プロローグ
この作品は友達と共同制作です。と言っても私は文章だけで内容は友達が考えています。ですから物語がどう展開していくか分かりません。
私も書きながら読者と一緒に物語がどうなっていくか楽しもうと思います。
雷鳴が轟いた。
低く立ち込めた雷雲が昼の太陽を遮り、辺りを灰色に塗りつぶしている。時折閃く雷光に、丘の上の黒々とした二つの群衆が照らし出された。突如、静まったのを見計らって一人の騎兵が丘の上から角笛を響かせた。その音は薄暗い丘に異様に響き渡った。それに呼び掛ける様に、雨風に紛れて二つの群衆が騒めきだした。
「ロイド様!開戦の角笛が鳴らされました。ご命令を!」
「聞け!運命の笛は鳴らされた。我々の明暗を分ける戦だ!狼狽えるな!」
ロイド王子は馬に跨がり、槍を掲げた。
「血統高きロイドの名、ここで終わらせはせん!ガリア軍の真の力を見せつけてやれ!」
王子の言葉にさっきまで狼狽えていた兵士達の士気が上がった。
「うおー!!!」
「王子の前に生ける敵は存在せぬ!」
ロイドは槍を高く掲げた。
「兵力は五分!後は一人一人の力量だ!医療班を残して私に続け!」
王子は馬で駆け出し、兵士達は叫びながらそれに続いた。
「進め!進め!」
敵軍も突っ込んでくるのが見えた。王子は構わず馬を走らせた。そして敵軍との戦闘に入った。
「私の邪魔をするな!狙うは大将首!雑魚は退け!」
ロイドは鬼神の如き勢いで敵を薙ぎ払っていった。王子の槍は敵の鎧を貫いた。
「ロイド王子だ!奴を倒せば我が軍の勝利だ!全力で潰せ!」
「そうはさせん!王子を御守りしろ!」
しかし雨のせいで視界が悪く、双方とも手当たり次第に敵の兵士を斬っていくのに切り替わっていった。もう大将狙いも戦術も無い、乱戦、いや殺し合いである。敵を斬ったと思えば斬られと一進一退でしばらくつばぜり合いが続いた。いつしか辺りを夕闇が包み込んでいた。
「ええい…、これでは疲弊するばかりだ…」
ロイドは最初の勢いも無くなり、複数の兵士に足止めされていた。振り下ろされたサーベルと呼ばれる洋刀をロイドは槍で弾いた。そして出来た隙を素早く突き、槍で敵を貫いた。
「う、流石はロイド…」
敵が王子の気迫に圧倒され、たじろいていると敵を率いていたと思われる人物が突っ込んできた。
「退け!退け!ロイドを仕留めるのはこの俺だ!」
そいつは王子の前にいた兵士を、敵味方関係なく軽々と斬り捨てた。
「こいつ、両手剣を片手で…」
ロイドの言葉通り、人一人分あるかと思われる大きさの剣を、軽々と振り回していた。
「それでも王子か?ロイドの名が泣くぜ!」
敵は剣をロイドに向けた。
「うっ、こいつは私がやる。お前達は私の戦いを邪魔する者を斬れ!」
「はっ、承知しました!」
兵達はたじろいていた敵兵を斬りにかかった。王子の敵は剣を振り上げ、思いきり斬りにかかった。ロイドは槍で防ぐ体勢のまま、間一髪で脇へ避けた。避けられたかと思われたが槍は真っ二つになっていた。
「うっ…」
「いい切れ味だ。獣の血が騒ぐぜ…」
ロイドは槍を捨て、腰の短剣に手をかけた。
「この乱戦をあんな槍一本で戦い抜くつもりだったのか?笑わせる」
「あんまり喋ると舌を噛むぞ!」
ロイドは敵に突っ走っていった。
「抜刀せずに突っ込んでくるとは、愚か者が!」
敵は剣を横に構え王子を迎え撃つ。
「うおお!」
ロイドは敵が剣を振り下ろすよりも早く抜刀し、ロイドは敵が剣を振り下ろすよりも早く抜刀し、腹から胸にかけてを斬り上げた。
「ぐわぁ!」
敵は剣を落とし、片膝をついた。切り口からの出血と吐血とでロイドは返り血を浴びた。
「やってくれたな王子。でもまだ終わっちゃいねえぜ」
敵は剣を拾い再び体勢を整えた。ロイドも後ろへ下がり体勢を立て直した。
「まだくたばらんとは…、お前は人間か!」双方が走り出し、いよいよ剣が交わるかと思った時だった。何処からか矢が飛んできて、ロイドの右胸を貫いた。王子は前のめりに倒れた。敵は突然のことに唖然としている。
「・・・・・・」
「うっ…、誰がやった!」
敵は周りを見渡すがこの雨と乱戦で誰が放った矢か分かるはずもなかった。
「……だがここは、戦場だ。ここでは死だけが存在するのだ。さらば王子」
小声でそう呟き、振り返って大声で兵に命じた。「王子は死んだ!後はもはや烏合の衆に過ぎん!一気に畳み掛けろ!」
敵兵達の士気は一気に上がり、逆に王子を失った軍は突然の事に成す術が無かった。王子の代わりに、臨時の指揮官が撤退を命じた。だが敵はまだ攻め続ける。そして次第に戦場は紅く染まり、雨は小雨に変わっていった。
王子の死に場所は静まり返り、雷鳴だけが寂しく鳴り響いていた。その一筋の光はまるで王子を天へと導く印のようだった。