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手負いの勇者を倒して、最弱から最強ダンジョン  作者: たっぺん
【第一章】〜ダンジョン製作〜
1/5

1 【プロローグ】負傷した勇者

 「はぁ〜。魂が欲しいわ」


 空洞以外に何も存在しない洞窟の中心地で、俺は仰向けで手を頭の後ろで組みながら寝転がり、ボヤいた。


 一年前。俺は魔族が属する、ダンジョン管理育成学校を卒業した。魔界に住まう魔族の中で、身体能力、魔力、スキル等に恵まれた者が通う事が許される施設だ。俺もまた力に恵まれ、入学した。


 ダンジョン管理。その名の通りダンジョンと呼ばれる迷宮の事だ。数多の魔物を従え、攻略に来た人間や監視下にない魔物達を屠る。その屠った対象を糧としてダンジョンを更に成長させる。そう言ったダンジョンを管理する為の知識を学ぶ三年間を経て、俺は卒業と同時に人間界へと舞い降りた。


 アーセル・フォード。それが俺の名だ。歳は八十。人間の歳で言うと十八くらいに分類されるだろうか。話は戻るがアーセルこと、俺が学校を卒業したのが一年前。ダンジョンは人間界の方がより強力な迷宮へと進化できる。魔界で作る事も可能だが、成長はしない。理由は簡単だ。"獲物"が居ないからだ。


 先の通り、ダンジョンは迷宮内にて死んだ者を糧にし成長する。正確には魂を糧にするんだ。それを(コン)と呼ぶ。魂は、ダンジョン内の様々な物に使用する事ができて、主には魔物の召喚やダンジョンの拡張等に挙げられる。


 そして、その魂とは器の大きさに比例する。器が大きい者ほど、ダンジョン内にて撃退した時の魂の数が変わるんだ。だが、魂の器とは何か? それは単純にその者の強さだと言われている。そう考えると簡単だ。器なんて回りくどく考えず、単純に強い奴を倒すと多く魂を貰える。ただそれだけだ。


 「なのに俺は一年間も初期状態だなんてな……」


 風通しの悪い洞窟。風が来ても、昨夜の雨のせいかジメジメと肌にまとわりつく。さっきも言ったが、まるで時間をかければ誰でも掘れるんじゃないかと、思わせるほど小さな丸型の空洞。そこに俺は居る。そしてこれが俺のダンジョンだ。


 洞窟の奥に小さな通路があってそこが俺の生活スペースだ。普段は壁にしか見えないように、魂を使って細工してある。生活スペースと言っても、あるのはトイレにベット。台所に机程度だ。


 ーー今から約一年前。俺は魔界から人間界へと移り渡った。学んだ知識を活かしてダンジョンを造る為、先ずは、自分のダンジョンに相応しい場所取りから始まる。同じ学び舎で育った同級生達とみんなで同じ地に……なんて事はない。何故なら飛ばされる地はランダムだからだ。


 俺が飛ばされた場所には俺以外誰も居なかった。そして俺は歩き渡り、大きな森の中心地。そこに自分のダンジョンと言う名の城を造る事に決めた。初めに学校側から魂を支給される。その数は100。


 これからの新生活に意気揚々としていた俺だったが、ここで大きな障害へとぶち当たった。初期支給の魂の数が100ではなく、50しかなかったんだ。何かの手違いだったのは察したが、魔界との通信方法がない事に問題があった。人間界に降りた魔族が魔界との通信が出来る方法は一つ。魂を使用して特別なアイテムで通信する他ない。学校でその事を学んでいた俺は絶句した。


 その事実に放心状態となっていた俺だが、我に返り現段階で出来る事を模索した。ダンジョン魔鏡を起動して眼前に透過度の濃い液晶を出現させる。これは、ダンジョン管理に必要不可欠な液晶型のマジックアイテムだ。


