stage:1 いつもとは違う物
AM:7:00
いつもの時刻に起床。
ベットを降り、手櫛で軽く乱れた髪を直す。
そして、台所に向かうと、手早く朝食を作る。
これも、母親のいない私にとってはいつも通りのこと。
「オイ、由美。」
「はぁい。」
それから、父に頼まれ外へ新聞を取りに行く。
これも、いつも通り。
けれど、郵便受けを開けると、あるものがいつも通りではなかった。
とりあえず、新聞ともう一つの想定外の物を手に取り、家の中へ入った。
「なんだ、それは?」
父に新聞を渡すと、私の手の中にあるもう一つの物を問う。
黒くて薄いソレは手紙のようで、表には『立花 由美様』と記されていた。
「さぁ?郵便受けに入ってたの。」
「こんな時間にか?気味悪いな。」
「確かに…。」
「で、内容は?」
「ちょっとまって…。」
私はそう言うと、手紙の封を切った。
『おめでとうございます。あなたは当選しました。』
中には、そう記された真っ黒なカードだけが入っていた。
「新手の詐欺かなんかだろう。最近、署でもそういう事件を耳にするからな。」
「ふーん。」
「由美も気を付けろよ?」
「うん。」
私はそう返事をすると、手紙をゴミ箱に捨てた。
それから、何事もなく平和な日々が続いた。
父の言う通り、あれは詐欺だったらしく、なんの音沙汰もない。
流石、刑事だけの事はあるな。と感心しつつ、夕食の際、父の顔をマジマジと見た。
私の父、立花直幸はもうご存じの通り警察官だ。
本人いわく、優れた知能と運動神経をもっていたため、直ぐに警察官になれたと言っていたが、そこは少々疑わしい。
けれど、今は刑事としてがんばっている父は私の誇りだった。
しかし、実の所、父と私は血が繋がっていない。
私が十歳の頃、孤児院にいた私を、当時二十五歳だった父が引き取って、この六年間立派に育ててくれた。
だから、私も何不自由する事なく過ごせていたし、血の繋がりは無くとも、本当の親子のように思えた。
「ん?どうした?」
ご飯を口にしていた父が、私の視線に気付いて言った。
「べつにぃ。」
と私は笑いながら、食事を続けた。すると、父は、
「なんだよ、気になるな。」
と笑いながら言った。
今日も、いつもと変わらない平和な1日だ。
しかし、この時の私は、これから起きる恐ろしい出来事をしるよしもなかった。