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マジック・デッド・サーヴァント  作者: 浅咲夏茶
序章 魔力と謎の少女
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春の初めの仕事

 新潟の春は、長い長い冬が開けてからようやく始まる。新潟の市街地はそこまで雪が降ったりすることはない。だからこそ、たまに大雪が来ると、交通網が麻痺したりするから、市民生活に支障が出る。勿論学生は試験だとかにも影響が出る。


 それに春までの期間が長く、二月とかでも大雪になったりするため、奏汰のような電車通学の生徒は結構困るものである。


「新入生を歓迎します」


 マイク越しに校長先生の声が聞こえた。聞き覚えが有る声だ。まあ、奏汰

にしろ帆人にしろ、一年間高校で通ったわけであるから、校長先生の声くらい覚えていないほうが可笑しい。もちろん、一年生の時の担任や、教頭先生、各教科担任の先生とかも含む。


 ただ、日本に多い苗字である、『佐藤』『鈴木』で被ることが有ったりすると、たまに二人共反応してしまうことがあるが。けれど、基本的にそういう場合は苗字ではなく、名前の頭文字を使ったりして工夫を凝らす訳だし、困る人はそこまで居ない。居ても少数だ。


 それから数時間が経過し、入学式が終わった。教室に戻る前、奏汰や帆人は出された椅子を元に戻す作業を手伝っていた。『全ては内申の為』という訳ではないのは確かだ。

 元々奏汰が所属していた学年委員会の顧問が、「手伝え」と言ったから手伝っただけなのだ。奏汰からすれば、それは大きなお世話以外の何物でもない。


「ああ、疲れた……」

「そんな声出すなよ、友よ――」

「お前も疲れているだろ」

「まあ、それを言っちゃ終わりなんだが……」


 互いにため息を付いた。ようやく、奏汰と帆人が作業を終える頃にはもう、共に過ごすはずのクラスメイトの姿は教室にはなかった。それに、殆どの部活が部活強制停止中であり、部活も無いことにより、校舎内は閑散としていた。


「メイト寄ってく?」

「んじゃそういうことで」


 メイト。アニメイトのことだ。新潟駅の近くにある。大体徒歩五分程度だ。白山から歩けばそれなりに時間はかかるが、そこまで道も複雑ではないから歩き易い。何しろ、新潟の古町辺りは、京都にならって作られた街であり、道は碁盤状になっている。


 だから、まっすぐ進んでいればアーケードにたどり着けるような道が殆どだ。もし、それでアーケード方面へ向かえなかったとしても、南下していけば必ず信濃川に突き当たる。


 正確には『やすらぎ堤』だが、そこへつけば長い年月保っている萬代橋だとか、地震で壊れた経験を持つ昭和大橋など、好きな橋のところまで行くことが出来る。

 そんな中、奏汰と帆人は桜並木を見て感想を述べ合った。


「まだ桜、咲いてねえな――」

「そりゃまだ四月の初めだもん、咲いている方が可笑しいだろう」

「そういうもんかなあ……」


 奏汰と帆人は、共に萬代橋までやすらぎ堤を伝って歩いてきていた。帆人は徒歩、奏汰も電車通学だから、時間短縮用に自転車などは使えないのだ。


 バスや電車などの公共交通機関を利用するのも一手だったが、現実問題、お金の話が奏汰には付くため、電車やらバスやら、公共交通機関を利用する気にはならなかった。


「ところでお前、今期のアニメ何見てる?」

「今期のアニメ? そうだなあ……」


 そう言ってから、帆人は自分が今期見ているアニメを話しだした。だが、途中で『凛音様マジ神』とか、『凛音様! 凛音様! 凛音様!』だとか、そんなふうに言いだしてくる。


 もちろん、何も知らない人は「恥ずかしくないのか」と思う。それは奏汰も思った。


「恥ずかしくはないぞ」

「な、何故俺の内心が……っ?」

「いや、心の声が聞こえたからさ」

「なん……だと……!」


 驚きを隠せなかった奏汰だったが、すぐに自分が今位置している状況を察した。そして、またため息を付いてからアニメイトへと向うために萬代橋を渡る。


「お、おい、急ぐな!」


 何故か帆人は萬代橋を渡る事を急いだ。いや、察することが出来れば普通にわかる。「早くグッズをゲットしたい」、というただそれだけであろう。それ以外考えにくい。

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