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手負いの勇者を倒して、最弱から最強ダンジョン  作者: たっぺん
【第一章】〜ダンジョン製作〜
3/5

3  ウィッチの作戦

説明が多いかもです。今回は短め。

 ダンジョンを拡大してから三日が経過した。その間に、サイクロプスを自由に徘徊させる為の全部屋の天井の嵩上げ、そして細かな細工を施した。


 まず、入り口の部屋の各通路の前に看板を作った。左側のサイクロプスが守護するルートは『巨人の間』。右のダークスライムのルートは『闇の間』。そして最後に真ん中、アンデのルートを『魔人の間』と表記した。


 各ボス部屋を担う魔物達の実力を理解する為に、軽く力を使ってもらったが、サイクロプスは見た目通り、二本の大剣を使い力で攻める物理型。ダークスライムも予想通り闇魔法を使用する。そしてスライムな事もあり、物理耐性がかなり高いようだ。


 そしてアンデ。こいつは別格だ。戦闘スタイルは魔法寄りだが、近接戦闘もかなり強い。そして何より魔法のレパートリーと魔力量。これがアンデの最大の強みだ。結果的に言うと、全属性魔法を使用できる上に、全属性耐性持ちだ。そしてこれだけだと、物理攻撃に弱く感じるがそうではない。全属性を使用できると言う事は、アシストや自強化に長けた無属性魔法も使用できる。つまり、数々の自強化魔法を重ね掛けして戦えば、実質物理耐性も完備している事になる。


 これでSランクだ。SSランクは一体どんな化け物なんだと、期待と同時に恐ろしさすら覚える。それと、Sランクと言えばヒーリングラビットもだ。もちろん、ヒーリングラビットも能力を使用してもらったがあの小さな体に、これまた凄い力を秘めていた。


 ヒーリングラビットに頼んで、見せてもらった力は二つ。一つは普通のヒール。効果は怪我した者がいなかったから不明。だが、回復魔法は、使用する際に出現する光の強さで予測できる。その光は洞窟内なのにも関わらず青空の下に居るのではと錯覚に陥るほど大きなものだった。


 二つ目はオートリジェネ。これまた凄い魔法だ。回復魔法は属性魔法に分類されない唯一の魔法。それ故に全属性持ちのアンデですら使用する事が出来ない。極めるには永遠の時間が必要と言われている程の高等魔法でもある。そしてこのオートリジェネはその中でも習得難度の高い回復魔法だ。


 効果は、永続ヒール。使用者の練度に応じて回復量と継続時間は変わるが、効果は絶大だ。一定間隔で対象にヒールを施し、ダメージを与えても与えてもみるみる回復されていく。こんな脅威は他にないだろう。


 だが欠点が一つ。ヒーリングラビット自体は物凄く弱い。なんだったらGランクの魔物にですら勝てないだろう。能力が強力すぎる故だろうが、戦場を駆けさせながら回復……なんて方法は利口ではない。強力なのは間違いないが扱いが難しい。そう考えさせられる魔物だった。


 そして最後に魔物を大量に召喚した。マスター部屋を抜いたら全部で12の部屋がある。流石に前の魔物の数だけでは、部屋の無駄使いだ。とは言っても、コストのかかるスーパー召喚やレジェンド召喚は行なっていない。


 行ったのは、ノーマル召喚。これだけだ。ノーマル召喚に必要な魂は20G。それを50回程繰り返し、ランクG〜Eの魔物を召喚しまくった。


 主に召喚されたのは原種のゴブリンやスライム。そしてそれらの亜種。こいつらの出現率は異常だった。それに他は蜘蛛型の魔物スパイダムや、ネズミ型の魔物のビッグラット。他にも数種類の魔物が、出現したがどれもランクの低い弱い魔物だ。


 ランクGとFの魔物は巨人の間と闇の間に満遍なく振り分け、ランクEの魔物は魔人の間へと配置した。今はランクEでも魔人の間の配置だが、余裕が出てきて、魔物の数が増えたらランクEも左右の間に行く可能性があるな。まぁ何にせよ、これでスカスカだったダンジョンも少しはマシになっただろう。


 「なぁアンデ。村に行ったウィッチはまだ帰ってこないのか?」

 「はい。アーセル様。確かに少し遅いですね……。かれこれ2、3時間は経過したでしょうか」


 俺は今、マスター部屋に居る。新たにアイテム交換で魂と引き換えに召喚した、禍々しい装飾が施された『魔族の椅子』に座りながら、アンデに問い掛けた。地味に安くて40魂。


 「そうか。まぁ、今回ウィッチに任せた命令は今後の俺たちの活動に大きく関わるからな。気長に待つか」


 俺はランクCの魔物、ウィッチにある命令を下した。まず、初めにアンデをダンジョン外に出し、周辺の状況を確認させた。俺のダンジョンは大きな森の中心地に存在する。森の中はこれまでの一年でそれなり探索したが外は別だ。魔界から飛ばされた場所も森に近い地点だったし、場所取りに必死だったから覚えていない。


