある
ので、堂々とドアノブを回して侵入する
「あ”ーーー?」
「んあ”?」
ドアのすぐ横にいたオークたちが何やら声を上げ首をかしげる
基本的に獣人たちは共通語をうまく話せない
だが高位の者ほど知力も高くなっていくようで、俺の経験ではオーク族の皇帝や、その側近レベルになるとそこそこ流暢に言葉を扱えた気がする
「dsjf;ojbj:fb:j!(なぜ今ドアは開いたんだ!)」
礼拝堂の奥から大きな声が響いてきた
どうやらあいつがボスのようだ
なにやら叫んでいるのはオーク族の言葉だが、ある程度は理解ができる
「警戒しろおまえら!!!」
鋭いな
寄せ集めの獣人族部隊とはいえ小隊長を務めるだけはある
戦闘的な感度はあるということか
足元に気を付けながら奥に進んでいくと
奥の小部屋の前にそいつはいた
そして部屋の奥に住民たちは集められているようだ
部屋の中に見張りのオークの気配はない
眠りの魔法をつかうと姿隠しの魔法は解除されてしまうので、方法は一つ
ゴスッ
俺はおもむろに振りかぶってザクトズルトに振り下ろした
ひと際大きいオークのボスが半分になるのと同時にマリチが見張りのオークに攻撃を行う
「範囲氷撃~~」
地面から氷の柱が突き出て敵を黙らせる
そして…
「そろそろみんな起きてくるころだね」
そういいながらバァン!!とドアをあけ放ち外に出るマリチ
「天空を舞う星々よ、我が求めに応じ大地に降り注ぐがよい~~」
『は?』
騎士小隊長と冒険者の3人が呆然とする中
空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから巨大な隕石が落ちてきた
俺はぼそっと呟いた
「メテオストライクで全員潰します」
(;一口一)
『ええええーーーーー』
「あ、家、は?」
『え?』
俺とマリチは一瞬止まったが、時すでに遅し
魔法陣を通して落ちてきた巨大な隕石群は、次々と村中のオークたちを様々な建造物もろとも押しつぶしていった




