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ハープルシール ~浮遊大地を統べる意思~  作者: 仁藤世音
第1章 Part 2 人間と魔族
24/56

23 ???

僕は、聞いていたんだ。


僕には、聞こえていたんだ。全てが。


だから、笑ってほしいんだよ母さん、父さん。わかるだろ?


そんなに泣いてばかりじゃ、僕を見てくれよ。目の前にいるのに。


あぁ、まだ、待ってくれ! 一言も会話をしていない! 離れていく、嫌だ嫌だ。






悠久の時の中、何もない虚無の大海原にさらされている。欲しいものは、一番欲しいものは、可能性だ。

「おや、君もそう思うかい?」

フワフワと漂う虚無の漂流者は僕だけではないのか。

「そりゃそうさ。僕は忘れられないんだよ。母さんと父さんの悲しい悲しい声を」

「声を聴けたんだね。私の両親は、その場で虚無に溶けていったよ」

「それは残念だったね」

虚無の漂流者はだんだんと見えなくなっていく。

「またね」

「さようなら」






悠久の時の中、何もない虚無の大海原にさらされている。欲しいものは、一番必要なものは、可能性だ。

「そうかな?」

おや、フワフワと漂う虚無の漂流者は僕だけではないのか。

「そうさ。僕は忘れられないんだよ。母さんと父さんの悲しい悲しい声を。きっと僕だけなんだ、癒せるのは」

「そう思えて羨ましいよ。俺は自分を終わらせたいもの」

「それは、よくわかるよ」

虚無の漂流者はだんだんと見えなくなっていく。

「またね」

「さようなら」






悠久の時の中、何もない虚無の大海原にさらされている。久しぶりにものを考える。無欲だ。

「君も虚無に溶けていきそうだね」

初めて、僕以外の虚無の漂流者に出会った。

「残念だよ。君という意思が通う初めての仲間に出会ったのに」

「残念だね。僕も初めて出会えたよ。でも、僕のが先に溶けそうだ」

「そっか」

虚無の漂流者はその場で溶けて消えていく。

「さような………       

「さようなら。」






無限の虚無の大海原にさらされている。

・・

・・・

「やはり君は強いね」

…………

「君は最後まで溶けていなかった。流石だよ」

…………

「君に可能性を。私と共に行こうよ」

…………可能性?

「そう。幸福な可能性かもしれない、残酷な可能性かもしれない。それはわからないよ」

いいよ。僕を連れ出してよ。

「わかった、ありがとう。私には君が必要だったんだ。とってもね」


虚無の大海が大渦を巻いて、僕と()()を飲み込んだ。


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