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(ネズミのしっぽ)

 魔女ということで、彼女は当然ながら〝魔法〟のことについてもいろいろ聞かせてくれた。

「先輩はどんな魔法を使うことができるんですか?」

 ぼくが訊くと、先輩は少し考えてからおもむろに、

「魔法っていってもあんまり難しいやつは使えないの。わたしはまだ見習いの身だし、それに魔法を使うために必要な材料は手に入れにくいものが多いから……」

 ひとまずは、謙遜するように言う。

「でも、使おうと思えば使える?」

「…………」

 先輩は無言でうなずいてから、

「そうね、例えば簡単なものなら、〈嫌な人を追い払う〉魔法があるかな」

「それ、どうするんです?」

「嫌な人が来たら、その人に気づかれないように手の平に字を書くの。それを三度、相手に気づかれないようにやれば、その人を追い払うことができるのよ」

「へえ」

 ぼくはその魔法の使い道を考えてみた。授業中なんかに使えるかもしれない。

「他にも、〈水を苦くする〉魔法とか、〈人にしゃっくりさせる〉魔法とか」

「しゃっくり……?」

 あまり使い道はなさそうだ。

「上級者になれば〈雨を降らせる〉魔法や、〈好きな場所に暗闇を作る〉魔法なんかが使えるわ。〈作物を枯らす〉魔法とか、〈ネズミを操る〉魔法とか」

「面白そうですね」

 ネズミを好きにダンスさせられれば、動物プロダクションでやっていけるかもしれない。

「わたしは今、〈落し物を見つける〉魔法に挑戦してるの」

「便利そうですね」

「そのためにはネズミのしっぽが必要なの」

「ネズミのしっぽ?」

 どこかのゲームアイテムみたいだった。

「そうよ。だからわたし、学校に罠を仕掛けておいたの」

「学校に?」

「ええ。体育館裏の角のところに、毒入りチーズを置いといたの」

 彼女はにっこり笑って、そう言った。

 ぼくはしばらく返答に困っていたけれど、

「うまく捕まるといいですね」

 とだけ答えておいた。



 その日、体育館裏に行ってみると、そこには確かに黄色いチーズの塊が置かれていた。建物の角の、たぶん誰も来ないし、そこにそんなものがあるなんて気づきもしないような場所に。

 見た目からは分からないけれど、たぶんその黄色いチーズには殺鼠剤だか何だかが入れられているのだろう。

 ぼくはしばらくその小さな黄色い塊と、憐れなネズミのことについて考えていた。

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