stage:11 恐れる者と怒る者
生存者:残り190人(95組)
「え?」
由美の叫び声に振り向くと、由美はどこかに銃を向けて撃っていた。
キョロキョロと当たりを見渡せば、少し離れた所で女が倒れていた。
まさか!!
俺は直ぐに気づいた。
由美が俺を助けてくれたということを。
「くそッ!!なめやがって!!」
怒りが込み上げてくる。
自分を殺そうとした奴にもだが、簡単に殺されそうになる自分自身に酷く苛ついた。
持っていたマシンガンに力が入る。
「まっ待て!!」
すると、それに気づいた男は止めるよう叫んだが、
「ぶっ殺してやる!!」
俺はそれを聞くことなくそいつを撃った。
ダダダダダ―――
「ぎゃあぁあ―――!!!!」
廊下に、男の悲鳴がよく響く。
弾丸でグチャグチャと肉の抉れる音も。
血の飛沫が飛ぶ音も。
銃声も。
何もかもがよく響く。
でも一番よく自分の中で響いたのは、
「……恐いよ…。」
由美の小さな声だった。
「お前…生きてんのか?」
「あぅあぁ……。」
「爆発されると困るし……死んどけ。」
パン―――
正気に戻った後、俺はもう一人の女に近寄った。
男は死んだ。
けれどコイツは生きていて。
虫の息だったが、俺はトドメをさした。
そいつが生きてると困ると思ったからだ。
今…たとえ5分後だとしても爆発されると困る。
間違えなく俺達も巻き込まれる。
そんなのはごめんだ。
だから、困る。
しかし、どうしたものか。
無駄に時間と労力は使ってしまった。
敵は、
『午前11時現在、四組失格。』
今のを含めて4チーム消えたようだ。
それに、
「恐いよ…恐いよ…。」
由美の精神状態も危うい。
さて、どうする…と言っても何も考えが浮かばねーし。
あーあ、こんな事なら勉強しとくんだった。
いや、関係ねーか。
まぁ、とりあえず由美をなんとかしねぇと。
そう思って由美に近付くと、彼女は酷く震えていた。
「…恐いよ…恐いよ…。」
目も虚ろで、先程から同じ事を何回も言っている。
無理もない。
初めて人を殺したんだ。
恐くて恐くて仕方ないのだろう
しかし、そんな悠長なことを言っている暇はない。
いつ、どこから敵はやって来るのか分からないのだ。
「由美!!しっかりしろ!!」
俺は銃を床に置くと、由美の肩を揺さぶった。
「ケイト…私…殺した…私…。」
すると、由美の目からポロポロと涙が絶え間なく溢れ出している。
それを見ると、なぜか苛立ちがこみ上げてくる。
泣きたいのはコイツだけじゃない。
辛いのはコイツだけじゃない。
みんな、辛くても泣きたくても堪えているんだ。
なのにコイツは…。
だから、苛々する。
「あぁ、そうだ!!お前は人を殺した!!けど、それがどうした!!だから、何だって言うんだよ!!」
「え?それは…。」
「お前だけが辛いのか!?お前だけが不幸なのか!?違うだろ!!甘ったれんな!!」
「……。」
「お前は俺を助けた、それでいいじゃねーか。何をそんなに恐がってるんだ?敵も殺り合うつもりでいたんだぞ。だから一々…気にすんなよ、いいな?」
「でも……。」
「いいな!!」
「……分かった。」
俺が強く言うと、由美は頷いた。
「よし、じゃあ行くぞ。」
「うん。」
そして、銃を構え警戒しながら歩き出す。
「あっ、そうだ。」
「どうしたの?」
「絶対生きて帰ろうな。」
「うん!!」
「生きて帰ったらさぁ…。」
「ん?」
「一緒にカラオケ行かね?」
「うん!!行く!!」
「なんだよ、さっきと違って元気良いなお前。マジ、おもしれー!!」
「もう!!からかわないでよ!!」
辺りに、俺の笑い声と由美の怒声が響いた。