 ■ダンジョン製作

 Gランクーー小さな洞窟 50魂。

 Fランクーー大きな洞窟 80魂。

 Hランクーー三連洞窟 100魂。

 ーー


 ……。


 絶望的だった。一番安いダンジョンで50魂。所持数全てを使用してしまう。それに魔界との通信アイテムはダンジョン内でしか使用できない。人間達に魔界の情報を与えない為か、こういった制限が他にもぽつぽつと存在する。勿論これも学校で習った事だ。


 だがここで何もせずに人間に殺されるなんてごめんだ。人間と魔族の仲は遥か昔から険悪。殺し殺されが続き、数々の争いを繰り返してきた。仕方なく自分を守る為に、50魂全てを使用して小さな洞窟を選択してダンジョンを造った。


 ダンジョンを製作するのと同時に、俺の命はダンジョンとリンクされる。所謂、核と言うやつだ。俺の心臓は、ダンジョンの命にもなる。つまり俺が死ねばダンジョンも死に、消えるという事だ。


 それからは大変だった。この一年で、出来る限り魂を集める為に色々と行動した。危険度Gランクの弱いゴブリンやスライムなんかを上手くダンジョン内に誘い込み倒す。入手出来る魂はゴブリン五匹でやっと一つの魂が手に入るような計算。


 気が狂いそうな作業を、ひたすらに繰り返しなんとか、奥に小部屋を作れる分やカモフラージュの壁や家具なんかを召喚できる分の魂を集めた。


 そして今に至る訳だがーー。


 「生憎、まだ人間と出会ってないだけマシかな」


 ふぅ、とため息を吐く。この一年間、ひっそりと暮らしてきたからか、未だ人間との遭遇は一度もない。それとも森の規模が影響しているのか、中心に造ったのは当たりだったかもな。


 今日も今日とてやる事がない。この前、気になってた机で使ったから魂のストックが少ないし、狩りにでも行くかな。


 「よっこらしょ」


 寝転がった状態から、足の遠心力で上体を起こす。今日もイエローゴブリンいねぇかな。あいつ一匹で魂一つ貰えるからうまいんだよな。今の俺でもギリ倒せるし。


 そんな事を考えながら立ち上がる。そこで違和感に気付く。


 「これは……人間の気配か?」


 間違いない。この違和感の正体は人間の気配だ。魔族は人間に比べ、数倍の感知力がある。まだこのダンジョンから距離はあるが、俺の感知範囲に入ったようだ。


 数は一。周辺に仲間らしき気配は感じない。理由は考えてもわからない。とにかくなんとかやり過ごしたいんだが……。


 取り敢えず、ダンジョン内の空洞から、奥の生活スペースへと移動する。勿論カモフラージュの壁を直す事を忘れない。暫くここで様子を見よう。この気配の進行状況からして、このまままっすぐ進まれると俺のダンジョンにぶち当たる。なんとか逸れる事を願いながら目を瞑り気配探りに集中する。


 だが、俺の願いは叶う事なく、とうとう気配はダンジョンの目の前まで差し掛かった。俺は高鳴る心臓の鼓動を手で抑えながら、固唾を飲み込む。


 「どう……くつ……? 魔物の気配もない。助かった……結界を張って少しここで……」


 綺麗な金髪を靡かせ、まだ幼さはあるが顔が整っている青年。見るからに強そうな装備を身に付けているが明らかに消耗している。所々に見える、生々しい傷がそれを証明していた。しかし青年は俺のダンジョンに踏み込んだと同時に何やら呟いてから意識を手放し倒れ込む。


 「……」


 沈黙。

 俺は声も音も出さずに、倒れる前と変わらず通路の隙間から覗き込んでいる。動かないんじゃない。動けないんだ。言葉遊びじゃなく、本当にこの表現が今の状況に適している。倒れ意識のない男だが、何故か近付けない。それはその男から見えないオーラのようなものを感じたからだ。


 おそらくだが、あれは歴戦の戦士……。今の俺では到底叶わないステージに居る存在だ。俺の中の危険信号が逃げろ逃げろと鳴り響いているのがわかる。意識を失っているというのにこの圧力。額から流れる汗が、暑さからではない事を嫌という程感じる。


