23 ???
僕は、聞いていたんだ。
僕には、聞こえていたんだ。全てが。
だから、笑ってほしいんだよ母さん、父さん。わかるだろ?
そんなに泣いてばかりじゃ、僕を見てくれよ。目の前にいるのに。
あぁ、まだ、待ってくれ! 一言も会話をしていない! 離れていく、嫌だ嫌だ。
悠久の時の中、何もない虚無の大海原にさらされている。欲しいものは、一番欲しいものは、可能性だ。
「おや、君もそう思うかい?」
フワフワと漂う虚無の漂流者は僕だけではないのか。
「そりゃそうさ。僕は忘れられないんだよ。母さんと父さんの悲しい悲しい声を」
「声を聴けたんだね。私の両親は、その場で虚無に溶けていったよ」
「それは残念だったね」
虚無の漂流者はだんだんと見えなくなっていく。
「またね」
「さようなら」
悠久の時の中、何もない虚無の大海原にさらされている。欲しいものは、一番必要なものは、可能性だ。
「そうかな?」
おや、フワフワと漂う虚無の漂流者は僕だけではないのか。
「そうさ。僕は忘れられないんだよ。母さんと父さんの悲しい悲しい声を。きっと僕だけなんだ、癒せるのは」
「そう思えて羨ましいよ。俺は自分を終わらせたいもの」
「それは、よくわかるよ」
虚無の漂流者はだんだんと見えなくなっていく。
「またね」
「さようなら」
悠久の時の中、何もない虚無の大海原にさらされている。久しぶりにものを考える。無欲だ。
「君も虚無に溶けていきそうだね」
初めて、僕以外の虚無の漂流者に出会った。
「残念だよ。君という意思が通う初めての仲間に出会ったのに」
「残念だね。僕も初めて出会えたよ。でも、僕のが先に溶けそうだ」
「そっか」
虚無の漂流者はその場で溶けて消えていく。
「さような………
「さようなら。」
無限の虚無の大海原にさらされている。
・
・・
・・・
「やはり君は強いね」
…………
「君は最後まで溶けていなかった。流石だよ」
…………
「君に可能性を。私と共に行こうよ」
…………可能性?
「そう。幸福な可能性かもしれない、残酷な可能性かもしれない。それはわからないよ」
いいよ。僕を連れ出してよ。
「わかった、ありがとう。私には君が必要だったんだ。とってもね」
虚無の大海が大渦を巻いて、僕と誰かを飲み込んだ。