第十四話
商業ギルドに行ったり不動産屋に行ったりする話。
修正・加筆の可能性大です。
翌日。
宿を出た俺達は商業ギルドへ向けて歩を進めていた。
詳しい場所は昨日ガイラムから聞いておいたが、冒険者ギルドからそう遠くない位置にあるらしい。
「えっと、この角を曲がって…と。お、あったあった」
「何だか冒険者ギルドと違って小奇麗な建物だね」
「冒険者ギルドは荒くれ者の巣窟という感じだったからな」
視界に入った商業ギルドの建物は白いレンガ造りで、入り口の前には植え込みがあり綺麗な花がたくさん植えられている。一見、上流階級の人間のちょっとした豪邸といった感じだ。
中に入ってみると正面が受付カウンターになっており、手前のスペースでは商人風の人間がテーブル席で談笑や商談などをしていた。
俺達はそれを横目に受付カウンターへと進み、眼鏡をかけたロングヘアーの妙齢の受付嬢に声をかけた。
「すみません、受付はここで大丈夫ですか?」
「はい、ここで大丈夫ですよ。ご用件は何でしょうか?」
「この街で料理店を開きたいのですが、許可をもらいたいと思って」
「飲食店の出店許可ですか。失礼ですが、会員ランクは何でしょうか?」
「まだ登録はしてないんですけど、商業ギルドの会員にもランクがあるんですか?」
「はい。では簡単にご説明しますね」
そう言うと受付嬢は商業ギルドについての説明を始めた。
受付嬢によると、商業ギルドには下からアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドの順に六段階のランクがあるらしい。
屋台といった露店形式での営業ならアイアンランクから可能だが、不動産となる建築物での営業となるとブロンズランク以上の会員にならないといけないという。
ちなみに飲食店はランク毎に席数が決まっていて、ブロンズランクの飲食店は五十席以下での営業を義務付けられているそうだ。ランクが上がる毎に席数の制限も緩和され、その店の格式も上がるらしい。
プラチナ、ダイヤモンドランクともなると貴族御用達の店がほとんどだそうだ。飲食店のランクって、何だかミシュ○ンのアレみたいだな。
ちなみに上納金として、ひと月に売り上げの二割を商業ギルドに収める決まりとの事だ。
「アイアンランクからブロンズランクに上がる為の条件は?」
「露店販売での営業成績等を考慮し、商業ギルドが昇格可能と判断した場合にブロンズランクへ昇格となります」
「なるほど。ちなみに特例でブロンズランクからスタート…みたいなのは出来ないですよね?」
「…申し訳ありません。規則となりますので」
「ですよねぇ…」
五十席以下の飲食店という事なら、ブロンズランクでも水蓮亭での営業は可能だ。
最低でも何とかブロンズランクになれたらと思うが、他の商人の手前我侭も言えないか。
「一応これを預かってきたのですが」
「この印章は…ガイラム様のものですね。少々お待ち下さい」
ガイラムからもらった手紙を受付嬢に手渡すと、受付嬢はパタパタと職員用らしき部屋の中へと入って行った。そして暫く待っていると、その部屋の中から白い髭を蓄えた物腰の柔らかそうな男性が現れた。年齢はガイラムより少し上くらいだろうか。
「お待たせして申し訳ない。ガイラム殿の手紙を持って来られたのはお主達かのう?」
「はい、俺達です」
「ふむ…その若さで料理店を開きたいとはのう。おっと、紹介が遅れたわい。ワシは商業ギルド、リムドガルト支店長のシェパードじゃ。宜しくの」
「ご丁寧にありがとうございます。俺はCランクの冒険者でレン イチノセと言います。後ろの二人は俺の仲間でナナミとアイシャ、共にCランクの冒険者です」
「ほほう、その若さでCランクとは。料理店など開かずとも、冒険者として大成する道もあるのではないか?」
「いえ、あくまで本職は料理人として頑張っていこうと思っているので」
