46 草鬼VS魔王レマンド
平成から令和になりましたね。
新元号に馴染むまで時間がかかりそうです。
こちらに向かってくる黒い点、明らかに普通のものでは無い。
普通の人間なら近くに居るだけで戦意を失い、立つことすら出来ないだろう。
徐々にその姿が見えてきた。
あれは…ピエロか? 見た感じは普通のピエロって言うより、全身白黒のブラックピエロって感じだな。
「何処を見ているんだ? 何か面白いものでもあったか?」
背後から低い声が…なっ! いつの間に俺の背後に!?
ピエロは足を上げて、俺に向かって蹴りを叩き込んできた。
振り向くより先に蹴られたため、受身を取ることができなかった。
そのまま木々にぶつかるも勢いは消えず、俺は大木にぶつかり何とか止まった。
ぐふっ、なんて威力だ。こいつは相当なバケモンだぞ。
「おやおや、この程度の攻撃でこれほどまで吹き飛ぶとはな。なんと貧弱な魔物」
貧弱だって? あんな蹴りくらって、死んでいないだけマシだろ!
「まずは貴様から仕留めて、仲間も後でじっくりいたぶってから殺してやるからなぁ? 安心して死にな」
『てめぇ、名乗りもしないでいきなり蹴り入れるとはどういう教育受けてんだよ』
「やっぱり念話持ちか…貴様が邪魔さえしなければ…俺様の計画は全て上手くいっていたんだよ」
『俺が計画を邪魔した? 何を言ってるんだ?』
「地龍を獣人共にぶつけ、獣人共を一人残らず皆殺しにして、タロス兄さんの無念を晴らし、この地を頂く…いや返してもらうという計画をだ」
『あの地龍はお前が仕組んでいたのか…ベルムさんが居なきゃどうなってたか』
「ベルム…くっ、許さん。またアイツがでしゃばってきたのか」
こいつ、ベルムさんを知っているのか?
後、こいつが獣人達が言っていた魔族なのか?魔族って言うよりも人型の魔物って方がしっくりくるがどうなんだ。
「はぁ、まあいい。貴様らをここで殺し、回りくどい事はせずに俺様が直接あいつらに手を下してやろう」
『やっぱりやらないといけないのか』
「死ぬ前に一度、貴様に俺様の名を教えてやろう! 俺様の名はレマンド…魔王 レマンドだ!!」
『魔王とか…マジかよ』
目の前にいるこいつが魔王だって?
でも確かにそれならこの強さにも納得がいくな。てか魔王と戦うのかよ…。
「どれくらい持つのか楽しみだ『分身指人形』」
俺の周りにある草むらがごそごそと動き出す。
草むらからは5体のレマンドそっくりのピエロが現れた。
顔や大きさも全く同じだ。
まてまて、嘘だろ? 増えやがったぞ。
もろに攻撃をくらったからか体力がだいぶ…久しぶりにあれを使ってみるか。
『草の音色』
草が揺れだし心地のいい音を奏でる。
ああこの感じ、力が漲ってくるぞ!!
ピエロ達も露骨に嫌そうな顔してるな。
すかさず身体強化と硬化を発動する。
ピエロの1体が俺に蹴りを入れようとするが、当たるギリギリのところで避けた。
早いな…身体強化を使ってなんとか避けたが、避け続けるのは無理かもしれないな。
ピエロ達の動きが意外にも早く、このままだとやられてしまう。
俺は鋭利と状態異常攻撃を常時発動させ、クイックを使い、ピエロの1体に素早く近づき、体全体を切りつけ、距離を置いた。
だが全ての切り口はすぐに塞がり、俺に近づいてきた。
「無駄だ! 俺様とそいつらはほとんど一緒。物理攻撃は効率的とは言えないな。魔法にも耐性を持っている。大人しく殺されるんだな」
切りつけてから少し経ち、先程切りつけたピエロの1体の動きが止まり、地面へと吸い込まれるように倒れ込んだ。
『ふーん、耐性かぁ。状態異常にも耐性はあるのか?』
「なっ!?」
実験として、試しに痺れ粉を発動させてみた。
周りを囲んでいた4体のピエロの動きが小刻みに震えながら止まる。
やっぱり、こいつらは状態異常に弱い。こいつ自身も状態異常に対して耐性を持ち合わせて無いと見たぞ。
俺は周りにいる残り4体のピエロ達に『真蔓の鞭』を使い、切り刻んでいく。
切り口はすぐに塞がるものの、バタバタと音を立てながら倒れていく4体のピエロ達。
「っち、このままでは…くく」
こいつなんで笑ってんだ?