 だがどうする? このまま去るまで待つか? いや、見つからない保証なんてない。今は消耗していて気付かなかっただけで、回復してから気付かれる可能性は十分にある。入り口に倒れている事もあって、逃げるにしても必ず奴の前に姿を表せないといけない。ならーー。


 「こ、殺すか……」


 思わず口に出してしまった。かなり小さな声だったから向こうの部屋には聞こえてない筈だ。奴が来てから初めての声。相手は気絶しているが、明らかに強者。近付いて目を覚ます可能性だってある。倒おすのはリスクしかない。だがダンジョンとしてはどうだ? 奴を倒せば確実に大量の魂を入手できる。手違いとは言え、一年間も初期状態だったこの環境を一気にぶち壊せる程の魅力がそこにはある。


 正直、この生活にはもうウンザリしていた。倒しても倒しても少ない魂。俺の力量的に強い魔物は狩れない。ジリ貧状態が開幕から始まっているようなものだ。なら、死ぬ可能性があるとしてもあの学校を卒業した魔族として人間と戦う事で少しはマシな人生になるんじゃないか?


 「はっ。この俺がこんな事まで考えるくらい極限状態だったなんてな」


 小さく鼻で笑う。昔の俺なら魔族として、なんて言葉は絶対に出なかっただろうな。イタズラや馬鹿みたいな事ばっかやってたしな。先生にもそれなりに迷惑かけたっけ。じゃあ久しぶりに優等生になってやろうじゃねぇか。死ぬかもしれない賭けだけど、今の状況を打破出来るなら万々歳だ。


 音を立てずにゆっくりと動く。台所の棚にしまってある護身用のナイフを取り出し、再び小部屋の入り口へと戻る。奴の動きは……まだ気を失っているな。高鳴る鼓動に荒れる呼吸。小さく深呼吸して呼吸を整える。その効果で次第に心臓の鼓動も小さくなり、覚悟を決める。


 ーーよしッ!


 気合いと共に重い足を運ぶ。カモフラージュの壁を抜け空洞の方へと移動して、出来る限り音を出さずに男へと近寄る。小さな洞窟だ。男との距離なんてほとんどないに近しい。だが何故か今は時間の流れが何倍にも遅く感じた。


 ようやく男の元まで辿り着く。小さな寝息が聞こえる。完全に意識はないな。これなら俺でも……。悪いけど俺のダンジョンに来たのが運の尽きだったんだ。何の恨みもないけど、俺たちは魔族と人間。やらなきゃやられる。そういう関係だ。出来ればそのまま死んでくれ。


 俺はナイフを両手で持ち、力を込めて一気に男の首元へと振り下ろす。


 「え?」


 一瞬何が起こったかわからなかった。あまりの早さに対応出来なかった。でも今ならわかる。こいつ……俺が振り下ろすと同時に右手の掌でナイフを受けやがった……ッ!


 「あぶないあぶない。ここダンジョンだったんだね。振り下ろす時の君の殺気に気付けてよかった。殺気を向けられていなかったら僕は死んでいたね」


 掌にナイフが刺さっていると言うのに、男は平然と語りかけてくる。俺の"細工された"ナイフを受けてこの態度。余りの恐怖に俺は握っていたナイフの柄から手を離し距離を取る。


 「クッ。やっぱまだ全然回復してないや。あの魔王の実力は僕らを遥かに凌駕していた……」

 「ま、魔王だと?」

 「君に話す事は何もない。ダンジョンも出来たばかりみたいだし、見た感じ若い魔族。厄介な事になる前に僕が勇者として君を屠るよ」


 勇者だと!? 確か学校で聞いた話によると、優れた魔族がダンジョンを造る為、人間界に行くように人間にも強い力を持って産まれてくる者が居ると言っていた。その人間を勇者と呼び、魔族の最大の脅威だとも。


 そりゃやばいオーラを感じる訳だよな……。勇者なんてこんな弱小ダンジョンには普通来ない。大手の先輩方達みたいな大迷宮ばかり攻略するのが基本だろ。魔王と言っていたから察するに、どっかの先輩のダンジョンで返り討ちにでもあったんだろう。クソッ。何から何までついてねぇ。


