第二話
とりあえず投稿。
修正・加筆の可能性大です。
「…ん」
ふわふわとした感覚に違和感を覚え、俺は徐々に意識を取り戻していった。辺りを見回してみると真っ白な景色がどこまでも続いている。ここはもしかして死後の世界というやつだろうか。…そうか、俺はあのゲートにのような物に吸い込まれてそのまま死んでしまったんだな…。
「いいえー死んでませんよー?」
俺が自分の身に起きた出来事を整理していると、どこからか随分と間延びした声がどこからか聞こえてきた。だが辺りを見回してみるが人間らしき影は見当たらない。するとその時、俺の頭上から直径30センチ程の白い光を放つ球体がふよふよと目の前に降りてきた。
「うわッ!何だこれ!」
「あらー驚かせてしまいましたかー?ごめんなさいねー」
「いや、驚くだろ普通!というかここどこだよ!」
「えーとですねー。うーん、何から説明したらいいでしょうねー?」
「いや、それを俺に聞かれても…」
緊張感の欠片も無いその球体の言葉を聞いて、何だかどっと疲れが押し寄せてきた。そして意識が完全に覚醒したところで、俺は一緒にゲートに吸い込まれた幼馴染の事を思い出した。
「…そうだ!七海!七海は!?」
「ああー、一緒にいた女の子なら無事ですよー」
「そ、そうか。それなら良かった…」
「ごめんなさいねー。本来なら呼び出すのは貴方だけの予定だったんですけどーちょっと力加減を間違えちゃいましたー。テヘペロ」
…この球体、今テヘペロって言葉にして言いやがったな。それにしても呼び出すってどういう事だ?
「では順を追って説明していきますねー。簡単に言うと、貴方には私が管理する世界に来てもらいましたー。ちなみに私達が今いる場所は俗に言う神界って所ですねー」
…マジかよ。異世界ってラノベとかでよくあるやつだよな。しかも神界って事はもしかして…。
「えっと…もしかして、君って神様か何か?」
「その通りですー。お察しの通り、私はこの世界、ファリスフィリアで食神をやってるルクレティアと申しますー。本来の姿でご挨拶出来たら良かったんですけど、召喚に力を使い過ぎちゃって、こんな姿でごめんなさいねー」
…やっぱりか。しかも食の神様かよ。
料理人としては食の神様と出会えて喜ぶべきシーンなんだろうけど、何というかイメージとかけ離れ過ぎてて全く感動できない…。
「…それで、何で俺はファリスファリアとかいう世界に呼び出されたんだ?」
「えっとですねー、簡単に言うと貴方にこの世界で料理を作ってほしいんですー」
ルクレティアの話はつまりこういう事らしい。
ファリスフィリアは地球で言うところの中世程度の文明の星だそうだ。だが地球と大きく異なるのは、魔法が存在する所謂ファンタジーの世界だという事だ。
地球と同様に国ごとに様々な食文化があるみたいだが、そのレベルが地球に比べてかなり低いらしい。そこで地球で料理人をやっていた俺に、ファリスフィリアの食文化のレベルを底上げしてほしいとの事だ。
「なるほどな。でもそれならルクレティアが地上に降りて直接手を施せばいいんじゃないか?」
「それが出来ないから貴方を呼んだんですよー。神の力は強すぎるので、直接世界に介入すると色々と問題が起きるんですー」
「そういうもんなのか。というより、それなら俺じゃなくてもよかったんじゃないか?地球には俺より腕の良い料理人なんて五万といるぞ?」
「期待値込みで貴方を選んだんですよー。貴方の料理の才能は地球人の中でもトップクラスでしたからねー」
…この人今凄い事実をさらっとカミングアウトしたな。それにしても地球でトップクラスか。嬉しいような聞きたくなかったような…。
「それに一緒に来た彼女も、貴方程じゃないですけど凄い才能を持ってますよー。才能だけで言ったら日本で十本の指に入るくらいですかねー」
「そうなのか。七海ってそんなに凄かったんだな。確かに料理学校に通い出してから急激に料理の腕前が上がったな」
「貴方が言うと嫌味に聞こえちゃいますけどねー。それでどうしますかー?嫌なら元の世界に戻す事も出来ますけどー」
「うーん…。興味深い話だけど、俺はこれでも一応料理店を構えてるんだ。親父から受け継いだ店だから、出来れば地球でその店を守っていきたいって思ってる」
「それなら大丈夫ですよー。お店ごと召喚しましたからー」
「…はい?」
「心の中でステータス表示って念じてもらえますかー?」
ルクレティアに言われた通りに俺は心の中でステータス表示と念じてみる。すると目の前に長方形の形をした半透明のボードが現れる。
******************************
一之瀬 蓮 18歳 男 レベル:1
職業:料理人 魔法適正:なし