 そして戻ってきたアンデの情報によると、森の周辺には、小さな村が二つ程あったそうだ。そこまで広範囲を命令したわけじゃなかったからこれでも大収穫。二つある村の内の、最も近い村をマーキングし、人間を誘き寄せる作戦を練る事にした。


 「ご心配なら私が確認してきましょうか?」

 「いや、いいよ。アンデは目立つし、今は強い存在を見せたくない。ウィッチだから適任なんだ」

 「ご無礼をお許しください」


 俺の返事にアンデは跪いてから謝罪する。まぁアンデなら人に見つからずウィッチの動きを確認する事くらい出来ると思うが、念には念をだ。


 今回ウィッチに命令した理由だが、この三日で新たな発見があった。ウィッチーー小さな少女の姿をした赤いローブを被る人型の魔物。こいつ、実は喋れる事に気がついた。隠していた訳じゃなかったみたいだが、喋るタイミングがなかったとかなんとか。


 それにより今回のこの作戦を思い付いた。ウィッチには村へ赴き、人間をダンジョンに連れてくる命令を与えた。その際の必要事項を二つ加えて。一つは村の中で一番強そうな者に声をかける事。そして二つ目は冒険者ギルドにダンジョンの存在を伝える事だ。


 一つ目は森の中へ、姉が魔物に連れ去られたと村で一通り騒いだ後に、一番強そうな者に声を掛けてダンジョンへ誘導するよう伝えてある。声を掛けた者が付いてこないようなら、次に強き者とも。見た目が子供な為、疑われた時用の嘘もそれなりに仕込んである。


 二つ目は村にある冒険者ギルドで俺のダンジョンを知らせる。正確な場所と嘘の情報をだ。伝えたらすぐにギルドを出て姿を消せと伝えた。先程と同じように疑われた場合の対処も織り込み済みだ。嘘の情報はただ一つ、『小さな洞窟だった』と言うだけだ。


 この二つの行動で起こる効果は、一つ目でダンジョンに誘導した人間を倒し、子供に付いて行った村の強者が戻らず違和感を覚える。そして二つ目でダンジョンの存在を知っている冒険者ギルドが森に姉が連れ去られたと騒いでいた少女の存在を村人から知り、ダンジョンへと結び付けさせる。『小さな洞窟だった』と言う情報により、救助や攻略に来る人間の警戒心を大きく下げる役割だ。


 うまくいけば、強者が消えた事による更なる強者を誘き出す目的と警戒心を下げた影響も相まってかなりの人間が釣れるかもしれない。ウィッチには難しい命令かもしれないが、成功率を最も高くするには人型でそして、会話のできるウィッチが適任だった。


 「成功したら、ダンジョンとして初めての戦闘だな。勇者をカウントするのは微妙だし」

 「勇者ですか? まさかアーセル様は勇者と戦った事がお有りなのですか?」

 「あぁ、あるぞ。あいつを倒したから今のお前達が居るんだよ」

 「なんと……。驚きました。かの強力な力を持つ勇者と戦い、倒されてしまうとは。流石はアーセル様です。私も僕として鼻が高くあります」


 なんかすげぇ尊敬の念を送られている気がするけど、倒したって言ってもほんとたまたまだし、かなり卑怯な手使ってるんだけどな。めちゃくちゃ負傷してたし。


 そう言えば、あの勇者。どうやって俺のダンジョンに来たんだ? バエル様にやられたって言ってたけど……。場所は定かではないが、確かバエル様のダンジョンは炎窟と呼ばれる由来が、火山にあるからと聞いた。ここは森だし火山なんかとは正反対。近くに山があったとしても、ダンジョン外に出てから、わざわざ森の中へ入るか? 普通。


 「なぁ、アンデ。属性魔法の中に転移するものとかあんの?」

 「ございます。無属性魔法に分類されますね。しかし習得には一筋縄ではいきません。私も全属性魔法を使えると謳ってはいますが、恥ずかしながら高等過ぎる故、習得しておりません」

 「なるほど……」


 あの勇者はバエル様との戦闘で、勝てないと判断し転移魔法、もしくは何かしらのアイテムでダンジョン外へと脱出して、理由はわからないが何故か俺のダンジョン付近に飛んだ。その考え方なら少しは納得できるか? まぁ奴は死んだ。今更答えなんて聞けないんだけどな。


 まぁいいや。とりあえず今はウィッチの帰りを待つだけ。命令を下した時、ウィッチの奴めちゃくちゃ張り切ってたけど、本当に大丈夫かな。ちょっと心配になって来た……


 Cランクの魔物だし、何かあれば逃げる事を優先しろとは伝えたから、死んだりする事への心配は少ないけど、肝心の命令をこなせてるかどうか……。


 なんたって、あいつはめちゃくちゃーー


 「おまたせちまちた。人間をつれてきまちた」


 ーー舌ったらずなんだ。

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