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世界はまだ脈打っている  作者: GARASU
1部
10/12

10話 地上の尋問

昇降機は、すでに“上昇”というよりも“射出”に近い勢いになっていた。操作盤が破壊されて以降昇降機のスピードが上がっている。


「……止まらへんな」


アリアは片手で鉄パイプを握り、もう片方で柵を掴んで体勢を低く保っていた。

 足元では、転がっていた工具や金属片が、振動でカタカタと踊っている。


策を乗り越えた怪物は既に2人の目の前に迫っている。


「これは地上に出るまでに倒せそうには無いね」


アルミアは足元に落ちていた鉄板を拾い上げ正面に構えた。

 両手で構えると、ずしりとした重さが腕に伝わった。


「私もちょっと体がなまってるかも」


次の瞬間、怪物が動いた。


 床を踏み砕くような音とともに、巨大な腕が、横薙ぎに振り抜かれる。


「来る!」


 アリアは即座に鉄パイプを突き出し、

 攻撃の軌道に合わせて角度を変えた。


 ギィンッ――!!


 金属同士が擦れ合う耳障りな音。

 衝撃が腕を貫き、指先が一瞬痺れる。


「っ……重っ!」


 ただ受けただけで、体勢を崩されそうになる質量。


 アリアはすぐに足を引き、次の瞬間床を蹴って低く滑り込んだ。

巨腕が空を切り背後の柵に激突する。


その隙を逃さず――


「――っ!」


 アルミアが鉄板を投げた。


 回転しながら飛ぶ鉄板が、怪物の顔面へと直撃する。


 ガンッ!!


 一瞬、確かに手応えがあった。

 黒い眼が揺れ、体勢がわずかに崩れる。


「効いた……?」


鉄板は弾かれそのまま昇降機の外へ壁に弾かれながら暗い下方に落ちていく


「……あかん」


 アリアが低く呟く。


「今の、ほとんどノーダメや」


「だね」


 アルミアは、すでに次の鉄板を手に取っていた。


怪物は怒りも苛立ちも見せない。2人をじっと見下ろし笑っているようだ。


再び、腕が振り下ろされる。


 今度は縦。


 床ごと叩き割る勢いの一撃。


 アリアは柵を蹴り鉄パイプを支点に身体を捻った。


 ギリギリで回避。


 だが、衝撃波だけで身体が浮く。


「くっ……!」


 着地の瞬間、足元が滑った。

 昇降機は、さらに速度を上げている。


「アル!」


「!!」


 アルミアが鉄板を盾に構え次の攻撃を真正面から受け止める。


ドンッ!!


 鉄板が大きく凹み、アルミアの身体ごと後方へ吹き飛ばされた。


「――っ!!」


 金属が悲鳴を上げ背中が柵に激突する。

 視界が白く弾け背中に鈍い痛みが走る。


アリア吹き飛ばさアルミアと同時に頭上に光が見えた。


「もう地上が見えてきてしまったか」


昇降機の終点。

薄い光が確かにそこにあった。


「このままやと……」


アリアが歯を食いしばり倒れたアルミアへと寄る。


「止まらん。 着いた瞬間、吹き飛ばされるで」


その予感を裏切らないように昇降機はさらに加速した。


※※※


中央塔。最上階、所長室。

タリアとリア2人は既に入室していた。


重い扉の向こうで、

 刑務所長ガルア・マッコールはデスクで書類を眺めながら座っていた。


「何か用かね。第1収容所班長タリア・モリエス」


窓の外からの月明かりが彼の眼鏡に反射し目元が見えず表情が伺えない。


「崩落の件、把握しているか」


タリアの問いは、真っ直ぐだった。


「もちろんだ…既に救助班によって全員救出済みだと報告を受けている。君も崩落に巻き込まれたそうじゃないか」


「リア…」


「はい!」


リアはて携帯端末を取り出しガルアに向けて写真を見せる。


地下で見たもの。

囚人の失踪。

実験設備。

すべてを突きつける。


「であれば、これらについて…我々に説明して貰いたい」


アリアの目は普段囚人に向ける厳しい視線でガルアを見ている。


「やれやれ…」


ガルアは、椅子から立ち上がる。


 その動きは――

 どこか、ぎこちなかった。


「実験は、ほぼ完了している」


 声色が変わる。

合成した音声がスピーカーから発せられる様な機械的な声だ。


「“置換現象”に対する理解が浅い者ほど、君たちは彼らを“怪物”と呼ぶのだろう」


 次の瞬間。


 ガルアの胸部が、音を立てて“割れた”。


人間の皮膚が人工的に作られた物と分かり冷たい光沢を帯びた構造体が露わになる。


 骨格。

 関節。

 精密に組み合わされた、非有機の内部。


着ぐるみのように脱ぎ捨てられた外皮の中からその正体、一体のアンドロイド。


赤く発光した瞳が2人を見る。


「この場所は実験に適していた。人目を気にせず、実験体も確保出来る」


腕が変形する。


指が折り畳まれ、内部から銃身のような構造がせり出す。


「だが…そろそろ潮時か…」


銃口が2人に向けられエネルギーをチャージする様に白く発光する。


「タリア・モリエス…君は優秀であった」


リアが息を呑む。


 タリアは、一歩も下がらなかった。


※※※


 ――衝撃。


昇降機が終点を突き抜け、アリアとアルミアの身体が宙を舞う。アリアは即座に体勢を変え、アルミアを抱えたまま地面に叩きつけられた。

2人はゴロゴロと転がった後、辺りを見回した。


「……生きてるか?」


「たぶん」


月明かりが2人と周囲を照らす。囲むような壁と建造物によってここが未だ刑務所の敷地内である事が分かる。


ドスン、と重い音。


二人の目の前に怪物が降り立った。


地上の光の下で見る姿は地下で見るよりも禍々しい。昇降機に乗っていた発電機を軽々と持ち上げ倒れた2人はへと迫ってくる。


ビー!ビー!


耳をつんざくような警報音が鳴り響き、赤いサイレンが四方にある監視塔から光る。

看守が収容所外に居る囚人のアリア達発見したのだろう。


監視塔から伸びる強い光がアリア達と怪物を照らした。


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