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可愛らしい壊れた少女(三国なんかには勿体無いわ)

梓side

一目見た時、儚くて美しいと思った彼女は、

「この馬鹿男!彼女が居るなら教えなさい!修羅場になるでしょう!」

死神と恐れられる三国を面と向かって馬鹿男と罵り、とんでもない勘違いをしてくれた気の強さとその精神の壊れ具合故に、三国に囚われることになるのだろうと悟った。

歪で壊れた美しい少女は狂った殺人鬼に狂愛される。



「自殺、ねえ…」

「そうなんだあ。気紛れで仕事帰りに寄った廃墟ビルで、いい拾い物をしたもんだよ」

「私は紗綾ちゃんが哀れに思えるわ。あんたみたいなのに捕まったんだもの」

お茶を淹れてくると言って席を立った紗綾ちゃんは、三国の我儘な要望に応えてちょっとしたお茶菓子を焼いている。

先にお茶を淹れた後にいそいそとエプロンを着けだした紗綾ちゃんに断ってもいいのだと言ったのだが、

「私は此処に置いてもらっている身ですし、契約もしましたから」

契約って何、と聞こうとしたが紗綾ちゃんはすっと顔を逸らしてキッチンへ向かったし、三国もにこにこと読めない笑顔を浮かべて教えてくれようとはしない。

代わりに紗綾ちゃんを拾った場所や理由を根掘り葉掘り聞いて、三国は紗綾ちゃんにベタ惚れしたのだろうと気が付いてしまった。

あの対応は三国の好みにどストライクだ。

気が強くて、どっか壊れていて、負けん気が強いのに儚い女の子。

紗綾ちゃん以上はなかなか居ないだろう。

「三国はさ、紗綾ちゃんを殺すつもりなんてこれっぽっちも無いでしょう」

「やっぱりばれたか」

悪気なくケタケタ笑う顔を無性に殴りたい。

「お前ら二人以外には見せないように囲い込むよ。死にたいなんて思う時間すら無くすほどデロデロに溶かして慈しんで甘やかして愛しんで、俺だけしか考えられないように調教してあげる」

「どこまでも真っ直ぐに歪んでるわね」

矛盾してるじゃん、と笑う顔に浮かぶのは純粋なまでの愛情と異様と呼べる執着。

きっと紗綾ちゃんは狂気にも似た愛情を一身に受けて、溺愛されていくのだろうと簡単に想像できた。

昔からの付き合いで、こいつの執着心が半端なものではないと知っているから。

一度執着したら手に入れる為にどんな手段でも用いるし、手に入れたら決して離さずに手元に置き続ける。

紗綾ちゃんはそんなとんでもない男に囚われてしまったのだ。

「紗綾ちゃん。本当にきつくなったら助けてあげるけど、三国からは逃げられないと思うよ…」

どれだけ死にたいと願っても、きっと三国は彼女を死なせることなんてしない。

息も付けない程の愛情で溺れさせられて、身も心も全て三国に絡め取られているだろう。

そして紗綾ちゃんもまた、三国を拒むことはできないだろう。

彼女のように壊れた人間は、どこまでも純粋に自分を求めてくる、甘い蜜のようで苦い毒でもある愛情に弱い。

受け入れることしかできない。

「まあ、ある意味幸せか」

何処か壊れた少女を溺愛する狂気の殺人鬼。

何本でも小説が書けそうなネタだと笑みを浮かべて、出された熱いお茶を啜った。

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