表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

「ミサオサマ」調査

不思議な出会いをしてから3日がたった。

あれから毎日屋敷に寄ってから帰っているが、あの狐は一度も見ていない。

それに、それ以上に気になることがある。

凛華のことだ。

あの日からどうも様子がおかしい気がする。

授業が終わるとすぐ帰ってしまうし、話しかけようとすると、驚いて逃げてしまう。授業の話も上の空だ。

ということで、尾行してみることにした。

何もないといいのだが…


放課後。凛華は空き教室に入って行った。

「あれは…噂にあった教室?まさか本当に…。」

戸の隙間から中を覗いてみる。凛華はポケットから折り畳まれた紙を取り出すと、それをロッカーにいれ、胸の前で手を合わせると、こう唱えた。

「ミサオサマ、ミサオサマ、叶えてください!」

「―っ!」

激しい悪寒がした。狐と会った時に似ているが、そんなものとは比べものにならないほど激しい悪寒。体の震えを必死に抑える。

だが、凛華はなんともないようだった。何度もお願いして慣れているのだろうか。そんなので耐えれる代物ではないと思うのだが。

凛華はさっきの紙をロッカーから取り出して中を確認すると、早足でこちらに向かってきた。その顔は青ざめていた。

俺は慌てて、教室から出てきた凛華をを捕まえる。

「え?!星月さん?!どうしてここに?!」

凛華はとても驚いていた。

「どうして?じゃねえよ!最近のお前の様子がおかしいからついてきたんだ。そしたらお前…本気でミサオサマにお願いしてるのか?!」

「べ、別に、星月さんには関係ないじゃないですか!ほっといてください!」

凛華をつかむ手が震える。

「あっ…えっと…!」

凛華は俺の様子に動揺したが、すぐに手を振り解いて行ってしまった。

「関係…ない…。」

凛華に言われた言葉を繰り返す。

俺にとって、この言葉はトラウマだった。

「…藍ちゃん?」

戸のそばで立ち尽くしていると、声をかけられた。

「言音…?なんでここに…?」

「ホームルームの後、すぐどっか行っちゃうんだもん。心配だったからさ。それで…凛華ちゃんと何かあったの?」

近くまできてはいたが、話している内容まではわからなかったようだ。

「…いや、なんでもない。」

「なんでもないわけないでしょ!だってほら、こんなに震えてる!」

言音が俺の手をとる。

「…何か言われたの?」

「…まあな。最近様子がおかしかったから、心配で声をかけたら、『関係ない』って言われたからさ。」

「それで…。」

「まあ、そうだよな。人のことにとやかく言うもんじゃないし。言音、心配かけてごめんな。」

俺は笑顔を作ってみせた。

今までに何度も作ってきた、作り物の笑顔。

言音はしばらく黙ってこちらを見ていた。

「…藍ちゃんがいいならそれでいいよ。でもさ、凛華ちゃんが自分のやりたいことをやるように、藍ちゃんも、自分のやりたいことやっていいんじゃない?」

そう言い残して、言音は行ってしまった。

「俺のやりたいこと…か。」

俺は、少し難しく考えすぎていたのかもしれない。

俺が誰のことをどう思おうと、それは俺の勝手なのだ。自分の好きなように生きればいいのだ。

「…じゃ、やる事は決まってるよな。」


俺は教室に入って、凛華が立っていたあたりにきた。

凛華が使っていたのは、噂通りの、「13番のロッカー」だった。

中は空っぽ。不思議なことに、埃ひとつない。

ここだけじゃ特に何もわからなそうだったため、教室内の他の箇所も調べてみることにした。

気になったところは三つ。

一つ目は、30番のロッカーに書いてある名前だ。掠れていて読めないが、おそらく「赤阪操(あかさかみさお)」だと思う。「ミサオサマ」は、「赤坂操」なのではないだろうか。でも、だとしたらなぜ、30番のロッカーではなく、13番のロッカーが使われているのだろうか。

二つ目はズタズタにされた机。他の机はある程度綺麗なのに、一つだけ、カッターで傷つけられたような跡がたくさんある。そして、この机と、13、30番のロッカーからは、なぜか嫌な感じがする。モヤモヤした、気持ちの悪い感覚だ。

三つ目は、花瓶に生けられた花があることだ。だいぶ新しいようで、誰かが定期的にここにきて、ちゃんと水を変えているようだ。何のための花かは分からなかった。

調べられるところは調べ尽くしたと思う。俺は早足で教室を後にした。この教室はやはり異質な感じがして、どうにも居心地が悪い。

ふと窓に目を向けると、だいぶ日が傾いていた。

部活をしていた生徒たちも、帰る支度をしている。

「…今日は帰るか。」




次の日。凛華は学校を休んだ。体調不良らしいが、おそらく、ミサオサマの影響だろう。

どうやら、思っていたよりも状況は良くないらしい。放課後になり、俺は、赤阪操について調べるために、図書室へ向かった。

卒業アルバムを調べていると、五年前のアルバムに載っていることがわかった。

「三年 四組 三十番  赤阪操」

個人写真の欄には、可愛らしい二つ結いの女の子が写っていたが、集合写真には写っておらず、右上の方に写真が載っていた。

このように写真が載っているということは、撮影の日に何かあって休まざるを得なかったか、それとも…。

パラパラとページをめくっていると、ページの隙間から、何かがヒラヒラと落ちた。

拾い上げると、それは一枚の新聞記事の切り抜きだった。

『女子高生、崖から転落し死亡』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