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最終話 結婚6年後 小夏

「ママぁー」


とてとてと女の子がパソコンで絵を描いている私に近寄ってくる。


「ママお絵描きしよ、一緒にお絵描き」


「うーんそうだねぇー」


「いま、ママはお仕事してるからダメだよ。小夏こなつ


「えぇーママパソコンでお絵描きして遊んでるよー」


「お仕事なの」


そう言って彼くん、おさむさんは小夏を抱っこする。


「ほら高いぞーパパとあっちで遊ぼうか」


「えへへーうん!」


私の5歳の娘は、旦那にとても似ていて、美形だ。


「ぱぱかっこいいねーえへへへ」


娘の笑った顔はおさむさんに似ている。

その顔をまじまじと見る私。


よかったー私の遺伝子に似なくて!本当によかった!

人と会えば、いつも


『お父さんの娘さんですか?』


とすれ違う人たちに毎回言われるくらいに似てる。


私にはまったく似ていない。

我が子が美形に生まれてよかったと心から思う。



小夏と似ているところがあるとするなら…そうだな、お絵描きが好きなことくらいだろうか。

まぁこの子も今は小さいからお絵描きで遊ぶのであって、大きくなったら別の遊びをするだろう。



「小田さん」


う、この呼び方は…。


「小田さんの部屋に、またアレの本が落ちてるんだけど」


「…はい」


彼くんがこの昔の呼び方をする時は、何かの例のアレ関係、BL関係やら大人のモノやらで私がやらかしたときだ。


「〇〇が興味持っちゃったらまだまずい。小さい子って言いふらしやすいから…」


確かに、5歳児がアニメとかに興味持つならまだしも、いきなりBLはまずい。

ましてや性的なコンテンツなのでかなりまずい。

とんだ英才教育になってしまう。


…へたしたら、小夏への虐待だと思われてしまうか…!?


「急いで片付けます」


「よろしい」


理さんはにこっと笑う。彼氏だった時と変わらない笑顔だ。

最近は子育てを経て父親として成長した彼くんは、怒って叱りながらも優しく笑う特技を身につけていた。


危機感を覚えた私は席を立って片付けに自室へと向かう。



あれから私は、結婚をした。

その後、何年かしたら仕事をやめた。

彼くんとの間に子どもができたからだ。


出産して、子育ても落ち着いたころ…いや、その時も絵はかかさず描いていた。


在宅でもできる絵の仕事をもらったので、表では細々と少ない仕事量で働いている。

…旦那が稼いできてくれるけども、ただ落ち着かなくて働いている。


ちなみに裏では絶賛活動中。

時間はかかってはいるがまた作品を出すつもりだ。



彼氏から旦那へワンランクアップした彼くんは、いつ見ても推しで、いつまでも私の好きな人。

あの時から変わらないオタクである私に理解がある彼くんのまま。



「…それにしても、あの本どこやったっけ?」



過去の産物であるBL本を探しているが、見つからない。

久しぶりに自分の作品を読んで悦に入るところまでは覚えていたのだけど…。



「パパぁー!」


遠くで小夏の元気な声がする。


「どうしたんだい?」


「これ読んでこれ。綺麗な絵だよ。〇〇は読めないんだけどね…えっとね、読むね」


私の部屋に置いてあったはずなのになくなっていたBL本。



「…嫌な予感がする」



危険を察知した私は自室から飛び出した。


「あぁ…!」


時、既におそし――。

あの本のタイトルに丁寧にフリガナをふった過去の自分を殴りたい気分と、後悔が押し寄せる。


私の魂であるBL本を持っていた私の娘は



「どきっ、小学生男子しょうがくせいだんしの、ぼくが電車でんしゃでおじさん〇にかこまれてぇ…」



とてもお上手に私のBL本を読み上げた。


ぴしっと空気が凍った。


「小田さん?」


あ、あれは…。

散々、僕は言ったよね、注意したよねと言わんばかりの顔だ。


「す、すいませんでした…」


「これはまた…あの刑だね」


私の旦那である彼くんは怒りながらも、にっこりとした表情で私を見たのだった。



終わり

あとがきは明日の夜に投稿します。

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