4話 同棲八日目 前半
この間はばれたのが比較的マシな成人男性BL本でよかった。
でも、私にはまだ、BL本だけでショタBLおじBL人様に見せられないかつての推しカプBLなど多数の同人誌の秘密を抱えている。
ペンネームはいくつか裏のやつをもっていて、まだ1つしかばれていないのが救いか。
やはり、彼くんに打ち明けるべきなのか?
「どう思う?」
「やめとけやめとけ。男ってやつは付き合いが悪いんだ」
仕事中の同僚に話しかける。
いまは二人並んで、新しく発売予定のゲームの文字に誤字脱字がないか最終チェックをしているところだ。
「こら、手を動かせー」
「私たち、手は動かさなくても目は動かして仕事してますぅー」
「はぁーあ」
私は大きなため息をつく。
「もう夜の9時だよ」
「9時じゃなくて、一人寂しく苦自慰ってか」
ギャハハハと笑う同僚。
はは、くだらねー。疲れた顔で半笑いをした。
彼女は年齢=彼氏いない歴の女だ。理由は説明しなくてもわかるだろう。
まぁ私もその同僚と同類なわけだけど…。
下ネタだけは誰が相手でも言葉にして言わないようにしている。
「てゆーかその彼くん?私にちょうだいよぉー」
「いやです」
「BL本見せられて別れなかったんでしょ?そりゃぁ最高じゃん」
「そうだけどさぁ…なんというか」
「あぁあんた隠してる本、ジャンルいっぱいあるもんね。ショタ痴〇おじさんモノとか」
「あー出したわそんなん。覚えてないけど」
「彼くん、そんな本見たら、気絶しそうだよねー」
犯罪者予備軍だと思われるのは間違いないな。
「まあ、絶対ばれないようにしてあるから」
さぁお喋りはこれくらいにして…残業、ラストスパートしますか。
私は伸びをしてパソコンに向かい合った。
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「ドキッ!小学生男子のぼくが電車でおじさん痴〇に囲まれて……?」
自室の部屋を掃除していたら、大きなA4サイズの封筒が落ちてきたので、拾って中身をみたらこんな本が入っていた。
「おそらく小田さんのモノで、成人ものだろうな…」
これもBLってやつなのか?
ペンネームは違うが、絵柄は小田さんの絵に似ているところもあれば似ていないところもある…。
「どうするべきか」
中身を見るべきか、見なかったことにするか、小田さんに報告するか、最終手段として捨てるべきか…。
僕はこの本の所在について、大学受験で進路を選ぶときと同じくらい悩んだのだった。