「…なるほどのう。だが、先程クロエからも説明があったと思うが、商業ギルドとしては余程の事が無い限り特例を出すわけにはいかぬのじゃ。それに冒険者と同じく、商業ギルドに所属する者もみな命を削って商売をしている。中途半端な気持ちで商売の道に進んでほしくないのじゃよ」
シェパードはそう言うと温和そうな表情を一変させ、鋭い眼差しをこちらに送ってきた。
なるほど、さすがは商業ギルドのマスターといったところか。これは一筋縄ではいかなそうだ。
「…ではこうしよう。お主が料理人というのなら、今からワシに何か一品作ってみるがよい」
「料理を…ですか?」
「うむ。お主が作った料理を食べてみて、ワシが必要十分と判断したら特例でブロンズランクからのスタートを認めよう。どうじゃ?」
シェパードはそう言うと、俺に挑発的な視線を送ってきた。
やれるものならやってみろと言わんばかりの目付きだ。
正直そんな視線を送られて我慢出来るほど俺も大人じゃない。
「…わかりました。いいでしょう」
「ちょっと蓮、準備も無しに大丈夫なの?」
「まあ何とかなるだろう」
「蓮がそう言うなら大丈夫なんだろうけどさぁ…」
「レン殿が何とかなると言っているのだ。きっと問題ない」
「ほっほ、お仲間には相当信頼されているようじゃのう。では早速作ってもらおうか。お主達、こっちに来てくれるかの?」
そのまま俺たちはシェパードに案内され、商業ギルドの奥の部屋へと向かった。
そして案内された部屋の扉を開けてみると、そこは20畳ほどの大きな調理場だった。
「これは立派な調理場ですね」
「ほっほ、そうじゃろう。商業ギルド自慢の調理場じゃ。普段はギルドの会員が試作品を作る時などに使っておる」
「なるほど。では俺も会員になればここを自由に使えるのですね」
「そういう事じゃ。では早速始めてもらうぞい。制限時間は今から二刻じゃ。ワシは執務室で待っとるから、出来たら持って来るがよい」
シェパードが白い髭を擦りながらそう言うと、最後に俺を一瞥してから調理場を後にした。
「さて、何を作るかな」
俺はまず調理台の上に置いてある調味料に目を通した。
そこには塩に砂糖、油や酢といった基本的な調味料がずらりと並べられていた。
「調味料は一通り揃ってるみたいだな。肝心の材料は…と」
俺は材料を確認するため、両開きの立派な冷蔵庫に手をかけた。
だが俺は冷蔵庫の中を見て愕然とした。
冷蔵庫の中には数枚のベーコンとチーズに菜っ葉の切れ端、そして卵に少量のミルクとカチカチに固くなった数切れのパンしか入ってなかったのだ。
「蓮…これって」
「…なるほどな」
どうやらシェパードは端から俺をブロンズクラスにする気は無いみたいだ。
特例を出してしまえば他の会員に示しが付かない。だがこうして特例を出すチャンスを設ける事で、ガイラムにも顔が立つ。シェパードを納得させられなかったら、それはただ単に俺の実力不足だったという事で片付けられるからな。商業ギルドの長だけあって狡猾というか何と言うか…とにかく食えない爺さんだ。
「…いいね。何だか燃えてきたぞ」
だが俺も料理人の端くれだ。それに、ありあわせの材料でいかに美味い一品を作れるかというのも料理人の腕の内だと思っている。
俺は両手で自らの頬をパシッと張り、調理を開始した。
まずボウルにミルクを注ぎ、その中に塩胡椒と卵黄を入れ丁寧にかき混る。
そして完成した調味液の中にカチカチになったパンを二切れ入れ、全体が柔らかくなるまでしばらく浸しておく。
次にソースの作成だ。俺はボウルをもう一つ用意し、その中に卵黄と塩胡椒を入れ、泡立て器でかき混ぜていく。固さを見ながら少しずつ油を加え、適度な固さになったところで酢で味を調整すればソースの完成だ。
ざっと下準備を終えた俺は備え付けのコンロに火を付け、フライパンに油を引いた。
フライパンに十分熱が通ったところで、まず予め塩胡椒で下味をつけておいたベーコンを表面がカリカリになるまで炒める。そしてベーコンが焼き上がったら一度バットに移し荒熱を取り、その間に調味液に浸しておいた二切れのパンをフライパンの上に乗せ中火で焼き上げていく。両面に十分焼き色が付いたらフライパンからまな板の上に焼いたパンを移し、先程作ったソースを満遍なくパンの表面に塗る。ソースを塗り終わったら、チーズ、菜っ葉、荒熱を取ったベーコンの順にパンの上に乗せていき、その上から粗引き胡椒を適量振りかけてもう一切れのパンで蓋をする。
