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(本当の家)

 先輩の家は、ごく普通の会社員の一家だったらしい。

 子供は彼女一人で、両親との三人暮らし。家は団地の分譲住宅で、二階建てで小さな庭がついている。住所を聞いてみると、それは意外とぼくの家から近かった。

 ただし彼女に言わせるとその家は、

「魔女の協力者の家を間借りしているだけ」

 であり、

「二人はわたしの本当の親じゃないの」

 ということだった。

 その日は雨が降っていて、図書室には手からこぼれ落ちていくような雨粒の音が聞こえていた。先輩は階段から落ちたといって腕に包帯を巻いている。

「本当の親はどこにいるんですか?」

 と、ぼくは訊いてみた。

「別の星。ここからはずっとずっと遠くに離れたところ」

「何で先輩は地球に?」

「魔女の掟だからよ。ある一定の年齢に達すると、魔女の子供は親元を離れなくてはならないの、とても厳しい掟なのよ」

「本当の親のことは、今でも覚えてますか?」

「うん」

 と言ってから、先輩は何故だかひどく悲しそうな顔をした。

「とても優しい人たちよ。いっしょにいる時間は短かったけど、そのことはよく覚えてる。今でも時々、夢に見るくらいに」

「ふうん……」

 ぼくはその言葉に、ただうなずいておいた。人間の掟がそれほど厳しくなくてよかった、と思う。別の星になんかやられたら、ぼくなんて三日で死んでしまうだろう。きっと毒入りのチーズかなんかを、そうとは知らずに神に感謝しながら食べたりして。

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