7話 出会う前 後半
「暇だなあ」
学校の休み時間。
たまたま周りに誰もおらず、委員会の仕事をしていたら、いつの間にか一人だったからすることがなかった。
目の前には紙と筆記用具。
休み時間の残りも中途半端だが、少しの時間があったので、なんとなく自分の妄想を実現してみた。
5分足らずで適当に描いたのはいつしか私が思い描いたかっこいい男の子だ。
「ひどい絵」
自分の描いた絵をまじまじと眺めた。
目はでかすぎるし鼻はないし輪郭はぐちゃぐちゃで口はへの字になっている。
友達に見せたら笑われちゃうな。
何この絵?人間なの?
こんなの誰だって描けるよって言ってさ。
「…そうだ!」
最近、学校の授業で習ったパソコン。
パソコンにはインターネットというものがあって、様々なことができるらしい。
その様々なことに、『投稿』というものができると勉強した。
自分の作ったいろんなものをインターネットに投稿することで、いろんな人が見られるようになる。
職員室に先生に聞いてみたら、絵だって投稿できるらしい。
私が描いたこのひどい絵を投稿したら、笑い話の1つになる。
それにパソコンができる人ってなんかできる人ってイメージがあってかっこいい!
『大人』って感じだ。
私は帰宅した後、自宅のパソコンで、先ほど学校で描いた絵を投稿しようとした。
しかし一つの問題が発生した。
「…?」
どうやってパソコンの中にこの紙を入れるんだ?
目の前のパソコンで、不慣れなキーボードを操作して色々と調べた結果、紙に描いたものをパソコンに入れるには専用の機械が必要なようだ。しかもその機械は、私のおこずかいでは到底買えそうにない。
「やめよっかなあ」
次第に面倒になってきた。
思いつきの行動だ。躍起になってすることじゃない。
パソコンの電源を切ろうとカチカチとマウスを動かしていると
「わっ!」
間違えて変なのを押してしまい、パソコンの画面に変なものが出てきた。
「ぺいんと?」
マウスを動かしてみる。パソコンの画面に映った白紙のペイントに線が描かれた。
わ、線がひけた。
ということは…
「絵もできる」
私はちゃちゃっと適当にマウスで絵を描いた。
せっかくなので知ってるキャラクターを描いた。
某国民的な忍者の卵の男の子の3人組のキャラクター。
手を取り合って仲良くしている絵だ。
「やっぱりひどいや」
マウスで描いたので鉛筆で描くよりぐちゃぐちゃになって、よりひどい出来になった。
色も黒一色だ。他の色が使えることは描いた後に知ったが、面倒なので書き直さなかった。
保存の方法は学校の先生に聞いたからわかる。
保存して…えっと…そのあとは、投稿?
インターネットをひらいて
「え、と、とはどこだ…あった。と、う、こ、う」
とキーボードを打ち込んで検索して、一番上に出たもサイトをクリックする。
画面が変わったので、投稿の文字を探して、ファイルを移動して……
「できた」
やっとこさ投稿することができた。
なぜかすぐにコメントがついた。
『に〇たま?3人組のキャラクターへたくそかわいいですね』
信じられなかった。
てっきり、インターネットの中でも笑われるか無視されて終わりだろうと思っていた。
…この落書きで何のキャラクターなのか伝わった?いいや、伝わった!
私のなんでもない思いが、決して共有されることない私の頭の中の何かが!私の描いた作品が相手に伝わったんだ!
私は感動して部屋の中を走り回って、ドタバタするなと親に怒られた。
その日は眠れなかった。ベッドの中でずっとこの出来事を思い出しては感動を味わっていた。
後から知ったことだが、私の落書きは、筋違いの掲示板に投稿してしまっていたらしい。
そのせいか、荒らしかと思われて反応がすぐにあったのだ。
これは皮肉の書き込みだと当時のおめでたい頭をした純粋な私は気が付かなかった。
そこから私は新しい遊びを見つけたかのようにインターネットでお絵描きをした。
のめり込んで絵を描いては、決して周りにはバレないようにこそこそと活動した。
バレたら、気持ち悪いと言われるかもしれない。そんな不安があったから隠れて絵を描いた。
友達と遊ぶ時間は減ったが、こちらのほうが充実していた。
絵を描いて反応がないときなんていくらでもあったけど、それは私の絵がへたくそだからだ。
がむしゃらに絵を練習し始めた。
オリジナルキャラクターはウケが悪かったので、二次創作から始めた。
コメントが欲しかったので受け手に好かれるように努力をして日常を過ごした。
小学生も終わりにさしかかったある日、とあるジャンルを見つけた。
「BL?」
私の青春もとい性春が始まった。