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デスゲーム  作者: 夜市
12/12

stage:11 恐れる者と怒る者

生存者:残り190人(95組)



「え?」


由美の叫び声に振り向くと、由美はどこかに銃を向けて撃っていた。

キョロキョロと当たりを見渡せば、少し離れた所で女が倒れていた。


まさか!!


俺は直ぐに気づいた。

由美が俺を助けてくれたということを。


「くそッ!!なめやがって!!」


怒りが込み上げてくる。

自分を殺そうとした奴にもだが、簡単に殺されそうになる自分自身に酷く苛ついた。

持っていたマシンガンに力が入る。


「まっ待て!!」


すると、それに気づいた男は止めるよう叫んだが、


「ぶっ殺してやる!!」


俺はそれを聞くことなくそいつを撃った。


ダダダダダ―――



「ぎゃあぁあ―――!!!!」


廊下に、男の悲鳴がよく響く。

弾丸でグチャグチャと肉の抉れる音も。

血の飛沫が飛ぶ音も。

銃声も。

何もかもがよく響く。


でも一番よく自分の中で響いたのは、


「……恐いよ…。」


由美の小さな声だった。















「お前…生きてんのか?」


「あぅあぁ……。」


「爆発されると困るし……死んどけ。」


パン―――


正気に戻った後、俺はもう一人の女に近寄った。

男は死んだ。

けれどコイツは生きていて。

虫の息だったが、俺はトドメをさした。

そいつが生きてると困ると思ったからだ。

今…たとえ5分後だとしても爆発されると困る。

間違えなく俺達も巻き込まれる。

そんなのはごめんだ。

だから、困る。


しかし、どうしたものか。

無駄に時間と労力は使ってしまった。

敵は、


『午前11時現在、四組失格。』


今のを含めて4チーム消えたようだ。

それに、



「恐いよ…恐いよ…。」



由美の精神状態も危うい。


さて、どうする…と言っても何も考えが浮かばねーし。


あーあ、こんな事なら勉強しとくんだった。

いや、関係ねーか。


まぁ、とりあえず由美をなんとかしねぇと。


そう思って由美に近付くと、彼女は酷く震えていた。


「…恐いよ…恐いよ…。」


目も虚ろで、先程から同じ事を何回も言っている。


無理もない。

初めて人を殺したんだ。

恐くて恐くて仕方ないのだろう

しかし、そんな悠長なことを言っている暇はない。

いつ、どこから敵はやって来るのか分からないのだ。


「由美!!しっかりしろ!!」


俺は銃を床に置くと、由美の肩を揺さぶった。


「ケイト…私…殺した…私…。」

すると、由美の目からポロポロと涙が絶え間なく溢れ出している。

それを見ると、なぜか苛立ちがこみ上げてくる。

泣きたいのはコイツだけじゃない。

辛いのはコイツだけじゃない。

みんな、辛くても泣きたくても堪えているんだ。

なのにコイツは…。

だから、苛々する。


「あぁ、そうだ!!お前は人を殺した!!けど、それがどうした!!だから、何だって言うんだよ!!」


「え?それは…。」


「お前だけが辛いのか!?お前だけが不幸なのか!?違うだろ!!甘ったれんな!!」


「……。」


「お前は俺を助けた、それでいいじゃねーか。何をそんなに恐がってるんだ?敵も()り合うつもりでいたんだぞ。だから一々…気にすんなよ、いいな?」


「でも……。」


「いいな!!」


「……分かった。」


俺が強く言うと、由美は頷いた。


「よし、じゃあ行くぞ。」


「うん。」


そして、銃を構え警戒しながら歩き出す。


「あっ、そうだ。」


「どうしたの?」


「絶対生きて帰ろうな。」


「うん!!」


「生きて帰ったらさぁ…。」


「ん?」













「一緒にカラオケ行かね?」













「うん!!行く!!」


「なんだよ、さっきと違って元気良いなお前。マジ、おもしれー!!」


「もう!!からかわないでよ!!」




辺りに、俺の笑い声と由美の怒声が響いた。

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