35 招かれざる客・迷宮主2
サイクロップスとタイラントワームが倒された。
サイクロップスは鈍いやつだから分かるけど、タイラントワームが倒されたのには驚いたよ。
タイラントワームなんかが王国付近に現れたら、王国の精鋭部隊が動くレベルだよ。ギルドには緊急依頼として貼られ、ギルドに所属している冒険者は半強制的に参加させられてしまう。この緊急依頼を拒めば、ランクの降格処分もありえるんだよね。場合によっては王国からの追放等がある。
そんなレベルの魔物をこんな跡形もなく消し飛ばした上、迷宮の壁にこんなデカイ穴をあけるなんて、まったくどうかしてるよ。
「マエダ様!中層、最後の宝部屋に仕掛けてあった探知機に二体、反応がありました!」
やっぱり緑色のボール以外にも居たんだね。
じゃあ、録ってある映像を見てみようかな。
「マエダー?何見てんのー?」
「ルカか、例の魔物の映像だよ」
「へぇ~みるみる!」
おっ、食いついてきた、まあずっとマスター部屋じゃ暇だろうからね。
映像は無惨な物だった、サイクロップスがただ痛め付けられ殺されるだけの映像。サイクロップスをこんな感じに出来る魔物なんて上位、または上位になりかけている魔物くらいだよ。
「にしても見てて気持ちの良い映像ではないね」
「マエダー?タイラントワームが映ってるわよ」
そこには厚い扉を吹き飛ばすタイラントワームの姿があった。
「本当にこいつってば脳筋よね」
「人生で一度は扉をあんな風に壊してみたいよね。普通の人には出来ないことだけど」
「私は人じゃないからあれくらい出来るわよ?」
「見た目は可愛い女の子なのに、中身は別物だよ」
「褒めてるのか、貶しているのかわからないわ!なんかムカつく!」
「魔法特化のルカだったら、あれくらいの壁、吹き飛ばすことなんて余裕だよね」
「余裕過ぎて物足りないわよ、この迷宮内で私の魔法が収まりきるかどうか。迷宮内にいる下級魔物はまず生き残れないでしょうね」
このルカって女の子はこんな見た目で魔法に優れている。本気を出せば王国丸々一つを跡形もなく消し飛ばすことも可能な程に強い。
もう一人、僕の可愛い相棒と言うか、仲間が居るんだけど、何処に行ったかな?
『マエダ様ぁ?呼びましたかぁ?』
あ、居た居た、こいつがその言ってた可愛い相棒。
100年前に滅びたとされる蟲族の希少種、蟲神。
何で100年前に滅びたやつがここに居るのかって?忘れたの?僕はダンジョンマスター、DPを消費することによりあらゆるものを生み出すことが出来る。
蟲神がどれくらい強いか……簡単に言うと、魔王と普通に渡り合えるレベル。ランクはA+だけど、その強さは折り紙つきだ。
「君は相変わらずの美貌の持ち主だねー」
『褒めてもなーんにも出てきませんよぉ?』
蟲族は額にある触角が大きければ大きいほど強いとされている。まだシガミは……あっ、蟲神の名前ね、修行をあまり積んでいないから、触覚は小さい。まだまだ成長を隠しているやつなんだよね~!
「マエダー!黒い何かにタイラントワームが葬られたわよ」
「これは……ブラックシャドーかな?」
「ブラックシャドーにしては強すぎない?」
「それもそうだね」
そこに映っていたのは禍々しいオーラを放っている人影。
どんな光さえも飲み込むほどに暗く、深い。
「マエダー!この魔法どこかで見たことあるわよね」
「あぁ、この魔法……僕も何処かで見たことがある」
人影の右腕に集まる異常なまでの魔力。この魔力は空気中の魔素……僕のダンジョンの魔力だ。
最近疲れると思ってたけど、このせいか。
「マエダー……こいつ強いわ」
「分かってる、僕も見てたから」
人影から解き放たれた魔力はタイラントワームへとぶつかったが、それでも勢いと魔力は消えず、壁にぶつかりようやく消えた。
「マエダー、映像が止まったわよ?早く続きを見せなさいよー!」
「あれ?故障かな?こんなこと今まで一度もなかったのに……」
「直せないの?」
「コアに何かあったわけでもないし、何で止まるんだろう……」
さっきから、何かがおかしいなーーうっ……なんだこれ……。
『マエダ様ぁ?その人影、私に殺らせてはくれませんかぁ?』
く、苦しい……息が……体が動かせない……。
「別にいいんじゃない?シガミーならあれくらい余裕で倒せるでしょ?」
『余裕だけどぉ?』
「危険なものは早めに潰しておかないとね」
『それじゃあ行ってきますわねぇ『瞬間移動』』
「いってらっしゃーい」
何勝手に決めてくれちゃってるの?こっちはさっきまで死にかけてたっていうのに……まぁシガミなら間違いなく殺ってくれるだろうね。問題はこの不調の元凶である何かが手を出さないでくれればいいんだけど……。
胸騒ぎがする。ただの考えすぎなのかな?
兎に角、必ず生きて帰って来てよ、シガミ。君は大切な仲間であり、僕の人生のパートナーなんだから。




