プロローグ
――ここはどこだ。
苔の生えた石造りの神殿。その入り口に俺は倒れていた。
覚えているのは、誰かと……この場所に来たこと。
記憶が飛んでる……。
――痛い。
頭を触ると、一瞬だけ焼けるような痛さが頭を走り回った。
出血していた。頭を振れた手には、さらさらとした鮮やかな赤い色をした血が付着していた。
頭だけではない。体のあちこちに血がべったりと付いている。
しかし、それらは獣臭さがあり、俺の物ではない。
傷を負っているのは頭だけだった。
一体俺は……何をしていたんだ?
「…………考えていても分からない物は分からないな」
俺は独り言をつぶやき、一旦街に戻ることにした。
街に着くと、宿に戻る前に一度組合へ顔を出しておくことにした。
神殿にいたってことは何か依頼を受けていたってことだ。
確認しておかないと……まあ、薬草集めなんだろうけど。
神殿の周りは、植物が育ちやすい環境だからよく行くんだ。
俺以外は誰も行かないから穴場だしな。
そんなことを思いながら、俺は組合へ入る扉を開けた。
依頼を受けること以外にも、食事ができるようになっているため、組合の中はいつも賑やかだ。
でも、今日は賑やかというより騒がしく感じる。
「だから! これは俺達からの正式な依頼だ! 金なら出す!」
依頼の受付あたりから大きな声が聞こえる。
どうやら急を要する依頼の様だ。
依頼者は……この街の冒険者だな。
依頼をこなす冒険者は基本的に依頼を出すことがない。
出すときと言えば、自分たちの力では敵わない魔物を前に逃げてきた時くらいか。
全員で逃げ切ることが出来れば、報告だけで基本的に済ますのだが……今回は誰かを犠牲に逃げてきたというところか。
この街では、珍しいな。
助けてあげたいが、俺の力じゃどうしようもない。
なんたって、最低ランクの冒険者だから。
それよりも、空いている受付に俺が受注したであろう薬草採取を確認しに行こう。
……なんという事だろう。不運にも空いている受付は先ほどの冒険者たちの隣だけだった。
非常に座りたくない……座りたくないが! 仕方ない。
まあ……確認だけだしな。
「お疲れ様です。依頼内容の確認をしたいのですが」
「はい、かしこまりました。組合証をお預かりしますね」
受付をしているお姉さんは、組合証を受け取る。
すると、突然叫びながら立ち上がった。
「ア、アドラーさん!?」
「ん? そうだけど。どうしたの?」
受付のお姉さんは口に手を当てて慌てている。
俺、何かしたかな……。
とにかくまずは状況の把握だ。何故、受付のお姉さんは俺を見て驚いたんだ?
別に幽霊って訳じゃ――
「おい」
依頼を出そうとしていた冒険者たちの中でも筋肉質な体をした男が、突然俺の肩を掴んできた。
何故俺が絡まれているのだろうか?
彼らに何かした覚えはないんだが?
「おい! こっちを向け!」
この後、俺……絡まれるのか。ボコボコにされるんだろうな……。
俺は緊張でたまっていた息を吐きだし、ゆっくりと立ち上がって後ろを振り向いた。
……今日はおかしな日だ。
組合証を見せては驚かれ、顔を見られては驚かれる。
加えて、依頼を出そうとしていたパーティの冒険者たち全員が、「なんで生きてるんだあああああああ!?」だって?
俺が死んだと思っていたらしい――では片づけられねえよ!?
一体……何だってんだああああああああ!?
読んでくれてありがとう!
Vtuberのグレン・アドラーです!
ゲームの配信とかしていくので、youtubeの方も見てくれよな!