最後に、食べやすいように包丁で半分にカットすれば出来上がりだ。
「よし、完成だ!」
名付けるなら異世界風フレンチトーストサンドと言ったところか。
トマトの代わりになる物があればBLTサンド風にも出来たのだが、パンをフレンチトースト風に仕上げたので、これでも十分食べ応えはあるだろう。
「待ってろよ爺さん。絶対に美味いと言わせてやるからな」
俺は鼻息荒く、完成した料理を持ってシェパードのいる執務室へと向かった。
****
シェパードの執務室の前に着くと、重厚な木造のドアが俺達を出迎えた。
ドアをノックするとシェパードから中に入るよう促されたので、俺達は執務室の中へと入り、正面奥に座っていたシェパードに向けて一礼した。
「お待たせしました」
「ふむ、きっかり二刻じゃの」
「料理を待たせてしまっては料理人失格ですから」
「その心意気や良し。それで一体何を作ったのじゃ?」
「はい、これです」
「ほう、これは…」
俺がテーブルの上に皿を置くと、シェパードは興味津々といった様子で皿の上の料理を見つめていた。
地球だと確かフレンチトーストは四世紀くらいには作られていたはずだが、シェパードの様子を見る限り、この世界にはパンを調味液に浸してから焼くという調理法はまだ無いのかもしれないな。
「これは一体何という料理なのじゃ?」
「これは俺の故郷の料理でフレンチトーストサンドと言います」
「ふむ、フレンチトーストサンドとな。まあ一先ず食べてみるとしよう」
シェパードはそう言うと料理を手に取り、まずは一口と頬張った。
すると次の瞬間シェパードは目を大きく見開き、驚愕の表情を浮かべた。
「な、何じゃこの柔らかさは…!調理場には昨日の残りの固くなったパンしか無かったはずじゃぞ!まさかお主、外から材料を持ち込んだのではあるまいな!?」
「まさか、そんな事はしませんよ。そのパンは間違いなく調理場に置いてあったパンです」
「で、では何故こんなにも柔らかな食感なのじゃ!あのパンを使ったと言うのなら、それこそ魔法を使ったとしか思えんぞ!」
「魔法でも何でもありませんよ。ただほんのちょっと工夫をしただけです」
「ちょ、ちょっとした工夫じゃと…?」
「ええ。そのパンはミルクを使った調味液の中に一度浸し、固さを取った上で焼き上げました」
「な、何と、まさかそんな調理法があるとは…。それにこのソースは一体何じゃ?程よい酸味が何とも後を引く。これもお主の故郷に伝わる物なのか?」
「はい。このソースも俺達の故郷でよく使われる物で、名をマヨネーズといいます。パンだけではなく様々な料理に合うので、小瓶に小分けにして持ち歩く人もいるくらいですよ」
「ふむ…。この見事なソースもたったあれだけの材料の中で作り上げたというのか…」
「どんなに劣悪な材料でも、その素材の良さを最大限に引き出すのが料理人の仕事だと思っていますから」
「…ぐぬぬ」
シェパードはぐうの音も出ないといった様子で、一口、また一口と料理を頬張った。
そして程なくして、皿の上の料理は綺麗に完食されたのだった。
「ふう…」
「どうでしたか、シェパードさん。俺の料理は」
「…いやはや。お手上げじゃ、ワシの完敗じゃよ。あの材料でここまでの料理を作られたらもう何も言えん」
「…失礼ですが、最初から俺に特例を出すつもりは無かったのですね?」
「うむ、悪いがそのつもりじゃった。さっきも言ったが、商売の道に命を賭けた者として、中途半端に冒険者と料理人の二束の草鞋を履こうとしている人間を認めるつもりは無かった。だが、どうやらそれはワシの思い違いだったようじゃ。お主の料理を食べてみてそう思い知らされたわい。お主は冒険者であると同時に、立派な一人の料理人じゃった」
「では、特例を認めて下さると?」
