第6話 「茉莉」—今、14人いない?
チャット欄を見ていると、あっという間に流れが速くなる。
誰かが暴露して、誰かが笑って、また誰かが本気で怒る。
画面の向こうでみんなが舞台に上がっているみたいで、茉莉はわくわくしていた。
劇団に所属しているから、反応するときも自然と大げさになる。
「えー!」「ウソでしょ!」
と文字を打ちながら、顔も声も派手にリアクションしてしまう。
自分のブースの中だけなのに、つい舞台の上に立っている気分になるのだ。
スクロールする視線がふと止まった。
リストの中に、見慣れた名前があった。
"美唯"
一瞬、息をのんで、次の瞬間に大きな声を上げてしまった。
「えっ、美唯いるじゃん!」
教室全体がシンと静まる。
数秒後、チャット欄が一気にざわついた。
[毎日が日曜日]「は?なんで?」
[ナイショの女王]「休んでるはずじゃん!」
[アサイー]「14人いる……」
茉莉は慌てて笑顔を作る。
(やば、みんな固まっちゃった)
それを隠すように、軽くふざける。
[SweetM]「ねえ、今、14人いない? 幽霊も参加できんのー?(笑)」
わざと演劇のセリフみたいに打ち込んだ。
でも、笑いは戻ってこなかった。
ブースの中で、茉莉は唇をかんだ。
明るく振る舞えば、なんでも舞台の台本みたいに変えられると思っていた。
あの時も、だからわざと「台無しにされ傷付いた」ふりを貫いたんだ。
でも、今のざわめきは、演出じゃ止められない。
胸の奥に、不安が広がっていく。
このあと何が起きるのか、茉莉にも想像できなかった。




