表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

D-7

「みなさーん!見てください!埼玉が大気汚染で真っ暗、埼玉スカイタワーも見えません!光も殆ど見えません!大変です!日本の首都、埼玉が今、大変ですよー!」


「・・・ハァ。」


ため息をつき、体の力を抜く。

後ろから男が近づいて、こう言う。


「Hi、ジョー。またジャパンのTVかい?懲りないねえ」


ヨハンだ。ドイツ生まれ、アメリカ育ち。

俺の同期で、多分本部内で一番仲がいい。


「ヨハンか・・・見てみろよこれ。。新潟の時は10秒で終わったのにな、首都になると大騒ぎだ。」


ヨハンはハハハハ、と笑い、こう言う。


「何言ってるんだ、ジョー!お前は今アメリカにいるんだぜ?日本の心配してどうする!」


「つってもなあ、一応母国だし・・・」


そうこうしている内に、放送スピーカーから大音量で声が流れる。

紛れも無い。この本部の長の声だ。


「D-1からD-16班に告ぐ。至急各班の部屋に向かうように。班会議を始める。繰り返す。D-1からD-16班に・・・」


「おーい、D-7のジョー。会議始まるってよー。」


ヨハンが半笑いで話しかけてくる。


「お前もD-7の癖に。ほら行くぞ?」


「レッツゴー!」


ヨハンは張り切っているが、自分はあまり気が向かない。

会議というのは、いわゆる仕事内容の確認の事だ。

会議が終わった直後から、その仕事に就く事になる。


俺は別に仕事が嫌いな訳じゃない。

何しろ、地球を守りたい一心で、はるばるアメリカまで来たのだから。

だが、なんと言うか、その内容が・・・


「D-7、全員集まりました。」


一応俺は、この班の班長を務めている。

といっても大して重要役ではなく、いわゆる学校の班長のような立場だ。


「おう、よく集まった。ビールでもいくか?ガハハハハ!」


そしてこの人は班の責任者、アーロンさん。ロシア国籍。

結構豪快な人で、冗談と酒が大好き・・・らしい。


「んで、今日の仕事だが・・・さあ、何でしょう?ジョー!」


「管轄内の空気清浄機の点検と、防塵マスクの整備・・・どうせそんなもんでしょう」


「正解だ!流石だ班長!」


そう。これが俺達の今日の仕事内容だ。


何故こんな仕事かと言うと、俺らがD班だから。

今の所本部ではAからFまで、それぞれ16の班がある。

D-7と言うと、中の下ぐらいの立場だ。よって責任のある仕事は出来ない。

特に大きな仕事なんかは、Aの班に任せっぱなしだ。


「まあ、という訳で、・・・ぶっちゃけ、この仕事クソつまんねえよな?」


「アーロンさん。アーロンさんがそんな気持ちでは、どうかと思いますけど。」


今班長に物申したのは、同じ班の山宮 未央。同じ日本国籍。

物凄い真面目で要領がいいが、何故か上の班に行けないらしい。理由は分からない。

おなじく班にクロエという女の子がいるが、これまたすごい無口で殆ど何も喋らない。


「怖い事言うなよ、ミオちゃん?これから特別任務を任せてやろうと思ったのにさあ。」


「特別任務?」


嫌な予感しかしない。

アーロンさんの出す特別任務と言ったら・・・


「点検先にいるA班の奴らにケンカ売って来い!」


これだ。


「・・・おいおい、まじかよ。そりゃ色々と問題あるんでねーの?」


「知るか!インパクトが大事なんだ、インパクトが!」


今回もこの無茶っぷりである。

しかもこれ、冗談ではない。本気で言っているのだ。

前に「A班の私物を盗んで来い」と言われ無視したら、何故かすごく落ち込んでいた。

どれだけA班が嫌いなんだろうか・・・


「それじゃあ、会議終わり!仕事行くぞー!」















点検先。本部に隣接した、世界最大の空気清浄場だ。

有害物質や塵が混じりこんだ空気だ、これが無ければ大変な事になる。

この216個の清浄機の内、12個の点検がD-7の管轄内。


「なー、ケンカ売るって言ってたけど、どうするよ?」


「ダメに決まってるでしょ!本気で言ってるの!?」


「いや、だってそしたらまた落ち込むじゃん・・・俺アーロンさん結構好きなのに」


未央の反発に、愚痴気味で反論するヨハン。

そんな内に、そばから数人の偉そうに振舞う班が現れる。

A-4だ。


「おいおいD-7諸君?何をサボっているんだい?」


「全く困りますね。上官に報告です」


「うわ・・・来たよ」


これが今回の点検の監査チーム。見ての通り、偉そうだ。まあ偉いのだが。

何故かこの班だけは、毎回と言っていいほど自分達D-7に絡んでくる。

きっと、見下しやすいと思っているのだろう。


「なあ、ジョー・・・」


ヨハンが小さい声で話しかけてくる。

その口元は、面白さを隠せないのを見せるように吊りあがっている。





「・・・こいつらにケンカ売ったら、面白くね?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