人間界 グラネレオス
フェリアにつれてこられた部屋はいかにも王様がいる部屋ってところだ。
目の前には少し高くなったところに二つの椅子があり、
椅子には40歳半ばの男女が座っている。
その両脇には俺たちと同年代の女の子が二人立っていて、部屋の周りには鎧に身をまとった兵士がずらっと並んでいる。
「おぉ~。よく来てくれた。異世界からの勇者たちよ」
金髪で髭を生やし、澄んだ青色の瞳でいい感じのナイスガイ、そして体躯もよく赤ローブを羽織った男がいった。
「私の名は【アレックス=カイザー】。人間界であるここ【グラネレオス】を統治し、民の平安と世界の平和のために尽力を尽くしておる。」
「まずはここに来てくれてありがとう。こっちにいるのが妻のマリアだ。」
長い茶髪のロングヘアーに茶色い目で薄ピンク色のドレスを着ている【マリア=カイザー】が頭を下げた。
「私の横にいるのが長女のリーナで、妻の横にいるのが次女のラミア」
すらっとしたナイスボディに金髪のセミロングで目は茶色の第一皇女が【リーナ=カイザー】。皇妃と同じで茶髪のロングヘアーで青色の瞳のあどけなさが残っているのが【ラミア=カイザー】である。2人ともが美少女と言って間違いない美貌を兼ね備えていた。
クラスの男子のほとんどが2人の美貌に骨抜きとなって口をあんぐり開けてボーッと見つめていた。
「うおっほん!!王様!!私たちはこれからのことを聞きにこちらに参りました。お話を聞かせて頂いて宜しいでしょうか」
岡本の咳払いに男子が正気に戻す。
「おぉ。そうっであったな。フェリアから話は聞いておると思うが、事態は急変しつつある状況である。急にこちらの都合で呼び寄せてしまって本当にすまないとは思っているのだが、我々には力が圧倒的に足りない。民を…人間界と妖精界を救うためにはお主たちを召喚するしかなかったのだ。」
「力が圧倒的に足りないといっていますが、魔族の攻撃を防げるほどの力と魔王を倒しているんですよね?僕たちは必要ないんじゃないでしょうか。」
頭脳明晰の秋山が皇王に問う。
「確かにお主の言う通りだ。だが魔族の攻撃を防いだのは妖精族であり人間界の力ではない。」
「妖精というのは加護や防御、祈りなどを得意としてしていてこの分野に関しては種族一なんです。前回の襲撃には私たちの力を使い何とか防ぐことができたのですが…」
フェリアが答える。
「防戦一方ではいつか必ず突破されてしまう。今こちらには戦う戦力が著しく少ないのが現状だ。勇者は身体能力が高くさまざまな高等魔法も使うことができたのだが…亡くなってしまった。魔王を倒せたのはいいが魔界のものは人間界のものよりもはるかに戦闘力が高いのだ」
皇王はがっくりと肩を落とす。
「皆様には本当に申し訳ないと思っております。ですが古文書によれば異世界から来られた皆様はこちらの世界の常識では考えられないほどの力をもっておられるようなのです。どうか、どうか…この【グラネレオス】と【ピアニリカ】を救ってくださいませんか…。」
第一皇女のリーナが涙を流しながら発した言葉に全員が黙る。
ちなみに【ピアニリカ】というのは妖精界のことである。
男どもが落ちた。
「おい!こんなに困ってるんならいっちょやってやろうぜ」
「そうだな!!特別な力があるっていうならできるかもしれないしな」
クラスの男子の大半がやる気に満ち溢れていた。
「ちょっと待ってよ。そんないきなり言われても私たちはただの高校生だよ。何があるかわからないのに危険だよ」
「そうだぞ。お前ら家に帰りたくねーのか?それに色気に負けてんじゃねーよ」
美少女の代表山本と残念イケメンの青島がみなをなだめる。
「ひっく…ひっく…ごめんなさい。。。でも本当にもう皆様に頼るしかなかったんです。。。ごめんなさい。。。。」
第二皇女のラミアが泣きながら謝ってくる姿はどうしようもなくいとおしく、胸を鷲掴みにされたようにきゅぅっとなった。
「帰る方法は現段階ではないんだし…、ここで生きていくためにも戦うしかないんじゃないかな」
「進…。そうだよね。もうなるようにしかならないよね。」
秋山と吉永が第二皇女の涙に負けた瞬間だった。
というよりほぼ全員がラミアの涙に心を動かされていた。
なんという魔性の女だ。
「しょうがないわね。全員とりあえずこの世界で生きていくために頑張るってことでいい?」
委員長の岡本が訪ねると
「おぉ~」と声がこだまする。
皇王がしてやったりとニヤついたのと同時にフェリアは表情を暗くしていたのを俺は見逃さなかった。
こいつら単純だな。戦うってことは命の危険もあるってことわかってんのか?それにどうもこのカイザーってのなんか企んでるぞ。
だがしかし、そんなことはどうでもいい。
これから異世界の冒険が始まろうとしているんだ!!ワクワクしないオタクなんていないだろ!!
