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魔王ディザスター、魔王を廃業する

はじめまして。

つたない文章ですが、よろしくお願いします。

光と闇の力を天族と魔族のパワーバランスで補っている魔法が実在する世界。

 魔法異世界『グランド・ウィザード』

 

 魔法が存在する世界でもっとも恐れられる存在……。

 魔族=魔物の王様―――魔王ディザスター。

 それが転生する前の私である。


「ついに見つけたぞ、魔王!」

「覚悟しろ、魔王!」


 聖剣エクスカリバーを掲げ、私に突進してくる勇者一行。


「我が名は、勇者エミリオン!おまえを倒すためにやってきた」

「あ~~~、はいはい。そうだよな。勇者だしな」

「え?」

「芸のないやつらめ……いい加減、辟易するぞ!なぜ、勇者はテンプレな行動しかしない馬鹿ばかりなんだ」


 勇ましく名乗る勇者どもを尻目に、私はブツブツと呟き続ける。

 魔王幹部だと自称する高位の魔物を倒せば、勇者とその一行の経験値レベルが底上げされる。それが、私にたどり着くまでの最強の試練といえよう。何人も挑戦しては、脱落してしまう人も少なくない。


『よく、ここまでたどり着いた』とか

『貴様らのようなやつらは、私が根絶やしにしてやる』とか、

『滅びよ、人間どもっ!』とか、


 かつては、私も助演男優賞バリの演技力で、ノリノリのセリフを吐いたものだ。

 だが、最近の勇者と名乗る転生者は、なぜか、効率よくダンジョンを攻略し、最短でやってくる者が少なくない。そして、それなりに楽しい第二の人生を全うしていく。

「これが、ゲーム脳というヤツなのか、ロープレの最後の砦とか言いながら、私が長き眠りについたところで、闇の魔導士とか、闇落ちした誰かが、すぐに起こしやがって。荒廃させる世の中にしてるのは、お前たちだろ。そもそも、私を倒したところで、卑しくも身勝手な人間共の問題が解決するはずないのだ」

 ぶつぶつ、と今わの際に置かれた状況に、魔王である私は、勇者一行に大人げなく叫んでしまった。


「そんなに大手は偉いのか!!復活の呪文ってなんだ!! 死んでもやりなおせるって、そのシステム、バカだろ!タイトル出す度にさぁ、毎度毎度毎度…… チート勇者に倒されるためだけに蘇り、地上でちょっとだけ悪さする魔王など、ただの道化ではないか!!」

 私の怒りは頂点に達し、難攻不落と呼ばれた頑丈に出来た魔王城の壁が揺れる。

「私だって好きで魔王に生まれたわけではなああああい!!」

 心の底から、そう叫んだ瞬間。魔王城が一部崩れてしまったが、気にしない。


「な、なんて攻撃だ」

「さすがは魔王っ!」

「油断するな」


 と、勇者一行は構え、寸分違わずお決まりのセリフを吐露し、

「俺たちはお前を倒す! そして、平和な日常を手に入れるんだ!」

 と、面白みに欠けるセリフを吐いた。


 平和な日常だと? そこにいる、白魔法使いとかいう上等なメスを嫁にするためであろうが。私のことを完全なる噛ませ犬としか思ってないくせに。面倒くさいの極みである。


「あー、わかった、わかった。滅びてやる……」

「は?」

「ほら、ここだ、ここが、私の核だ。ここに聖剣を突き刺せば長き眠りについてやる。それで、魔物の活性化は防げるだろう。世界全体を覆う瘴気も薄れ、お前たちは平和を取り戻せるだろうよ」

「え? そんなにあっさり? なんか、もっと……こう、戦いが大変だったイメージだけど……」

「ボス戦があっという間に終わるのはよくある話だ」

「それもそうか……じゃ、じゃあ! 姫様を嫁にするために! 魔王、死ねえええええ! エクスカリバー!!」


 その剣は私の核に突き刺さった。その瞬間だけ、もっともらしい演技を開始する。


「ぐ、ぐぅ……ぐぅ、わぁあああああ~~~」


 私が倒れて、その瘴気をすべて放出すると、聖剣に秘められたクリスタルの光に包まれる。

 聖剣に核を砕かれた魔王の意識は、だんだんと混濁し、深い眠気にみまわれる。これが、現実世界でいうところの『昇天』という、死の瞬間を迎えるのだが、この瞬間は悪くない感覚である。

 魔王の依り代は現実世界から消え、魔王の魂は精神体となり、神聖世界へといざなわれる。こういうとき、魔王も昇天するんだなって最初に思ったのが懐かしい。そもそも魔王なんて、依り代を持った精神生命体なのだから、物理攻撃は無効なのだ。魂の居所が、現実世界から精神世界に移るだけの話。人間のような筋肉や神経が存在しないからである。痛覚もなければ、五感もない。人間を依り代にすれば、そういう感覚を受けることもあるが、光の剣で刺されたとて、ビリビリする程度だ。現実世界にとどめられていた魂が精神世界へ還り、しばらくの間は、現実世界ではない霊魂のみが存在する場所で休暇を楽しむだけだ。神は魔王の魂にも慈悲深いのだ。魂もろとも滅ぼそうとはしないから。

 愛と勇気と奇跡の力で魔王が滅んだ。というのは、人間たちが限りある寿命の中で語り継いでいる伝書に過ぎないのだ。神にとって『唯一無二の悪しき魂』は信仰を得るために利用価値のあるステマであるからだ。魔王を生み出し、魔王の魂を管理しているのも、また、神だということに愚かな人間たちは気付かない。


次回は、幼稚園で活躍する

魔王様(魔緒)を描きます。

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