36 愛しき者を失う瞬間 人は何を思うか・迷宮主3
シガミが行ってから少したつがまだ報告がない。
もしかして迷ってるのかな?いや、シガミに限ってそんなはずは……あるね。
「マエダ様!報告に参りました!中層の部屋の番人達が次々と消えていってます!宝箱には触れた形跡はありませんでした」
「部屋の番人達が消えただって?」
「中層の部屋の番人で消えていないのはゾンビナイト様とプラチナトリオ様のお二人だけです」
「兎に角、映像を確認してみよう」
中層、部屋の番人の一人、フライドックの映像だ。
んん?人魂?こんな魔物、配置した覚えはない……ということは……招かれざる客か。
なるほどね、この人魂は火炎魔法、もしくは獄炎魔法の使い手。火炎魔法なら分かるが獄炎魔法が使える魔物なんて限られてくるよ。
それにどの部屋の番人もほぼ即死で灰になっている。
獄炎魔法のような特殊な魔法は僕もよくわからないけど、映像をみた感じだと即死魔法に近いように思える。
「マエダ様!報告に参りました!ゾンビナイト様、そしてプラチナトリオ様のお二人の魔力反応が先程途絶えました」
早い、早すぎる……これは不味いことになりそうだ。
急いで手を打たないと……。
「ルカ!シガミを一刻も早くここに連れ戻すんだ!」
「なにそんなに慌ててんのよー?シガミなら大丈夫ーー」
『良いから僕の言うことに従え』
「な、何よ、そんなに本気になって……そんなに不味い相手な訳?」
「不味いのはもう一人の招かれざる客だよ。恐らくだけど、ルカ、君でも敵わない」
「そんな敵が……分かったわ……『瞬間移動』」
相手の感じから見て、攻撃さえ食らわなければ大丈夫だと思うんだけど……物理攻撃が効くかどうかなんだよね。それに魔法攻撃への耐性も持ってるかもしれないし。
どうすれば被害を最小限に抑えて、この招かれざる客を始末するか。
『マエダぁ……今……向かってるんだけど……シガミの魔力反応が……途絶えたようなの………』
魔力反応が……途絶えたって?それはつまり、殺されたってこと……か?
あの招かれざる客、人魂と出くわしたか……うぅ、ああああ!!!
「絶対に許さない、何があろうと、僕が、僕の手で必ず仇をとってやるから……ナァ!!シガミィイ!!」
『マエダ……あんたの気持ちは痛いほどよく分かるわ……でも落ち着いて!』
「落ち着けダトォ??何故ダァア!?……僕がどれだけあいつのことを……ルカ、お前なら分かるだろ?どれだけ悲しい感情で心が埋め尽くされているか!!感情に身を任せるしかないんだよおお!!」
『私が一番近くで見てきたんだから、よく分かるわよ。私はいつも、二番目……一番にはなれなかった。でもスラムが来てからは寂しさや劣等感が少し薄まった気がする。それでも埋まらない何かがあったのよ!勇気を出して言うわ!!マエダ!私は………あ…ん……たの……事が…』
「ど、どうしたんだよ?何があった!!シガミの次はルカまで僕から奪っていくつもりかぁ!!そうはさせないぞぉ……たとえこの迷宮の寿命が縮もうとも、たとえ僕が死んでも、僕に忠誠を誓ってくれた者達のためにもやるしかないんだ!」
『迷宮覚醒』
これは、ダンジョンマスター専用のスキルなんだ。ダンジョンマスターの僕、及びダンジョン内にいる僕に忠誠を誓った者を覚醒させる。
でも、このスキルの使用後の数時間後にダンジョンマスターに大きなペナルティが課せられる。全く、神様も悪趣味なもんだね。使えるのは一度だけ、まさにダンジョンマスターの切り札だよ。
あァ、だんダンと意識ガトンデイク……ヨウナ……シガミ……カナラズボクガヨミガエラセデヤルガラナァア!!!
「主人よ、その姿をシガミ様がご覧になられたらどう思うか……さぞ悲しまれますぞ……私どもは人間ではなく魔物、我が主人であるマエダ様により召喚された魔物でございます。故に暴走は起こらないのです。ですが主人は魔物ではなく人間、自らの覚醒による変化に肉体が耐えきれず破壊の限りを尽くす怪物になってしまわれた……怪物になられてもシガミ様の名を呼ぶとは……さぞ辛かったでしょうな」
『力が突然湧いてきて、何とか生きてるわよ!マエダ?……まさかあんた……アレを使ったんじゃないでしょうね?……うそでしょ……嘘って言ってよ……マエダ!』
『ウゥガァァァア!!!ジガミィイイイ!!ドゴダァァア!!』
『いやっ………いやよ……そんな、マエダ……置いてかないでよ……一人にしないでよ……一緒にいてくれるって最初に約束してくれたじゃん……その言葉に惚れて、忠誠を誓ったのに……どうして……どうしてなのよぉ!』
「ルカ様、とりあえず落ち着いてくだされ。自らを犠牲にし、我らを助けてくれた主人の恩を仇で返す気ですか!!」
「その声は白銀龍……ハク、分かったわ……私は逃げずに最後までシガミを殺った敵と戦うわ!」
「無論、我も参戦しますぞ」
「ぶるぶる」
「スラム様、そんなに震えて……なるほど」
「ぷるぷるっ!」
「なるほど、一緒に戦いたいのですな」
「ぷるっ!ぷるっ!」
「やる気が凄いですな。ですが、お気をつけて、相手はシガミ様を倒した輩ですぞ」
「ぷるぷる~」
『ぐぬぬぬ、人化の術を解いた、やはり元の姿が一番、力が出せる。それでは我の背中に乗るのだ。今宵は激しい宴が行われそうだな』
災厄の人魂に立ち向かうは迷宮主に忠誠を誓いし者達。




