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小さな獣耳たちのいる職場

作者: osagi



―――コピー機―――


 はじめにその存在に気付いた、というよりその存在が出てきたのはコピー機を使おうとしている時だった。書類をセットしてコピーボタンを押しても印刷が開始されず、給紙トレーが開いたかと思うとそこから身長10cmぐらいの猫耳の獣人が顔を出したのだ。


 「紙がないのニャー」


 それだけ言うと給紙トレーが閉じ、俺は慌てて給紙トレーを開けるが紙もなければ先ほどのネコ耳もいない。まるで手のひらに乗りそうなぐらい小さなそれはいったいどこにいったのだろう。


 「どうかしたか?」

 「いいや、なんでも」


 同僚に声を掛けられるが、とても言える雰囲気ではない。その後俺は紙を補充して印刷するのだった。






―――電気ポット―――


 昼食時間になり、同僚たちは近所の店やコンビニに出掛けて部屋にはいま俺一人だ。そこで再びコピー機の給紙トレーを開いて先ほど見た小さなネコ耳を探して見るが・・・見当たらない。


 俺の頭がおかしくでもなっているのだろうか、とりあえずお茶を飲んで落ち着くことにして電気ポットのお湯で茶を入れる。そして今のうちにポットの水を補充するために片手鍋で水を入れるとポットのお湯と混ざり合ってぬるくなったお湯が再沸騰されるが・・・。


 ふと、どこからかそう聞こえたような気がした。だが、周りには誰もいない。


 さらに耳を澄ませてみると、どうやらポットの底の方から聞こえてくるようで、俺はポットのコードの付け根を外してみる。


 見ればコードの付け根がある場所は窓のように穴が開いていて、そこから見ればポットの底には空間があり、そこで焚火が行なわれいるのが見える。あれでポットを沸騰させようというのだろうか。


 「ちょっと!そこを外したら薪が来ないじゃない!」


 そう声が聞こえたかと思うと、小さな窓からまた小さな獣人がはい出てきた。今度はウサ耳である。


 「もう!」


 ウサ耳はそう言うと俺の手からコードの付け根を奪い取り、中に入りつつその窓をコードの付け根でふさぐのだった。






―――パソコン―――


 昼食時間は終わったが、あれから気になって仕事が手に着かない。コピー機、電気ポット。あの二つにいるということは他にもどこかいるのだろうか?


 とりあえず目の前にあるパソコンのモニターの裏を見て見るが何の変哲もない。だが、そんなことに気を取られていると・・・。


 コツコツコツコツ


 事務机の上を歩いてくるイヌ耳の小さな獣人が歩いてきた。何やらカバンを肩にかけている。というより、やはりこの獣人たちの存在は俺にしか見えていないようである。


 それからイヌ耳は俺のパソコンのサーバーまでやってきて、カバンを開けるとそこから封筒を取り出してサーバーの空気穴にまるでポストのように手紙を入れていく。


 俺はまさかと思ってメールボックスを確認すると今まさにメールが入ってくるのだった。


 そして、イヌ耳はまた同じ道をたどって去っていく。一体何がどうなっているのだろうか。






 その後、今日はそれ以上彼女たちのような小さな存在を見ることはなかった。だが、翌日になってからも一度もその姿を見ることはできない。そしてそれからも会えることもなく一週間、一か月と時が経ち、それから二度とあの小さな獣耳たちを見ることはできなかったのである。




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