3話 同棲四日目 彼
「うん、わからない」
何度読み込んでもこのBL本の魅力がわからない…。
生の男の体ならともかく、創作物の男の裸だけ見て何が嬉しいんだ?
男が男と恋愛している様子が尊い?
男女問わず人が恋愛する過程が尊いのはわかるけど…その過程もなく、いきなり裸で抱き合ってるシーンを見せられても登場人物への共感も何もない。
「…ほかのBL本とやらも読んでみるか?」
他の作品を読んでみたら理解できるかもしれない。僕は慣れない電子媒体を操作してなんとか1時間後に人気の成人向けBL本をダウンロードした。
「うわ、また男の裸から始まってる…」
めくれば濡れ場、濡れ場、濡れ場のページ。
もしかして成人向けの本って男や女関係なく、こういうモノなのか?
買ったことがないからわからない…。
そして読んでいたら気持ち悪くなってきた。
「なんで気持ち悪いんだろう…」
あ、そうか。ピンときた。
この抱き合ってる男の片方が、妙に女のように細い体つきで女の色っぽさが表現されているから、女性のような反応なのに男性だから、矛盾を感じて気持ち悪くなるのか。
つまり、この『受け』とほかのレビュアーに言われている人物を女性だと思い込み読んでいくと…
「さっきよりは嫌悪感は減った…かな」
なるべくじっくりは見ないようにして、細目で読んでいく。
しかし、きついものがあるな…。
このきつさはボーイズラブとかじゃなくて、単純に人の性事情を垣間見ているからだろう。
「他人の性行為なんて知りたくもないし…」
これ以上読むのはやめた。疲れたからだ。
まぁ、なんというか…性癖の世界は広いなと思った。
しかし、その性癖に付き合っていくのは大変だろうに…。
ましてや自分の性癖を表現して本にし他人に見せるって並みの人間じゃできないことだぞ…。
これを書き上げた小田さんってすごいんだな…。
僕はソファーの上に寝転がった。
BL…BLか。ボーイズラブか。
BLという単語は、本屋での漫画コーナーでも見たことはあるから、まだ…知っていた。うん。
…あ!?
ボーッとしていると僕は一つのことに気が付いた。
彼女、小田さんはこのBL本の作者だ。
BL本は同性愛…。同性愛が表現されている作品だ。
つまり小田さんは、同性愛者なのでは!?
「…」
ちょっと不安になってきた。
もし、仮に彼女が同性愛者だとしたら、僕と結婚するつもりがないのでは?
しかし、結婚するつもりのない異性と同棲なんてするか?
矛盾じゃないか。
…彼女のことを知るつもりでBLに触れたのに、余計によくわからなくなってしまった。
直接、聞いてみるしかないのだろうか?