 「ま、待ってくれ。俺に害はない。もう何もしない。さっきの事は謝罪する。だから見逃してくれないか? なんなら回復するまでここに居てくれたって構わない。その間何もしないと誓う」


 はぁ。みっともねぇ。こんな格下が吐くような言葉を俺が言わなきゃならない日が来るなんてな。いや、まぁ格下なんだけど。それに無駄なのもわかってる。


 「魔族の君がそれを言って人間の僕が信じるとでも? それに僕は今まで勇者として数々のダンジョンを攻略し魔王を倒して来た。今もそれを決行するだけだ。ここで君の条件を飲んだら、魔族に傷付けられて来た同胞達や王との誓いへの裏切りになるからね」


 あぁ……。わかってるさ。逆の立場だったら俺もそう言うだろうさ。でも、今はなんとか時間を稼がないといけないんだ。俺が"生き残る"ために。


 「わかった。だか少し待ってくれ。あんたが言った通り俺はまだ若いし、ダンジョンだって出来てから間もない。今殺されるには未練も残る。だけど、どうせ殺されるなら勇者にやられたって方が魔族として箔がつく。せめて名を教えてくれ」

 「変わった魔族だね。いいだろう。僕の名前はレイファン・ケイラス。ファネット国の戦闘第八部隊リーダー。勇者だ」


 ファネット国……。学校で習った事がある。人間界は大きく分けて三つの大陸があり、北、東、西に分布される。それぞれ一つの国により管理されてると。一つはローファス国。北に位置する大陸。東にはオ・レリア国。そして最後に西に位置するこの勇者の言うファネット国だ。


 って事は、俺の飛ばされたこの大陸はファネット国の領土って事になる。一年もこっち居て今更だが全然知らなかったよ……。


 それに戦闘第八部隊って事は人間には色んな勇者が存在するって事か? 奴の言葉から察するに、他の役職の勇者もいるって事だろうか。リーダーってのもよくわからんが、勇者だけで編成された部隊って事なら、そりゃ魔族の脅威にもなるわな……。


 「レイファン・ケイラスか。最後に聞かせてくれないか? その傷。かなりの致命傷な筈だ。だがお前が弱いとも思わない。誰にやられたんだ?」

 「ほんと君はよく喋るね。今から殺されると言うのにそれが今大事な事かい?」

 「弱小だがこれでも俺は魔族だ。魔王と言った事からそれが我ら同胞なのは間違いない。お前にそこまでのダメージを与えた者が気になっただけだ」


 誰でもいいよそんなの。俺ですらそう思う。時間稼ぐ為にめちゃくちゃ適当な事言ってるけど、うまく引っかかってくれ……。


 「……。炎窟の迷宮。魔王バエルヘイルだ」


 ……。


 めちゃくちゃ有名人でした。無理だろ。普通に考えて。バエルヘイル様は魔界でもかなり有名だし偉い人だ。人間界にあるダンジョンの中でも五本の指に数えられる程の力の持ち主だ。ダンジョンの難易度もだが、何よりバエル様個人の実力が異常だ。戦闘の情報を見た事があるが、一人で人間達を薙ぎ払い戦う姿は魔族側の俺達ですら震えるものがあった。


 普段は温厚な方で誰にでも好かれるような男らしい方だし、学校にも一度だけ未来ある卵達にと指導しに来てくれた事もある。そのたった一日だけの出来事だったが、皆バエル様に惹かれる程、貫禄があり優しさの中に無限のような強さを感じた。


 こいつも強い。でも、バエル様には勝てる訳がない。そう感じた。


 「奴だけ……奴だけは許さない! 僕の仲間達を皆殺しに……クッ」


 挑むお前が悪いよバーカ。なんて事は口に出して言えないが、どうやらこいつの仲間はバエル様に挑んでやられたらしいな。そしてこいつは何とか命までは取られずに逃げ出せたって感じか。だいたい掴めてきたぞ。