「貴様のおかげでなかなか手に入らなかった状態異常に対する耐性が身についた…感謝するぞ」
『耐性だって? お前にはまだ攻撃をしていないはずだぞ』
「俺様の分身体を攻撃しただろ? ダメージなんかのデメリットは入ってこないが、その他のメリットのあるものは全て本体である俺様に流れてくるんだよ」
『なんだよそれ、ズルくないか? 反則だろ』
「反則で結構、今まで俺様はそうやってこの世界を生き抜いてきたんだからな」
状態異常攻撃を発動させたまま分身体を攻撃すればする程、本体の耐性のレベルがどんどんと上がっていく事になる。そうなれば本体に状態異常関連の攻撃は効かなくなるな。
物理と魔法に耐性を持っていると言っていたし、状態異常も効かなくなると流石にまずいぞ。
「どうした? 攻撃をしてこないのか?」
なぜ分身体を出さない? 俺と直接戦いたくなったのか? それともクールタイムがあるのか?
まあいい、もう一回分身体を出されても厄介だ。ここは一気に攻め落とすしかない!
使い過ぎるとデメリットがあるあのスキルを使う時だ。
『鬼力』
ぐぅ、いきなり頭痛がぁ。でも力が湧いてくるぞ。
「ん? その魔力は!?」
クイックを使いレマンドの背後に回り込み、体に真蔓の鞭を叩き込む。
バキバキとレマンドの体から骨が折れるような音がした後、近くの大木まで吹き飛んだ。
「貴様ぁ、力を隠しておったな…それは…鬼の力、鬼人の力だろ?」
レマンドの魔力が倍以上に跳ね上がったように思えた。
「くく、ふざけやがって…」
レマンドの体からドス黒い魔力が溢れ出てくる。
レマンドの手の辺りの空間が少し歪んだと思うと、黒い短剣が現れた。
何こいつさらっと武器出してんだよ。素手で来いよ。
レマンドがこちらに向かって走ってきた。
真正面から来るのか、やってやろうじゃないか。
俺はレマンドの短剣を硬化を発動させてある左腕で受け止め、右拳で顔面を思いっきり殴ったのだが、俺の拳は空を切った。
避けられたとかではなく、霧になって消えたのだ。
どうなってるんだ? こいつは消えることが出来るのか?
「残念だったな。『精神憑依』完了」
どこからかレマンドの声が聞こえてきた。
精神憑依ってなんだよ。それに完了って、俺の精神に憑依したってことか?
すると視界が徐々に暗くなっていった。
なにも見えないし…ってこの場所前にも来たことがあるような気がするぞ。
あっそうだ! 虫に引っ付かれてた時に来た精神世界? 確か夢みたいなとこだったよな。
「くく、人の精神世界に入ったりするってのは普通じゃ出来ないんだが俺様は魔王、精神攻撃に特化した俺様だからこそ出来るんだよ。まぁ精神憑依なんてしなくても貴様如き、力でひねり潰せたんだがな。しばらくはここでたっぷりといたぶってやるから覚悟しておけよ」
完全に遊ばれてる…てか魔王の癖に性格悪いなこいつ。
いや魔王だからこそ性格が悪いのか。後、いたぶらずにひと思いに殺せ。
《異物を確認…情報処理中…》
またこの声だ。得体が知れないからとりあえず天の声って呼ぶことにしよう。
そういや前にも異物がなんとかってやったような気がするけど…。