「ああ、異存はあるまいて。試すような真似をして悪かったのう」
そう言うとシェパードは筆を取り、一枚の紙に自らのサインを書き記した。
「ほれ、これを受付にいるクロエに渡すとよい。ブロンズランクのギルドカードを発行してもらえるはずじゃ」
「ありがとうございます」
「それにしても本当に見事な料理じゃった。シルバーランク…いや、ゴールドランクの店でもあのレベルの料理を出す所は中々無いぞ。開店したら足を運ぶから是非教えてくれ」
シェパードは顎に蓄えた立派な髭を擦りながら笑顔で俺にそう言った。
どうやら俺はこの爺さんの事を少し勘違いしていたようだ。
この人はこの人なりに商売に対して真摯に向き合っているだけなんだな。
俺達はシェパードに挨拶を済ませると、その足で受付カウンターへと向かった。
そして受付にいたクロエにシェパードから預かった紙を渡すと、その紙と引き換えに青銅製のギルドカードを手渡された。
「おめでとうございますイチノセ様。特例により、イチノセ様はブロンズランクからのスタートとなります」
「ありがとうございます、クロエさん」
「あら。私なんかの名前を覚えてくださったんですね、嬉しいですわ。それにしても特例を認めてもらうなんて、イチノセ様は将来有望なのですね。そうそう、私こう見えて年下の男性が好みですの。良かったら今度一緒にお食事でも…」
クロエはそう言うと俺の手を取り、妖艶な表情を向けてきた。
眼鏡にロングヘアーといった容姿も相まって、メルとは違った大人の色気がムンムンに漂っている。
俺がクロエの上目遣いに惚けていると、次の瞬間、突如として両頬に激痛が走った。
「何してるの蓮!登録は終わったんだから次行くよ次!」
「うむ、ナナミ殿の言う通りだ。これから土地を見に行くのだろう?頬の肉を引き千切られたくなかったら一刻も早く行く事をお勧めする」
「いでででで!わかった!わかったからそんなに強く抓らないで!」
「あら、残念ねぇ…」
そして俺はそのまま二人に引き摺られるようにして商業ギルドを後にした。
その時の商人達の俺を哀れむような表情は、向こうしばらく忘れる事は無いだろう。
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商業ギルドを後にした俺達は、その足で不動産屋へと向かった。
今現在手持ちで金貨600枚程あるが、高望みしなければそこそこの土地は手に入るだろうと踏んでいる。
商業ギルドを出てから大通りをさらに西の方角へ進んで行くと、道沿いの一角に不動産屋らしき看板が見えてきた。
シェパードから大体の場所は聞いていたので、恐らくはあそこで間違い無いだろう。
「…すみませーん」
「はいはーい!いらっしゃいませー!信頼と実績のウォンナッド不動産へようこそー!」
建物の中へ入ると、金髪ショートヘアーの中性的な顔立ちの店員が入り口まで出迎えてくれた。
年齢は俺達と同じくらいだろうか。そばかすが特徴的で、とても愛嬌ある顔立ちをしている。男とも女とも取れるような風貌をしてるが、スカートを履いているので少なくとも男ではないだろう。
「…そんなにまじまじと見ないで下さい。やっぱり男がスカートを履いてるのはおかしいですか?」
「…は?」
だがその少女…元い、その青年の言葉によって俺の予想はいとも簡単に覆された。
なるほど、この世界にも男の娘というものは存在するんだな…。
「実はお父さんにこの格好をしてれば集客が増えるからって言われてるんです。確かにこの格好をしてから売り上げは伸びましたけど、やっぱりちょっと恥ずかしくて…」
「い、いや…。まあ、似合ってるからいいんじゃないかな…」
「ほ、本当ですか?そう言ってもらえると嬉しいです!あ、僕の名前はエネットって言います!以後お見知りおきを!」
エネットはそう言うと、とても可愛らしい笑顔を俺に向けてきた。
確かにこれはマニアには人気が出るだろうな…。
「それで、今日は本日はどのようなご用件ですか?冒険者の方とお見受けしますが、賃貸物件をお探しで?」