 ーーそれにもうそろそろ効いてきても可笑しくない。


 「なるほど。魔王バエルヘイルさ……バエルヘイルか。奴は魔族の中でも屈指の実力者。たとえ勇者でも一筋縄ではいかないと言う事か」

 「あぁそうさ! 手も足も出なかったさ! だが、僕達がダメでも、僕達より強い勇者は沢山いる。この手で倒したかったがこの際仕方がない。一番隊にかかればあんなやーーガハッ」


 言葉の最中、勇者は口から多量の血を吐き出し体勢を大きく崩す。そうこれこそが俺の狙いだ。わざわざ、意味のない話で長引かせこの状況を作る事をな。正直ダメかと思ったがうまくいった。


 「やっと効いてきたか」

 「なッ! お前一体僕に何を……カハッ」


 勇者は俺を睨みつけるが、先程までヒシヒシとかんじていた威圧感はもうない。血を吐き出しながら、喉を抑えて苦しんでいる。


 「毒だよ。レッドカエルのな」

 「レッドカエルだと……。危険度Gのゴブリンやスライムと変わらない……最弱に位置されるモンスターのハズだッ!」

 「あぁ。それに特に害もなく、毒なんて吐いてこない」

 「ガハッ。なら……どうして……」


 そうあいつらは弱い。"弱体化"した俺にですら倒せる魔物だ。だが弱いからこそ人間はそれ以上調べようとしなかった。これは俺が魔族だからこそ知る情報だ。


 「レッドカエルは自分でも知らない所があるんだよ。それは臓器だ。正確には胃袋だな。人間や俺達魔族は胃酸があり、食べた物を消化する。だが、奴らはその胃酸の力が弱い。その代わり別の分泌液を利用して酸代わりにしている。それがお前の体の中にある正体だよ」

 「まさか……それをナイフに塗っていたの……か……」

 「ご名答。この液は猛毒だ。いくら勇者のお前でも体内は鍛えられまい。だが流石と言うべきだな。猛毒を受けても、暫くは悠長に話やがるんだ。正直焦ったよ」


 いや、ほんとビビったよ。即効性の猛毒だぞ!? それを受けてすぐに効果が表れないなんてバケモンだろ! でも、何も起きないなんて事は無いと思った。時間稼ぎは正解だったな。


 「アアアアアッ! クソッこんなもの、僕の光魔法でッ!」

 「解毒魔法を使えないなんて思ってねぇよ。俺がそれを待つとでも?」


 俺は光る勇者の右手を見てそう言うと、一気に地面を蹴り、勇者へと距離を詰める。


 「なら、お前を先に殺してーーなに?」

 「あばよ」


 ヌハハハ!! 騙されやがったな! 誰がお前みたいな強いやつと戦うかよ。攻撃すると見せかけて奴の横脇を抜けてやった。暗殺に気付かれた時点でお前に勝てるなんて思ってねぇよ。


 「に、逃げるのか! なんて卑怯な奴だ……こんな毒早く治療して、お前を倒すッ! ハァハァ……」


 絶対に捕まるかよ。解毒魔法は時間が掛かる事くらい承知してんだよ。顔色もかなり悪くなってきているし、何よりバエル様にやられた傷が酷い。そんな状況で集中力が必要な魔法を使うんだ。普段よりも時間が掛かる事は一目瞭然だ。その間に逃げさせてもらう!


 苦しむ勇者を置き去りにして、ダンジョンから全力で抜ける。気配感知で、強い魔物がいない方を選択して森の中を走る。


 よくやった! よくやったよな俺! あんなヤバい奴相手に逃げ出せたんだ。まだ足が震えてやがる。思うように走れねぇ!


 「うおぉぉぉぉぉ! 怖えええええ」


 俺の声が森に木霊する。その時、ポケットに入れたダンジョン魔鏡が機械的な音を出して振動した。全力で走っていた俺だが、何故かその音と感覚に気付き、急停止して起動する。


 ■勇者レイファン・ケイラスを討伐。10000魂獲得。

 ■勇者討伐ボーナス。5000魂獲得。

 ■始めての人間討伐ボーナス。500魂獲得。




 ーーは?

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