表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/35

アビオの子供たちと籠の中の鳥 その一






 偉大な神と強大な王たちによる聖戦の後、大地母神セレナがオスの大地に降りたって美しき世界が目を見開いたとき、彼女と夫のマストロはルピナスの花からつがいの人間を生み出しました。

 彼らの名前はアビオとオモトといいます。彼らは世界が誕生して以来、東の園テーロデオリエントに住み仲むつまじく暮らしていました。夫は頭がよく、狩りや釣りの腕も確かでした。妻は大変優しく器量もよい美しい妻で、二人共に神々には大変気に入られていました。ですからアビオが狩りに出かけるならば東の守り神フィラントロピオはアビオの上空に鳩を飛ばし見守っていましたし、彼が釣りに出かけ高波に襲われそうになったときには〈水の主人〉バス=オランドは本を読むのを止め、高波を凍らせてしまうのでした。

 彼らには四人の子供たちがいましたが本当によく似ていて、親である二人にしても度々間違えてしまうほどでした。名前を長男から順々にルーヂャ、フラヴァ、プルプロ、ブルアといいます。彼らはそれぞれ首から赤色、黄色、紫色、青色をした水晶の首飾りを下げています。これによってアビオとオモトは彼らを見分けていました。

 一度こんなことがありました。四番目のブルアの青い首飾りに太陽の光を透すと昼間であっても地面に紺色の、まるで夜の灯りのような影を落とします。それを大変に綺麗に思い欲しくなった二番目のフラヴァはブルアに自分のものと交換するように言ったのです。彼は自分の黄色の首飾りに太陽を透かしても、同じ黄色い影が落ちるばかりでつまらなく思ったのでした。ブルアはいつもオモトの手伝いをしている優しい子供でしたから、フラヴァの頼みにも快く了解しました。ですがこうも付け加えたのでした。

「父さんの前では首飾りをちゃんと元に戻しましょう。父さんは騙されることが嫌いな人です。父さんは私たちを首飾りで見分けています。それを交換しているとばれたら兄さんとて私とてただでは済みませんよ」

 と。しかしフラヴァは逆にそれが大変面白そうだと思ったのでした。ですからブルアの頼みも聞かず、夕食の席ではブルアになりすまして彼の椅子へと堂々と座ったのでした。ブルアは中々席に着こうとしませんでしたが、フラヴァが睨みつけるものですから渋々と兄の席へ座ったのでした。

 しかし夕食の途中フラヴァの席に座ったブルアが突然に泣き出してしまったものですからアビオもオモトも驚いてしまいました。長男のルーヂャは何事かと慌てて納屋に狩りで使う弓を取りに行ってしまいました。プルプアはじっとして動きません。

「ごめんなさい、父さん。私はフラヴァではありません。本当は四番目のブルアなのです。首飾りを兄さんと交換しているからです」ブルアは声を高くして言いました。「騙してごめんなさい」

 アビオはブルアの席に着いたフラヴァに目をやりましたが、恐ろしくなったフラヴァは肉食獣に睨まれた小動物のような目で首を振りました。しかしながらブルアがあまりにも泣くものですから、それがフラヴァの嘘だと言うことはすぐに分かりました。 

 怒ったアビオはフラヴァの尻を火掻き棒で十三度打ち付けました。フラヴァの眼からは火花が飛び叫び声を上げて泣き出しました。正直に事を話したブルアの尻にも三度だけ火掻き棒を打ち付けたのでした。それからは兄弟が水晶の首飾りを交換するようなことは一度もなかったのです。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