12/22
(本当のところ)
今から考えると、彼女は〝魔女〟という呼び名について、自分から積極的に同化しようとしていた気がする。
そうして彼女は、世界と距離をとったり、口を閉ざしたり、冷たいまなざしを覚えるようになった。
彼女は魔女という押しつけられたキャラクターに自らを進んで重ねあわせていた。魔法の手引き書を持っていたり、自分で自分のことを魔女だと言っていたのは、そのせいだろう。
とはいえぼくがそんなことを思いはじめたのは、もうすべてが終わってしまってからだった。この時のぼくはやはり、ほとんどそのことを気にしてはいなかった。
だからこそ、先輩はぼくといろいろ話をしたのだろうし、ごく普通に接してもいたのだ。
ぼくは本当に、何も考えてはいなかった。
彼女がどうして自分のことを魔女だと名乗っていたのか。
けれど今思えば、それはたぶん――
そうでもしなければ、この世界の重みに耐えられなかったからだと思う。




