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46話 理解のある彼くんとオタクな私は未来へ進む
「ふふ」
彼くんが静かに笑う。
私の涙がおさまって、浜風が吹いた。
「プロポーズみたいだったよ小田さん」
「そっちこそ」
お互いに顔を見合わせる。双方、照れているのがわかる。
心で通じ合っている気分だ。
「じゃあ、帰ろうか」
「もう1回」
強く風が吹いた。
「ごめん、風で聞こえなかった」
「…もう1回、したい」
「…いいよ」
私たちは確認して確かめるかのように、接触した。
人の目も気にせずに繰り返した。
心から好きなものをさらして、さらけ出して―――気持ち悪いと言われても私はもう、彼をはなさない。
理解のある彼くんが、好きだ。
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彼女は今までにない力強さで僕を抱きしめる。
打ち明けてくれた彼女は、人一倍魅力的に見えて、愛らしい。
「…もう1回、したい」
「…いいよ」
今度こそ、今度こそゆっくりでいいから、彼女と彼女の好きなことに向き合ってわかっていこう。
そのために、努力しなくては。
おそらくアレコレと不勉強な僕は時間がかかるだろう。
そして時間が経って、理解したら、理解ができたのなら。
僕は―――彼女と共に未来へと進んでいこう。