轟 真はこれから起こる大冒険と自分にどんなすごい力があるのか楽しみで仕方がなかった。ある意味一番冷静からは遠い存在かもしれない。
「皆…本当に有難う。心より礼を言わせてもらう。皆はすでにこの国にとっては勇者だ。この城を拠点にまずは戦い方を覚えてもらうことになる。」
皇王が沸き立っている俺たちにそういうと兵士数人がクラスメイト一人一人にブレスレットを渡し始めた。
「私は兵士教育担当の【ライト=ベル】。これから君たちに戦闘を教えていくことになるので覚えておいてくれ。今渡したブレスレットは【ヴェリテリング】といって己の状態がわかるといった代物だ。簡単に言うと己の身体能力や特技、現在の職業などがわかるということだ」
金髪で単発、身長170ぐらいで20歳前後の優しそうなイケメンが全員に向かってそう説明した。
【ヴェリテリング】は真実の腕輪とも呼ばれているものであり、
銀色の装飾にまん丸の青い石がはまっている。
ライトの話によると念じるだけで自分の能力値が見ることができるらしい。
「わたした【ヴェリテリング】を付けて自分のステータスを観てみてくれ。【職業】と【職位】、【称号】や【スキル】などが観れるはずだ。」
ライトの話を聞いて全員がワクワクしながらリングをはめた。
もちろん俺もワクワクしている。
とうとう異世界にきて最初の大イベントに突入したんだから。
俺が読んできたラノベの世界だとだいたい全員がチートで半端ない強さを持ってた。
もちろん俺にもその可能性があるんだから!!!
「うぉー!!やったぜ!!俺が【勇者】かもしんねー!!」
青島が叫んだと同時にみんなが驚いたようなような表情をしている。
「青島も?僕も【勇者】かもしれない」
えッ?秋山もなのか。
「私も勇者かもだよ?」
山本も続く。
「いったいどういうことだ?みんなどんな風にかいてあるんだ?」
ライトが全員に問うようにきいてきた。
どうやら自分で確認できるステータスをすべて他人に見せることはできないらしい。任意で見せたり見せなかったりできるところはあるようだが。
だいたいのクラスメイトのステータスはこのようになっているらしい。
■ステータス■
名前 :青島 大輔
職業 :(仮)勇者
職位 :見習い
称号 :異世界から来た見習い勇者
魔法 :光、火、水、風、土、雷
スキル:勇者の資質、身体強化、対魔法防御
装備 :制服
どうやらチートスペックらしい。通常魔法使いは貴重らしく、すごい優秀な人材でも3つが限界とのことだ。特に【光】と【闇】属性の適正者は本当に貴重らしいのでクラス全員がこのステータスというのが素晴らしいと兵士たちがうなっている。まぁ確かに俺のクラスは進学クラスで全員頭がいい。秋山を筆頭に全員が国立を狙えるレベルなのは理解していたが…これほどとは。ちなみに俺はすでに不登校の負け組なので勉強はそこそこできるがここまでレベルが高くないのである。少数精鋭のクラスなので25人と少なめのクラスだがそれにしてもできすぎなんじゃないか?なんでも来いって感じだろ(笑)
みんな一緒なら自分も変わらないだろうと思いながらステータスを確認してみた。
■ステータス■
名前 :轟 真
職業 :魔王
職位 :タマゴ(孵化すらしていません)
称号 :異世界から来た魔王のタマゴ
魔法 :無
スキル:身体超強化、対魔法体質、
装備 :制服
絶句した。