アビオの子供たちと籠の中の鳥 その二
アビオとオモトが神々の館へ宴会に招かれたとき、アビオは神々にこの事を話しました。大勢の神が円を作っていて、マストロは壇上の玉座に腰掛けています。肘掛けにもたれながら、アビオがこしらえてきた、山葡萄から造った酒と野苺から造った酒、それに百合から造った酒の壺の中にそれぞれ蜂蜜をたっぷりと注いでかき混ぜた密酒を飲んでいました。アビオは密酒を十五の壺に入れ、牛に引かせて献上したのです。そのマストロの隣ではバス=オランドがグラスの酒を飲み、スタルは鉄の義手を鳴らしながら果物を食べています。〈雷雲の若き狼〉は顔を真っ赤に染めて、酒を壺のまま抱えながら飲んでいるのでした。他の神々たちもグラスを手にしながらアビオの話を聞いていました。その円の中心に立ってアビオは話しをしました。少々緊張しましたが、剛胆なアビオはものともせずに話して聞かせました。
女性神たちはオモトと共に舞を踊っていましたが、この話が始まると中には話を聞きに円に加わるものもいました。機織りの神である双子もそうでした。
「アビオよ、その話しは真実か?お前には四人の子供がいると」マストロが言います。
「ええ、本当ですよ。あなた様には決して嘘はつきません」アビオは頭を下げて答えました。「次に来るときにはぜひ子供たちも招いてください。きっと連れてきます」
「そのお前の知恵は実に見事な話しではないか」
アビオはうなずきました。それから神に感謝を述べました。
「わしにも四人の子供たちがいる。三人は男、一人は女の子だ」マストロは言いました。
「だが誰も見分けが付かんぞ」バス=オランドが挟みました。「そっくりだからな」
「その通りだ、誰もな!」円の中から誰かが叫びます。
ざわついて口々に話しているどの神よりも大きな声で偉大なる日の王は言いました。「そうなのだ、アビオよ。四人ともに実によく似ている。わしは四人が全く同じなのではないかと思うことさえあるのだ」
アビオは少し考えましたが、次いでこう言いました。「ご主人様、お言葉ではありますが四人が同じなどと言うことは決してありません。似ているのは外見だけなのでございます。中身は全く違う、個性の固まりなのです。この密酒と同じなのです。壺は全くの同じもの、しかしながら中身は全くの違うもの。このままにしておれば匂いや色といったところまで、この壺も姿を変えていくでしょう」
「お前は人間のくせに我々に意見するのか!」また円の中から声がしました。今度のは怒号に近いものです。女神たちは舞を止めて静まりかえりました。アビオは恐ろしくなって震え上がりましたが、間違ってはいないとマストロの意見を待ちました。何しろ人間が神に対して意見したのです。勇敢なアビオであってもさすがに平然とはいきませんでした。
しばらくの沈黙のあとで最初に口を切ったのはマストロでした。日の王は素早い判断を下しました。他の神々がアビオに手を出す前にアビオの顔を上げさせ、話し始めたのです。
「確かにお前の言っていることは間違いではない。わしにしても皆にしても同じ事だ。同じものなど一つとしておらんではないか。お前たち」マストロはそう言って双子の神を指します。「お前たちとて一人は酒が飲めず、一人は舞が踊れない、そうであったな?」
「はい、そうですわ」双子の女神は声を揃えて言いました。
アビオはほっとしてもう一度マストロに頭を下げました。マストロもアビオの意見が正しいと思ったのです。万物の父の意見です。反対したり、アビオを疎ましく思うものはなくなりました。円の外ではまた舞が始まります。女神たちの美しい笑い声が広間に響き渡ります。
「それではいい案はないものか?わしの四人の子供たちを見分けるよい方法が」そう言うとマストロは長く赤い髭を先の方までゆっくりとさするのでした。
「名前を早々に付けてはどうか?名を呼べば必ず振り返る」
「それでは呼ぶまで分からないぞ」
「どうしようもないなら分ける必要もないだろう」リューポは酔ってふらつきながらも意見をします。
「それでは議論をしている意味がないじゃあないか」スタルは遮りました。リューポは眉を曲げ椅子の方へと戻っていきました。
そんな皆が声を上げる中、立ち上がったアビオが大声で呼びかけました。「こうしてはいかがでしょう。四人の神の子たちに籠に入った一羽の小鳥を渡すのです。それに対して四人の神の子たちはどういった反応を持って小鳥に接するのか、それで皆の性格がはっきりと分かるでしょう」
「なるほど、中々面白いではないか」マストロは満足そうに言いました。「それできっとわしの子たちはその表情を見せてくれるに違いない」