「いや、今日は土地を探しに来たんだ。いくつか見繕ってもらえないか?」
「土地…ですか。失礼ですが予算はどれほど…」
俺の言葉に笑顔から一変、エネットが怪訝そうな表情を浮かべた。
まあ俺くらいの歳の奴が土地を買いたいだなんて言っても冷やかしにしか聞こえないか。
そこで俺は腰に下げていた数個の布袋を全てテーブルの上に置いた。
「予算は金貨六百枚程だ。この予算内で買える土地はあるか?」
「こ、これ全部金貨ですか!?しょしょしょ少々お待ちを!!」
エネットが金貨の詰まった布袋を見るや否や、慌てた様子で店の奥へと消えて行った。
そしてそのまましばらく待っていると、大量の資料を抱えたエネットが店内へと戻って来た。
「き、金貨六百枚でしたらこの中からお選び頂けます!」
「こ、これ全部か?」
「は、はい!」
数件でも候補が見つかればとは思っていたが、これはちょっと予想外だ。というか、この中から探すとなると逆に少し辟易とするな…。
俺達は手分けしてエネットが持ってきた資料の一つ一つに目を通していく。
50坪もあれば余裕で水蓮亭を建てる事が出来るが、それくらいの規模の土地は大体が金貨100枚から200枚といったところだ。
「ねえ蓮、これ…」
「ん…?」
俺が別の資料に目を通していると、七海が一枚の資料を俺に見せてきた。
その資料に書かれている土地の面積は坪に換算すると約50坪ほどだが、値段が金貨30枚となっているので他の同規模の土地に比べて圧倒的に安い。
「そ、その土地は…」
その資料を見ていると、エネットがバツの悪そうな表情を浮かべた。
なるほど、よくある曰く付きの物件ってやつかな。
「この土地に住み着いた人間は、皆不慮の死を遂げた…とか?」
「いやいや!そういうのじゃないんです!ただ、その土地は中央広場から東地区の方へ少し行った場所にあるのですが、その土地の横が少々問題で…」
エネットはそう言うと、続けてその土地の問題点を説明し始めた。
どうやらその土地の横が東地区でも有名な裏組織のアジトらしく、それが理由でその土地は長い事空き物件になってしまっているらしい。
過去にその土地を購入して家を建てた人も何人かいるらしいのだが、日当たりが悪くなるなどの難癖を付けられ、終いには放火や破壊行為などの被害に合い、結局は皆その土地から立ち退く事になったらしい。
放火や破壊行為に関しては、その裏組織がやったという証拠が一切見つからなかったので、事件として立件する事も出来なかったそうだ。
「うちとしてもその土地は早くしょぶ…何とか出来たらと思ってるのですが…」
「ふむ…」
確かに少々問題がありそうだが、この広さで金貨30枚はとても魅力的だ。
そして俺は暫く考えた後、エネットに対してこう告げた。
「よし決めた。この土地だが、一度見に行ってもいいか?」
「はい、わかりました…って、ええ!?今の僕の話聞いてなかったんですか!?」
「ん?ちゃんと聞いてたさ。隣が裏組織なんだろ?」
「その通りです!これだけ予算があるんだから、絶対に別の土地にした方が良いですよ!」
「なーに、事前にきちんと話をつけておけば大丈夫だろ」
「は、話が通じるような相手じゃないですって!」
「あのなエネット。俺達の国に礼に始まり礼に終わるという言葉がある。誠心誠意、きちんと挨拶を済ませておけばきっと大丈夫さ」
「…蓮、まさかとは思うけど」
「ん?まさかって何だ?俺はただきちんと挨拶をしようと思ってるだけだぞ?」
「うむ、レン殿の考えはとても素晴らしい。挨拶はとても大切だからな」
「アイシャ、あんた絶対意味わかってないでしょ…。まあそうね…話すだけ話してみましょうか」
「ふええ…、僕どうなっても知らないですからね…」
というか、俺は本当に挨拶をしに行くだけのつもりなんだけどな。
…まあ向こうの出方次第ではそうならないかもしれないけど、その時はまたその時だ。
こうして俺達は一路、東地区にあるという曰く付きの土地へ向かう事となったのだった。




