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第三話

とりあえず投稿。

修正・加筆の可能性大です。

※2015/7/10 蓮の料理LVのスキルを6→5に修正

※2015/7/10 ユニークスキルに無詠唱・MP使用効率上昇を追加

 ひんやりとした心地よい風を頬に感じ、俺は暗い闇の中から徐々に意識を取り戻していく。

 ぼんやりとしながら耳を澄ますと、近くから水の流れる音や草木の葉擦れの音が聞こえてきた。どうやら今自分がいる場所は、水辺に近い草原のような所みたいだ。

 まどろみながらそんな事を考えていると、小鳥のさえずりに混じって聞き覚えのある声が俺の耳に届いてきた。


「…ねえ蓮!起きてってば蓮!」


「…ん、この声は…七海か?」


「蓮!良かった!」


 七海が安堵の表情を浮かべると俺の首に腕を巻きつける様にして抱きついてきた。顔にマシュマロのような柔らかい何かが当たる。あれ、七海ってこんなに胸でかかったっけ…。


「…く、苦しい七海」


「あっ!ご、ごめん!」


 七海は慌てながら俺から勢い良く離れ、顔を赤くしてモジモジしている。


 辺りを見回してみると、予想通りここは森から近い湖畔のようだ。

 俺はまず、先程のルクレティアとのやりとりが夢か現実か確かめる為に、頭の中でステータス表示と念じてみた。


******************************


レン イチノセ 18歳 男 レベル:1


職業:シェフ 魔法適正:全属性


HP:330(+300)

MP:300(+300)


筋力:112(+100)

体力:110(+100)

器用:118(+100)

敏捷:110(+100)

魔力:100(+100)

耐性:100(+100)


スキル


・料理LV5


サブスキル


・鑑定LV10・隠蔽LV10・生活魔法LV10


ユニークスキル


・マジックボックス・異世界言語・成長速度上昇・成長率増加・MP使用効率上昇・MP回復速度上昇・無詠唱・調味料練成


加護


・食神の加護・戦神の加護・魔法神の加護


******************************


 …やはり夢じゃなかったか。

 それにしても色々と増えてるな。確か俺の元々のHPが30だったはずだから、括弧の中は能力を底上げしてもらった分の補正値って事か。そういえば鑑定って他人のステータスも見れるんだよな。という事は七海のステータスも見れるか?

 そう思い俺は七海に意識を向けて鑑定と念じてみた。


******************************


ナナミ スズハラ 18歳 女 レベル:1


職業:シェフ見習い 魔法適正:全属性


HP:320(+300)

MP:300(+300)


筋力:108(+100)

体力:108(+100)

器用:112(+100)

敏捷:112(+100)

魔力:100(+100)

耐性:100(+100)


スキル


・料理LV2


サブスキル


・鑑定LV10・隠蔽LV10・生活魔法LV10


ユニークスキル


・マジックボックス・異世界言語・成長速度上昇・成長率増加・MP使用効率上昇・MP回復速度上昇・無詠唱・調味料練成


加護


・食神の加護・戦神の加護・魔法神の加護


******************************


 見れちゃったよ…。

 それにしても七海にもちゃんと能力の補正と加護を付けてくれたんだな。まあ素の状態で魔物と遭遇なんてしたら普通の女の子なんて一発でアウトだからな。その辺は感謝しておくか。


 俺が心の中でルクレティアに感謝していると、七海が不安そうな顔で俺に話しかけてきた。


「…ねえ蓮。ここどこだろう。私達どうなっちゃったのかな?」


 そこで俺はルクレティアとのやりとりを七海に説明する。ちなみに七海にも人並み外れた料理の才能がある事は隠しておく。もしそれで慢心して修業を怠るような事になったら元も子も無いからな。


「…つまりここは異世界で、この世界の食文化のレベルを上げろって事?」


「そういう事みたいだな」


「…何それ」


 …やっぱり普通は怒るよな。理由はどうあれ地球から無理矢理異世界に召喚されたんだ。でもルクレティアは戻る事も出来るって言ってたし、どうせなら七海だけでも地球に戻してもらうか。そういえばルクレティアとコンタクトする時ってどうすればいいんだ…。

 だが俺のそんな心配を他所に、七海が嬉しそうに口を開いた。


「何それ楽しそう!」


 ええ…、何だかこの子物凄い乗り気だよ…。まあ俺も一人だと心細いし、七海がいてくれた方が助かるけど…。


「いや、乗り気なのはいいんだけどおじさんとおばさんの事はいいのか?学校だってあるんだし」


「大丈夫だよ!だってこっちと地球では時間軸が違うんでしょ?それに蓮と一緒なら私はそれだけで…嬉しいし…」


 最後の方はよく聞き取れなかったが、まあ七海がそう言うなら無理に地球に戻す事もないか。



****



「とりあえずここを生活拠点にしよう」


「マジックボックスの中に水蓮亭が入ってるんだっけ。でも本当にそんな事出来るのかしら」


 マジックボックスの使い方がわからなかったので試しに鑑定を使って調べてみた。すると事細かに使い方の説明が表示されたので案外すんなりと理解出来てしまった。さすがLV10。


