1話 同棲一週間目
不定期更新です
タイトル 1話 同棲一週間目
「あー今日も疲れたなーっと」
追い込み作業の夜9時までの連日残業は疲れる。
「おかえり、ご飯あるよ。お風呂も用意しといた」
「あ゛ーお風呂で」
家に帰るとお風呂もご飯も用意してくれる彼くん。
「最高かよごぼぼぼぼぼ」
私たちは同棲を始めて一週間目。今のところうまくやれているはず。
「お風呂出たよ」
「僕はいるね。夜ご飯出しておいたから食べてね。あとで話があるから起きておいてね」
「あ゛ーい」
まずは酒!一気に飲み干す。
「あ゛あ゛ー!」
のど越しはうまい。
机に並べられた料理。白米とみそ汁と少し時間が経ったがまだ温かい肉じゃが。
そして彼くんが座る席には一冊の本。
肉じゃがを食べる。
「うまーい」
ん!??!?!
あそこに置いてあるのは、私が作った同人誌のBL漫画15ページのやつ!?
「なななんああああああ!なんでアレが!?」
今まで秘密にしてあったはずなのに!!
嫌な汗が出てきた。
料理がのどを通らない。
「出たよー」
風呂上がりの彼くんがやってきた。
「あれ?おいしくなかった?」
食べかけの料理を見て彼くんは言った。
「あのー…話ってもしかしてこれ…すか?」
「うん、それ」
彼くんは私の前の席に座った。
「んー…話したい事があって…」
この彼くんの重々しい話の切り出し方。
ああ、別れ話だな。瞬時に悟った。
彼くんといられて幸せだったな…。やっぱりオタクは結婚できないんだ。
さらば幸せな私…。
「この本って、小田さんの?」
「…はい」
「そのー…かいてるのって女の子が恋人同士の本というのは…」
「あ、それも本当です。ずっと前に見せたやつです…」
「ふーん…」
彼くんは目の前のBL本のページをパラパラめくっている。
ああ、親フラしたときよりつらい。
私から切り出そう。地獄は勘弁だ。
「そうだよね、彼くん…嫌だよね、別れよう」
「え!?」
彼くんは驚いている。あれれ?
「別れ話じゃ…ないの?」
「違う違う!なんで?」
「だってこんな本作ってる女、気持ち悪いでしょ」
「うーん…」
「彼くん読んでていい気持ちしなかったでしょ」
「うーん…まぁ…」
そうだよね、男の人はこんなの見せられたら幻滅するよね。
「僕はこういう創作物には疎いからよくわからないけど、これ作るの大変だったんだよね?」
「あ…はい…大変でした」
私はいつの間に椅子の上で正座をしていた。
「だからそのー…よくわからないけど、小田さんは努力したんだなって。自分の表現したいことがあって、それをやってのけた。すごいことだと思うな」
「う…」
「だから別れるとかじゃなくて…そんな悲しそうな顔をしないでよ」
「うううええええーん」
大の大人の私はわんわん泣いた。
私の中でたまっていた仕事疲れと何かが噴出していく。
「ちょ、ちょっと!ティッシュティッシュ!」
「うぇええええ」
「ほら鼻水チーンして」
「チーン」
それから寝てしまってよく覚えてない。
ただこの人と出会えたことは幸せだと痛感したことだけは覚えていた。
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翌朝
「先に出るね」
「はーい」
いつも通り彼くんは私より先に出社していった。