stage3: 不安と異変
その夜、夕食を食べながら私は不安でたまらなかった。
加奈はああ言っていたものの、実際に悪戯かどうかも定かではない。
それに、前にも同じような手紙も来たことがある。
だから、これはただの悪戯ではなく、なにか良からぬ出来事の前触れなのではないだろうか。
私は、ボーとしながら考えていた。
「どうした?学校でなにかあったのか?」
その様子を見かねたのか、心配そうに父が声をかけてきた。
「え?あ…ちょっとね…。」
「なんだ、恋の悩みか?」
「ちっ違うよ!!」
「じゃあなんだよ、言ってみろ。」
「うん……。」
私は、父に今日の朝、学校の靴箱で起きた事をはなした。
父に話せば何かが変わる、そんな気がしたのだ。
「………。」
「お父さん?」
しかし、話を聞いた父はなぜか険しくなった。
何かを考えるように黙って一点を見つめていて、どこかしら何かに脅えているようにも見える。
「………。」
「………。」
「………由美。」
そして、暫く黙っていたかと思うと、急に立ち上がり、向かいに座る私を後ろから抱き締めてきた。
カラン……
持っていた箸が音を立てて床に落ちる。
「お父…さん?」
「由美…。」
抱き締めた父の大きな手は、珍しく震えていた。
「迎えにくるって…いったいどういう事…なのかなぁ…。」
食事を終え、風呂に入って後は寝るだけの私は、ベットの中で手紙の事を考えていた。
『今夜、お迎えに伺います。』
それだけが記された手紙。
それに、父の異変。
手紙と父は何か関係があるのだろうか。
「はぁ……。」
私は、溜め息を吐くと、目を閉じて眠る事にした。
同時刻。部屋でビールを飲みながら、直幸は悩んでいた。
「なんで…由美に…。」
酷く落ち込んだように肩を落とし、彼は疲れたように溜め息を吐いた。
由美を孤児院から引き取ってから6年間。
彼は、実の娘以上に、由美に愛情を注いできた。
"自分の命に変えても娘を守る。"
そう考えていた。
"ずっと一緒にいたい"
そうも考えていた。
けれども、それは"例の手紙"のせいで叶わなくなる。
この幸せも今日までだ。
そう思うと、彼は自然と涙を流していた。