stage4: 誘拐と灰色の瞳
ガタガタガタ…――
「っ――!?」
深夜0時。
突然ドアが音を立て始めた。
その音で目を覚ました由美は、恐怖で声が出せずにいた。
ガチャ…――
ドアが開く。
ゆっくりと音を立てずに半分まで開くと、そこからスルリと黒い塊が入って来た。
キシ…キシ…
そして、ゆっくりと床が軋む音と共にそれは近付いてくる。
"殺される!!助けて…お父さん!!"
心ではそう叫んでいるのだが、恐怖が上回り、声が出ない。
「立花…由美様ですね?」
私がガタガタと震えていると、目の前まで来た黒い影が私の顔を覗き込みながら言った。
遠くからは暗くて見えなかったが、近くで見るとただの人のようだ。
声色からして男だろう。私は、震えながらも大きく縦に首を振った。
「そうですか。では、行きましょう。」
「んー!?」
すると、男はそう言って私の口に布のような物を押し当てた。
そして、私は意識を手放した。
「…あれ?」
目を覚ますと、私はベットの上に寝かされていた。
辺りを見渡しても自分の部屋ではなく、どうやら先程の男に"誘拐"されたらしい。
「やっと目ぇ覚ましたんかよ、あんた。」
ベットから起き上がると、隣から男の声がした。
どうやら1人ではないらしい。内心、ホッとしていた。
そして、声の方へ目を向ける。
「……あ…。」
私は、一瞬時間が止まったのかと思った。
綺麗な金の髪の毛に、今にも吸い込まれてしまいそうな灰色の瞳。
それから、日本人離れした端整な顔立ちに、鍛え上げられた体。
発せられたのは日本語なのに、あまりにも日本人とはかけ離れていたので、外国からの留学生か何かかと思った。
だが、今はそんな事よりも…
「あの…ここはどこですか?それにこの首輪…。」
そっちの方が気になって堪らない。
と言うわけで、その男の人に尋ねてみた。しかし、
「知るかよ。こっちが聞きたいくらいだ。」
「で、ですよね。」
怒り気味に返答された上に、
「ところでお前…誰?」
と、質問されたので、
「た…立花由美です。」
と、答えれば、
「ふーん。」
興味なさそうに、返事を返された。一気に空気が重くなる。
私は、物凄く帰りたい気持ちに駆り立てられたが、
「あっ…あなたは?」
と聞き返した。
「早川ケイト。俺は日本人とイギリス人のハーフなんだ。」
「へぇ…。」
それであの容姿か。
と私は納得したように頷いた。