 まず頭の中で「リスト」と念じると目の前にステータスボードに似たボードが現れた。そして指で触れてみると上下にスクロールする。まるでi○adの様だ。


 種類ごとにタブで分けられているので、試しに武器のタブを選択して上から下にスクロールさせてみる。すると所々にとても仰々しい名前の武器が見て取れた。試しにその中の一つを選択してみる。


******************************


魔剣ダーインスレイブ レアリティ:SSR


種類:刀剣(呪い)

攻撃力:5000

付与属性:闇

必要レベル:300


説明:歴戦の勇者達を屠った伝説の神具。一振りすれば海は割れ空は裂け大地を砕く。


******************************


 いやいやいや!やばいでしょこれ!というか神具って何よ!まあ必要レベルが300って事はどの道今は装備は出来ないって事なんだろうけど…。

 とりあえず今のは見なかった事にして、アイテムのタブを選択しスクロールしてみる。水蓮亭水蓮亭…っと。お、あったあった。


******************************


水蓮亭 レアリティ:SR


種類:建築物


説明:異世界の大衆食堂。


******************************


 …凄いな、うちの店ってレアリティSRかよ。まあこの世界の文明レベルからしてみればそうなるのも当たり前なのか。


 ちなみにアイテムを選択して「登録」と念じると所有者が固定され、他人のマジックボックスには収納出来なくなるらしい。盗難防止用の措置ってやつかな。

「解除」と念じると所有者情報が消去されるので、任意で解除する事も可能だ。とりあえず水蓮亭と危なそうなアイテムは所有者登録しておこうかな。



 水蓮亭と危険そうなアイテムの所有者登録を終え、次はいよいよ水蓮亭をマジックボックスから出してみる作業だ。


 アイテムを出すときはアイテムを選択し「展開」、逆にしまう時はアイテムに触れながら「収納」と念じるらしい。アイテムを展開する場所は目視出来る範囲で任意に決められるみたいだ。

 ちなみに他人が触れている物も収納は出来ないらしい。衣服とか装備品とかだな。確かにそんな事が出来てしまったら俺は真っ先に変態の烙印を押されるだろう。


 湖畔の近くに地面が平らな場所があったので、その場所に意識を集中し水蓮亭を選択したまま展開と念じてみる。すると一瞬でその場所に見慣れた水蓮亭が姿を現した。その光景を見て七海が唖然としている。


「…間違いなく水蓮亭ねこれ」


 ステータスやマジックボックスの説明は予めしておいたが、本当に建物が丸ごと一軒出てきた事に目を真ん丸くしている。俺だってビックリだ。


「これで雨風は凌げるな」


「…そ、そうね」


「とりあえず中に入ろう…ん?」


 水蓮亭の引き戸に手を掛けた次の瞬間、草むらの方からガサガサと音が聞こえた。

 恐る恐る音のする方向を見てみると、猪のような姿をした生き物が鼻息を荒くしながらこちらを睨んでいる。だが俺の知っている猪とは何かが違う。うん、でかい。とにかく凄くでかい。


「ね、ねえ蓮。あれってもしかして…」


「もしかしなくても魔物だろうな…」


 次の瞬間体長2メートルはありそうな猪らしき何かがこっちに突進してきた。俺は咄嗟にリストを開き、使えそうな武器を探してみた。


******************************


青銅のナイフ レアリティ:C


種類:短剣

攻撃力:10

付与属性:なし

必要レベル:1


説明:何の変哲も無いただの青銅製のナイフ。


******************************


 よし、これなら使えそうだ。それにしても説明が随分適当だな。

 右手に意識を集中して展開と念じてみると、緑青色のナイフが姿を現した。


「七海!離れてろ!」


「う、うん!」


 猪との距離は凡そ10メートル程。俺はナイフを構えて猪の突進に備えた。だが俺はそこでふと違和感を覚える。猪の動きがとても遅く感じたのだ。


(これってもしかして能力補正のお陰なのか?)


 俺は猪の突進をサイドステップで軽々と避け、すれ違い様に猪の首をナイフで切りつけた。


「ブモォ!?」


 猪が素っ頓狂な声を上げたかと思うと、その首が血飛沫を撒き散らしながら上空を舞った。

 いやいや、これ何の変哲もないただのナイフでしょ?明らかにオーバーキルなんですけど…。


 ドスンと音を立てて猪の首が地面に落ちる。こりゃ明日の飯は猪のフルコースかな。そんな事を考えながら七海の方を振り返ると、七海の後ろからもう一匹猪が突進して来ているのが見えた。


「しまった!七海、危ない!」


「えっ!?」


 気付いた時は既に七海と猪の距離は5メートル程まで縮まっていた。


「ブモォォォォ!!」


「きゃーーーー!!」


 すると七海は振り向き様に猪の眉間に右ストレートを打ち込んだ。それは腰の入った見事な一撃だった。


「ブモォォォォォ!?」


 七海の渾身の一撃を受けた猪は地面と平行に10メートル程吹き飛ばされ、ドォン!と言う音と共に岩に激突してそのままピクリとも動かなくなった。


「…七海、大丈夫…みたいだな」


「…え?何あれ…私がやったの?」


 それは異世界生活初日にして、俺達が軽く人間を辞めた瞬間だった。

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