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アビオの子供たちと籠の中の鳥 その四






 二人目の子供は館の外にいました。彼はその手に身の丈ほどもある剣を振って稽古をしていました。彼の髪は緋色に伸び、四人の子供の中では最もマストロに近い色でした。彼はテーロデディオの庭に立つ魔法の掛かった楡の木をその剣で打ち付けていました。この魔法の楡の木は、自らに害をなす攻撃ならどんなものでも決して傷つけることは出来ないというものでしたが、緋色の髪の子が打ち付けるとその衝撃は凄まじく、傷はつかないけれどもグラグラと揺れていましたから、上で休もうとした動物たちは一目散に逃げ出しました。彼はマストロら神々が話しかけると手を休め、頭を下げました。

「これはお父様、偉大な神々たちよ、このぼくに何かご用でしょうか?」彼は言いました。

「頭を上げなさい」マストロは言います。「今日はお前に贈り物があってここまで来たのだよ。この鳥のことだ。これを受け取ってもらえるかね?」

「構いませんよ。ですがお願いがあります。出来ればこのぼくと一度、剣を交えてみてはくれませんか?ぼくは一日たりとも休まずにこの腕を磨いてきました。ですから自分がどれほどのものか試してみたくなりました」神の子はその大剣を地面に突き刺して言いました。

「それは無理がある。わしはお前の親でお前に対して剣を上げるなどということは出来はせん」マストロがそう言うと神の子は悔しそうな表情を浮かべました。マストロは続けます。「だが代わりにお前には最もいい相手を紹介してやろう。それは〈雲を駆るもの〉だ。やつならきっと相手になるだろうよ」

「あの〈雷雲の若き狼〉が相手だというのですか?このぼくがあの方と剣を交えようとは、心より感謝いたします、お父様。鳥も受け取りましょう。それで・・・」緋色の髪の子は喜び、お辞儀をした後、籠の鳥を受け取ると言いました。「これをぼくに飼えということでしょうか?」

「これはわしがお前に贈ったものだ。つまりもうお前の物だ。煮るなり焼くなり、どうしたってそれはお前に任せるとしよう」マストロは答えました。

「お前には聞きたいことがある」緋色の子は籠を岩の上に置くと、その前に座り小鳥に向かって話しかけました。「お前はこの籠の中にいれば楽に暮らしていけるとでも思っているのか?この狭い中で、自分の力でどうにかしようと、そう考えたことはないのか?自分の力でここから出てみろ!強くなければいけない!」 

 小鳥は彼の言葉に鼓舞され、籠の扉をその小さなくちばしで持ち上げようとしました。しかし小鳥にとってそれは木の幹を持ち上げるような行為に等しくびくともしません。小鳥は翼も使おうとしましたが、やはり扉はびくともしませんでした。小鳥は次に扉へ頭から体当たりをしました。何度も打ち付けるものですから額が裂け、血が噴き出しました。片目も潰れて見えなくなってしまいました。緋色の神の子は三日三晩、食事もせずに寝もせずに籠の前にじっとしていました。

 小鳥が籠の扉を破ったとき、小鳥はそのまま息絶えてしまいました。小鳥の血や抜けた羽毛が宝石のようにきらきらと煌めいていました。それを見届けた神の子は小鳥を籠から出すと岩の下に小鳥を埋めて、その上に墓標を立ててやりました。

 〈主なる者〉と〈銀色の名工〉は二人して話し合いました。

「どうやら彼は強く逞しい心を持っているようだ。それに勇気もある」スタルは銀色の義手を鳴らしながら言いました。

「そのようだ」マストロは大きくうなずいて、二人目の子供をアギ=スカルラートと名付けました。






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