HP:30
MP:0
筋力:12
体力:10
器用:18
敏捷:10
魔力:0
耐性:0
スキル
・料理LV5
サブスキル
なし
ユニークスキル
・マジックボックス
加護
・なし
******************************
こ、これは…。ステータスとかスキルってまさにファンタジーの世界だな…。
「見れましたかー?ちなみにステータスボードは基本的に他の人には見えないので安心してくださいねー。鑑定持ちの人だったら話は別ですけど、隠蔽のスキルがあれば隠せるのでー」
「ふむふむ」
「それで、マジックボックスっていうスキルがあると思うんですけど、それを使うと異次元に繋がって色んな物を出し入れ出来るようになるんですー。お店もその中に入れておきましたー」
「建物一軒丸ごと収納出来るって凄いな…」
「異次元の中は時間という概念が無いので、食材の保存にも使えますよー。ただ使うには魔力が必要なので、あとで魔力も増やしておきますねー」
魔力を増やすってそんな事も出来るのかよ…。まあ異世界の神様だしそれくらい出来るんだろうな。でも半永久的に食材の保存が出来るって、料理人としては物凄いチート能力を手に入れた気分だ。
「つまりその力を使えば好きな時にお店を出せて、色んな場所で料理屋さんが出来るって事なんですー。これって結構凄い事だと思いませんかー?」
確かにルクレティアの提案は魅力的だ。この能力があれば世界中の様々な人に料理を振舞う事が出来る。料理人として、一人でも多くの人に自分の料理を食べてもらえる事はこの上ない幸せだ。
だが俺には懸念している事がもう一つだけあった。七海と七海の家族の事だ。
俺は七海と家族ぐるみの付き合いをしていたし、親父が死んでからも七海の両親には色々と世話になっている。だからもし俺と七海がファリスフィリアで生活する事になっても、七海の両親に俺達が居なくなった事を心配してほしくないのだ。
「それなら大丈夫ですよー。ファリスフィリアは地球と時間軸が違いますからねー」
「というかさっきから人の心を勝手に読むなよ!そんな事も出来るのかよ!」
「うふふー、これでも一応神様ですからねー。それで今の話なんですけど、つまりはこっちで10年過ごしたとしても、戻ろうと思えば地球で召喚された時間に戻る事も出来るんですー」
「なるほどな。それなら俺たちが行方不明になって騒ぎになる心配も無いって事か」
「そういう事ですー。どうでしょうかー、これで全ての懸念材料は無くなったのではないですかー?」
「…た、確かに」
「じゃあ私のお願い聞いてくれますかー?」
気付けば話は完全にルクレティアのペースだった。というかそもそも相手は神様だ。言い合いをしたところで勝てるはずが無い。これはいよいよ覚悟を決めるしかなさそうだな。
「…わかったよ。俺にどれだけ出来るかわからないけど、やるだけやってみる」
「うふふー。きっとそう言ってくれると思ってましたよー」
「それと一つお願いがあるんだが、好きな調味料を精製する魔法とかって使えるようにならないかな?食文化のレベルが低いとなると碌な調味料も無さそうだしな」
「わかりましたー。じゃあそのスキルも増やしておきますねー。あとは一応魔物とかもいるので、身体能力の底上げもしておきますー」
「うげ…。やっぱり魔物とかもいるのかよ…」
「はいー。後で戦神や魔法神にも加護を付けてもらうようお願いしておくので、まあ鍛えればその辺の敵にはやられないと思いますよー」
「戦神に魔法神…ますますチートっぽくなってきたな。でも何だか少し面白そうになってきたな」
「うふふー、きっと楽しんでもらえると思いますよー。それと必要そうな物は全部マジックボックスの中に入れておきますからねー」
「それは助かる。さすがに着の身着のままで知らない土地に落とされたらたまったもんじゃないからな」
「一方的に呼んでしまいましたし、それくらいはさせてもらいますよー。ではそろそろ私も活動限界なので、ぱぱっと下界に下ろしちゃいますねー。一緒に来た彼女は先に地上に下ろしてあるので、事情は貴方から説明しておいて下さいねー」
「なんて無責任な…。まあわかったよ」
「次に会う時はきちんと本来の姿で現れますからねー。これでも私結構美人なんですよー?惚れちゃダメですからねー」
「ああ、はいはい…」
「もーつれないですねー。じゃあいきますよー。準備はいいですかー?」
「オーケー、いつでも大丈夫だ」
俺がルクレティアに合図を出すと、目の前の球体から眩い光が放たれた。
そして次の瞬間、俺の意識は再度ブラックアウトしたのだった。
※2015/7/10 蓮の料理LVを6→5に修正
※2015/7/14 一部誤字を修正